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日本古来の漢方や中医学とも違う、新しい漢方ともいうべき「井上流漢方」について説明します。患者さんの気の流れをみて気を整えることを第一義とする「井上流漢方」を名古屋の井上先生の外来から報告します。
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020.jpg020. 防已黄耆湯

【生薬構成】
防已5、黄耆5、蒼朮3(白朮も可)、大棗3、甘草1.5、生姜1 (g)
*防已で利水消腫して、黄耆で表を固め止汗する。朮、大棗、甘草、生姜で脾胃の機能を高める。

【原典】
《金匱要略》の『痓濕暍病脉證第二』と『水氣病脉證并治第十四』に出ています。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》には
『此方は風湿表虚の者を治す故、自汗久しく止まず、皮表常に湿気ある者に用ひて効あり。蓋し此方と麻黄杏仁薏苡甘草湯と虚実の分あり。かの湯は脉浮、汗出でず、悪風の者に用ひて汗を発す。これは脈浮にして汗出で、悪風の者に用ひて解肌して癒ゆ。即ち傷寒中風に麻黄、桂枝の分あるが如し。身重は湿邪なり、脉浮、汗出づるは表虚する故なり。故に麻黄を以つて発表せず、防已を用ひてこれを駆るなり。金匱に治水治痰の諸方、防已を用ふるもの、気、上に運びて水能く下に就くに取るなり。服後、虫の行く如く及び腰以下氷の如し云々は、皆湿気下行の徴と知るべし。』とあります。
*風湿:風と湿の邪の集まったもの。 表虚:体表の機能の衰え。 自汗:汗が自然に出ること。 解肌:肌の邪を和解する。 

【先人】
・体表に水毒があり、しかも表が虚し、下肢の気血めぐらざるものに用いる。  《矢数道明:漢方処方解説》

・気虚の風水&気虚の風湿  《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・ブヨブヨした肥満(風湿身重)/多汗/下肢浮腫傾向  《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流】
・色白で、筋肉軟らかく、水太りの体質で、疲れやすく、汗が多く、小便不利を訴える、主として女性の膝関節症を始め諸疾患によく用いる。中年以降の有閑夫人で、太って疲れやすく、身体が重いという人に用いることが多い。脉は多くは浮弱である。

・私見:処方構成上、利水剤であるが補気剤を兼ねる。
肺気虚に対する治療薬であり、膝関節症ばかりでなく、風邪薬、咳止め、皮膚疾患の薬、自律神経失調症の薬など多岐にわたる疾患に応用できる。排尿回数が少なく、排尿時の勢いがないのを目標に加えている。防已黄耆湯単独ばかりでなく、附子を加えたり、真武湯や桂枝加朮附湯などと合方したりして用いる機会が多い

・応用:体表に水毒があり、しかも表が虚し、下肢の氣血めぐらざるものに用いる。
感冒後皮膚のしまりが悪く、熱が去らず、悪風があって自汗が止まらず、頭痛、身体疼痛し、小便不利もの、腎炎 ネフローゼ 妊娠腎 陰嚢水腫 癰 筋炎 下肢骨カリエス 膝や足の関節炎、潰瘍、浮腫 肥満症で筋肉軟らかく、水太りのもの 皮膚炎 蕁麻疹 多汗症 わきが ひえ症 気欝 月経不順 変形性膝関節炎
《以上;利水剤について②防已黄耆湯を中心に》

・発汗過多で身体をだるがるひとの膝痛などに用いる。
《整形外科の漢方治療》

・ 水太りの中年女性には防已黄耆湯とのキャッチフレーズの通り、水太りには防已黄耆湯が良く効きます。しかし、現代においては隠れた裏寒が併存していることが極めて多く、真武湯や附子末を加えて投与した方が上手くいきます。防已黄耆湯は暑がりで汗かきで疲れやすく、排尿時の勢いが弱いのに加えて、浮腫んで、排尿回数が少ないなどの水毒症状があるのを目標にして用います。
《生活習慣病の漢方治療②》

・いわゆる水太りの代表処方。ことに女性の生活習慣病に使用する機会が多い。 汗かきで疲れやすく、排尿時の勢いが弱い人の肥満、高脂血症 高血圧など生活習慣病に用いる。
《生活習慣病の漢方治療①》

・膝関節症や蕁麻疹など諸疾患に用いるばかりでなく、自律神経失調症も良くなることがある。
《自律神経失調症の漢方治療①》

・汗かきで疲れやすいひとで尿の勢いがない、排尿しようとしてもスーと尿が出ない、残尿感があると訴える人に良く用います。
《泌尿器領域の漢方治療》

【Dr.サントのコメント】
・典型的には浮腫んだ人の膝痛の薬ですが、さらに突っ込んで言うと肺虚がある人の薬です。

・汗をかいて皮膚の締まりがない時は肺虚があります、その時には防已黄耆湯が効くことがあります。特にむくみがなくても効いてくれます。膝痛だけでなくいろいろな症状をとってくれます。腰痛、めまい、心不全、etc. 多彩な症状に効きます。

・年を取ると肺虚が出てくるので、老人に使う機会が多いと井上先生は言っていました。

・汗以外では「尿の勢いが弱いこと」が目標になると井上先生は言っています。

・防已黄耆湯があっている人は、大体ずっとこの薬を処方してくれと言ってきます。水気がある太った女性が多いです。

・夏になると出す機会が一気に増えます。汗が多くなるからでしょう。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3. 

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【2013/07/29 23:42】 | 漢方解説
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029.jpg029. 麦門冬湯

【生薬構成】
麦門冬10、半夏5、粳米5、大棗3、人参2、甘草2 (g)
*方名のごとく麦門冬が君薬です。乾燥を滋潤して上逆を引き下げる。半夏は胃気を開き逆気を下げる。人参、大棗、甘草、粳米で補気して潤す。

【原典】
《金匱要略》の『肺痿肺癰咳嗽上氣脉證并治第七』に出ています。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》には
『此方は肘後に云ふ通り、肺痿、咳唾、涎沫止まず、咽燥いて渇する者に用ふるが的治なり。金匱に、大逆上気とばかりありては漫然なれども、蓋し肺痿にても、頓嗽にても、労嗽にても、妊娠咳逆にても、大逆上気の意味ある処へ用ふれば、大いに効ある故、此の四字簡古にして深旨ありと見ゆ。小児の久しき咳には、此方に石膏を加へて妙験あり。さて咳血には、此方に石膏を加ふるが先輩の経験なれども、肺痿に変ぜんとする者、石膏を日久しく用ふれば不食になり、脉力減ずる故、千金の麦門冬湯類方の意にて、地黄、阿膠、黃連を加へて用ふれば工合よく功を奏す。また聖惠五味子散の意にて、五味、桑白皮を加へ、咳逆甚しき者に効あり。また老人津液枯稿し、食物咽につまり、膈症に似たる者に用ふ。また大病後薬を飮むことを嫌ひ、咽に喘気ありて、竹葉石膏湯の如く虚煩なき者に用ふ。皆咽喉不利の余旨なり。』とあります。
*肘後:書物名《肘後備急方》のこと、肺痿:一般的には肺結核のこと、金匱:金匱要略のこと、大逆上気:金匱要略の中の有名な文言、頓嗽:百日咳、労嗽:肺結核、津液枯稿:口や皮膚が渇いたもの、膈症:嚥下障害を訴えるもの、咽喉不利:金匱要略の有名な文言、咽喉頭違和感のこと

【先人】
・本方は少陽病の虚証を帯びたもので気の上逆による痙攣性咳嗽に用いられる。  《矢数道明:漢方処方解説》

・肺気陰両虚&胃気陰両虚  《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・反射性の激しい咳(大逆上気)/咽喉のひきつり(咽喉不利)/心下痞  《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流】
・麦門冬湯は老人の空咳の薬として有名です。処方構成からみると四君子湯と同じく補気剤で、腸の働きを良くして生命力、自然治癒力を高める薬ですが、麦門冬という心肺や胃を滋潤する生薬が配されており、津液不足に陥りやすい老人にはうってつけの薬です。気管支炎など、肺疾患に用いるばかりでなく、不眠、身体の弱り、痩せ、食欲不振などにも効果が期待できます。
《脾胃を整える「補気剤」の活用》

・脾胃が衰え、津液不足に陥った老人は脱水症になりやすいが、夏バテで脱水症になったり、食欲不振、身体が弱ったり、痩せたりする人にも適応がある。
《老人の漢方治療②》

・一般的に老人に多い、喉の乾燥感や咽頭不利があり、大逆上気して顔面紅潮し、痙攣性咳嗽する、心下痞、腹部軟弱な人に使用。麦門冬湯は補気剤である。夏ばてが激しく痩せて、気力の低下した。口渇、喉の乾燥感や咽頭不利がある人に使用。
《滋陰剤の臨床応用》

・喉やイガイガ、カサカサして空咳が続く風邪で、顔がのぼせ、上胸部に熱を感じ、肺に熱燥があると思われる人で心下がつかえ、下痢や食欲不振があって脾胃虚弱となっている時に使用。現代は津液不足に陥っている人が多く老人に限らず幅広い年齢層の人に適応がある。
《風邪・インフルエンザの漢方治療②》

・老人の乾燥咳の薬として有名であるが脱水をおこしやすい高齢者の胃部の不定愁訴にも用いる機会が多い。
《消化器疾患の漢方治療》

・同じ麦門冬の配された麦門冬湯は良く使用されているが炙甘草湯はあまり使用されていない
麦門冬湯 ――補気剤  どちらかというと下痢傾向
炙甘草湯 ――気血両補剤 どちらかというと便秘傾向
炙甘草湯の場が実際には多い
《脾胃を整える「気血両補剤」の活用》

【Dr.サントのコメント】
・風邪の後の喉のイガイガに良く効きます。またこれが一般的使い方でしょうか。

・麦門冬湯だけを長期に出すことはすくないです。

・また、喉が渇いて空咳がでてても、麦門冬湯より他の麦門冬剤のほうがあっていることが多いように思います。現代人はそんなに単純ではなくなっているのでしょうか。井上先生の書いているように、炙甘草湯や滋陰至宝湯、竹茹温胆湯、滋陰降火湯、清暑益気湯、清心蓮子飲などがあっている人が多いと思います。

・咽が乾燥するときには、腎陰虚と肺陰虚が合併するときがありますが、その時には八味丸、六味丸と合方して出したります。
そうすると、やっぱり老人に使うことが多くなります。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3. 


【2013/07/28 20:42】 | 漢方解説
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111.jpg111. 清心蓮子飲

【生薬構成】
麦門冬4、茯苓4、黄芩3、車前子3、人参3、黄耆2、甘草1.5、蓮肉4、地骨皮2 (g)
*麦門冬は燥熱を去って滋潤する、蓮肉は心熱をさます、地骨皮は虚熱をさる、車前子は下焦を強め、黄耆は補気する、人参、甘草、茯苓は四君子湯の一部で脾の補気作用。

【原典】
宋の時代の《和剤局方》に出ています。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》では、
『此方は上焦の虚火亢りて、下元これがために守を失し、気淋白濁等の症をなす者を治す。また遺精の症、桂枝加竜蛎の類を用ひて効なき者は、上盛下虚に属す。此方に宜し。もし心火熾んにして妄夢失精する者は、竜胆瀉肝湯に宜し。一体此方は脾胃を調和するを主とす。故に淋疾下疳に困る者にあらず。また後世の五淋湯、八正散のゆく処に比すれば虚候の者に用ふ。名医方考には労淋の治効を載す。加藤謙齋は小便余瀝を覚ゆる者に用ふ。余数年歴験するに、労動力作して淋を発するものと疝家などにて小便はかなり通ずれども、跡に殘る心ありて了然たらざる者に効あり。また咽乾く意ありて、小便余瀝の心を覚ゆるは、猶更此方の的当とす。正宗の主治は処とするに足らず。』と、あります。
*下元:下焦 気淋:神経性の頻尿 上盛下虚:下の矢数道明の解説を参照 労淋:長引いた淋 小便余瀝:小便の切れが悪くて排尿が終わったあとにも尿が点滴すること

【先人】
・上盛下虚というのが目標になる。上盛下虚というのは、上部の心熱が盛んになって下焦の腎の働きが弱くなり、上下の調和を失って、下焦にあたる泌尿器に諸症状を現わすことを意味する。 《矢数道明:臨床応用漢方処方解説》

・気陰両虚・心火旺。すなわち、いらいら、焦燥感、不眠、多夢、口や咽の乾燥感、口内炎、胸が熱苦しい、動悸、手のひらや足の裏の火照りなどの陰虚火旺の症候に、元気がない、疲れやすい、気力がない、食欲不振などの気虚の症候を伴う。 《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・気虚(易疲労、胃弱)/心火旺(イライラ、胸苦、口渇)/淋症(頻尿、残尿感)
《漢方常用処方解説:髙山宏世》

【井上流】
・蓮肉で牌胃を補いながら、虚火の炎上による心火旺を治し、麦門冬で燥熱を潤し、地骨皮で肝腎の虚熱を下して、下焦の軽い湿熱を去る働きがある。今日の日本人には適応が多い。
今日ではその他、不眠、自律神経失調、更年期症状、アトピー、花粉症、気管支炎、腰痛、高血圧等広く症例疾患にも応用。

・清心蓮子飲は夜間尿、頻尿、尿意頻迫、残尿感等に使用するのが一般的。上胸部の熱、心下痞硬を目標に投与一般的には八味地黄丸が使いがたい高齢者に使用、若い人で神経過敏となり、上記症状を起こしている人にも使用。

・清心蓮子飲はいわゆる自律神経失調症に良く用います。水を下げ、気を下ろすことで、イライラ、不眠に効果があるばかりでなく、三黄瀉心湯など黄連剤でなくても、心熱を冷ますことで、焦燥感や不安感を和らげる効果があります。

・清心蓮子飲と真武湯を一緒に投与すると良いことも多々あります。多くの場合は清心蓮子飲2.5gと真武湯2.5gを分2で投与しています。清心蓮子飲証と思われるものの手の冷え、足の冷え、浮腫みを認める時に按配しています。

・アトピー性皮膚炎や花粉症など諸疾患に適応あり

・清心蓮子飲は竜胆潟肝湯の虚の処方と言われており、下焦の湿熱をとる薬。女性に対して帶下ばかりでなく、子宮内膜症など女性疾患に適応あり。
 
・明目作用のある車前子が配されているので眼精疲労など眼疾患に良く用います。

・蓮肉が配され、陰虚による心火旺を治す効果があるため、歯肉炎にも用います。
《以上;今日の漢方薬の使い方5 清心蓮子飲を中心に》

・神経質で膀胱炎になりやすい人や、夜間尿のある人で、手足のほてり、のぼせ、イライラ、不眠、高血圧、膀胱神経症などに用いる。
《老人の漢方治療①》

・神経質で夢をよくみたり、夜中にトイレにちょくちょく起きたり、手足がほてり、囗が渇きやすい人に用います。膀胱神経症、尿漏れ、帯下ばかりでなく、高血圧など中年以降の諸疾患に良く用います。竜胆瀉肝湯尾の虚の処方といわれています。
《泌尿器領域の漢方治療》

・ 膀胱神経症の薬として有名であるが、上部の心熱が盛んになって下焦の腎の働きが弱くなり、上盛下虚を起こしやすい現代人向きの処方で、高血圧や糖尿病など生活習慣病によく用いる。 手のほてり、のぼせ、口渇、上胸部の熱、心下のつかえ、不眠、夜間尿などを目標とする。
《生活習慣病の漢方治療①》

【Dr.サントのコメント】
・井上先生は最近頻用しています。その理由としては、以下のように地球環境の変化を挙げられています。
『地球環境が激変し、電磁波の増大により、地球全体が大きな電子レンジの中に入っている状況にあるため人間の身体が内部から熱せられて、干からび、麦門冬を始めとする滋陰薬の配された滋陰剤の適応する人が多くなった。心肺が痛めつけられて弱り、外見は良くても、心気虚、肺気虚に陥っている人が多い上の事が、昨年の夏以降、特に感じられます。』
清心蓮子飲を滋陰剤的な位置づけで見ています。

・のぼせがあって頻尿があるときに使うのが典型的ですが、そのような典型的な兆候がそろっていなくても、色々な症状に効きます。「上盛下虚」にこだわらなくていいようです。

・特に喉の燥熱や口渇があるときに麦門冬の入った薬の鑑別として考えています。
麦門冬の入った薬では、麦門冬湯、炙甘草湯、滋陰至宝湯、清暑益気湯etc.とありますが、それらを「PhotoTouchMethod」で素早くスクリーニングすると、適合する漢方を当てることができます。

・手の「労宮」を押したら気持ちいいという時には、心に熱があると思われるので、効くことが多いように思っています。清心蓮子飲は「清心」という具合に「心」の熱を冷ます効果があります。

・井上先生の言われるように真武湯を少し混ぜると良く効くことがあります。
さらに、井上先生の言うように牛車腎気丸をまぜて、下焦の症状をもっと改善することもできます。

・いままでは、単に八味丸、牛車腎気丸の裏処方的存在だと思っていましたが、それ以上に精神的に作用する力もあるので、現代人には向いているようです。四君子湯が基礎にはいっているので胃腸の弱い現代人向けです。

・不眠の鑑別処方としても当然上がってきます。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3. 


【2013/07/28 16:19】 | 漢方解説
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087.jpg087. 六味丸

【生薬構成】
地黄5、山茱萸3、山薬3、沢瀉3、茯苓3、牡丹皮2.5 (g) 
*八味地黄丸から附子と桂枝が除かれています。
*3補(地黄、山茱萸、山薬)+3瀉(沢瀉、茯苓、牡丹皮)で構成

【原典】
《小児薬性直訣》に出ています。

【古典】
曲直瀬道三の《衆方規矩》では、
『腎経の虚損にて体痩せ憔悴し盗汗ありて発熱し、或は腎虚して渇をなし小便淋秘し気塞がりて痰多く頭目眩暈し眼に花ちり耳鳴り耳聞こえず舌痛み歯痛み腰腿痿縮え、或は小便に下り、音を失い、水あふれて痰となるを治し血虚の発熱を去るの神方なり。八味丸に附子、肉桂を去りて用ゆ。』と、あります。

【先人】
・この方剤はいわゆる腎陰虚の代表的方剤で、腰から下の精力をつけ、循環を良くし、尿の出渋るのを快通させる方剤だと考えればよい。 《桑木崇秀:漢方心療ハンドブック》

・これに冷えが加わると八味丸の適応証となる。したがって、八味丸証に多少の火照りがあってよい。 《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・腎陰虚を治る養陰の主方である。腎虚の症状とともに虚火上炎するため熱証、燥証を呈する。 《漢方常用処方解説:髙山宏世》

【井上流】
・地黄が配され補腎すると共に、牡丹皮が配され駆?血するように配慮されている。
高血圧など生活習慣病に用いられる

 ・杞菊地黄丸 六味丸 菊花 枸杞子
 菊花――甘 苦 微寒  疏散風熱 明目 清熱解毒 平肝陽
 枸杞子―甘 平 補肝腎 明目
 中年以降の諸疾患で目のかすみ、しょぼつきなどを強く訴えるときに

 ・知柏地黄丸―六味丸 知母 黄柏
 知母―――苦 寒  清熱瀉火 滋腎潤燥
 黄柏―――苦 寒  清熱燥湿  瀉火解毒 清虚熱
 知母と黄柏を配合すると神経系の興奮性を抑える 腎火を瀉す作用あり。
 抑えの効かないほど頑張りすぎるタイプの狭心症など中年以降の諸疾患に用いる。

 ・味麦地黄丸「八仙長寿丸」―六味丸 麦門冬 五味子
 麦門冬―――甘 微苦 潤燥生津 化痰止咳
 五味子―――酸 温  肺腎陽虚による咳嗽に用いる
 麦門冬と五味子が配され肺を潤し強化する効果が高い。口渇を訴える糖尿病傾向     のある人の生活習慣病に用いる。
《補血剤、補陰剤について》

・のぼせ、汗かき、寝汗、手足煩熱、臍下の熱があり、腎の働きが低下し、虚熱症状がある時に用いる。

・補腎剤の基本で、生活習慣病一般に使用する。
《生活習慣病の漢方治療①》

・のぼせ、ほてりを目標に、殊に男性更年期に伴う自律神経失調症状にも用いる。
《自律神経失調症の漢方治療①》

・肝腎を補う効果に優れている。体質改善薬としてアレルギー疾患全般に用いる。
《アレルギー性疾患の漢方治療①》

【Dr.サントのコメント】
・原典では小児の薬の様な取扱いですが、井上先生はあまり使っていません。

・長瀬千秋先生によると、中国では良く使うと言います。日本ではあまり使われないようです。その代りに、日本では中国にくらべて柴胡剤を良く使います。
中国が乾燥していて、日本が湿気ているからだと仰っていました。

・井上先生は、ご老人には六味丸の加味方の小菊地黄丸、味麦地黄丸、知柏地黄丸をよく使われます。八つ目製薬の方剤をよく使用します。保険適応がありませんが、数粒で効果があるので1瓶で長持ちします。

・サントもそれほど使いません。
でも、口が渇いて火照る人で麦門冬の薬ではなくて、六味地黄丸がいい人がいます。
ご老人で顔が火照って、頭がワクワクとして違和感があってという方に使ってよかったことがあります。

・糖尿がある女性で結構長期に出していることがあります。

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症例1. 2. 3. 


【2013/07/25 21:02】 | 漢方解説
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107.jpg
107. 牛車腎気丸

【生薬構成】
地黄5、山茱萸3、山薬3、沢瀉3、茯苓3、牡丹皮2.5、桂皮1、附子1、車前子3、牛膝3 (g) 
*八味地黄丸に車前子と牛膝が入っている構成。車前子は利尿作用があります。牛膝は腰痛、膝痛を良くします。両方で作用を下焦に引き下げます。

【原典】
宋の厳用和の《済生方》に出ています。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》では、
『此方は八味丸の症にして、腰重、脚腫、或は痿弱する者を治す。一男子年三十餘、年々脚気を患ひ、腰重、脚軟、歩する能はず、冬月はやや差ゆるに似たれども、春夏の際に至れば復た発すること故の如し。余強ひて秋冬より春末に至るまで、此方を服せしめて全く癒ゆ。』

【先人】
・八味丸を用いたい場合で、尿量減少や浮腫のあるもの。老人性腰痛や糖尿病性神経障害にはことに適している。 《桑木崇秀:漢方心療ハンドブック》

・腎陽虚の水腫。すなわち八味地黄丸の症候に下半身の水腫を伴うもの。 《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・八味地黄丸の作用をさらに増強させたもの。腰痛著しく小便不利のもの。 《矢数道明:漢方処方解説》

・下半身機能低下(腰痛、脚冷、臍下不仁)/足腰の冷え/排尿障害、浮腫傾向。  《漢方常用処方解説:髙山宏世》

【井上流】
・八味地黄丸の補腎効果を強化した薬。糖尿病の方や女性に使用する機会が多い。
八味地黄丸と同じく、腎虚に起因する疾患に頻用する。

・食欲良好で元気なお年寄りには八味地黄丸、牛車腎気丸なのですが、隠れた裏寒があり虚弱となっている方には温裏剤である真武湯を少量合方すると良いことが多いのです。
《整形外科の漢方治療》

・八味地黄丸の補腎作用を強化した薬。女性や糖尿病の人の腰痛、神経痛に良く用いる。
《老人の漢方治療①》

・牛車腎気丸(107) [八味地黄丸 牛膝 車前子]
  車前子――甘 寒   利水 通淋 明目
  牛膝―――苦 酸   補益肝腎 活血通経 止痛
八味地黄丸の作用を強化した薬方。糖尿病のある人や婦人によく使用する。
《補血剤、補陰剤について》

・八味地黄丸に更に牛膝と車前子を加えて補腎効果を強化した処方。生活習慣病一般に使用するが、殊に糖尿病に使用の機会が多い。
《生活習慣病の漢方治療①》

【Dr.サントのコメント】
・八味丸に比べて、足の浮腫みがある場合に良く効くようです。

・井上先生は、いろいろの方剤に組み合わせて使っています。
最近では、清心蓮子飲、木防已湯などと組み合わせて使っていました。

・サントのところには腰椎脊柱管狭窄症の患者さんが来られますが、牛車腎気丸を出すことが多いです。下肢のしびれに効いてくれます。

・糖尿病で足がしびれた場合にも使っています。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3. 




【2013/07/22 21:51】 | 漢方解説
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