日本古来の漢方や中医学とも違う、新しい漢方ともいうべき「井上流漢方」について説明します。患者さんの気の流れをみて気を整えることを第一義とする「井上流漢方」を名古屋の井上先生の外来から報告します。
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12月××日外来

50代女性、新患
頻尿があるので外出もできないという訴えで来院
ガッチリした体格の女性、骨太で体力はありそうな印象
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「今、どこかにかかっておられますか?」
  「一度泌尿器みたいなところにも行った事があるのですが。」
「お体見せてください」と、横になってもらって腹診をする。
「しっかりしたお体してますね」骨格もしっかりして、下半身も頑丈そうで特に悪そうには見えない
「どういう風になるんですか?」
  「えーっと、5年前に外で友達と会ってたときに、とつぜん失禁をしてしまって、それから精神的に不安で。外出するとなると、不安でトイレに入って、出れなくて、外でもトイレがないと不安で...」

「あなたって丈夫な人よね、すごい丈夫な体よ。」太ももに力があり張っています。
「女の人としていい体しているよ、これ、いい体の証拠よ」

今度は、右の脇腹を軽く叩くと緊張があります。
「胆経のこわばりと、胸脇苦満があるようだし、これ、竹茹温胆湯とか竜胆瀉肝湯とか、そんな薬でいいのかな」
次に、胸を触ると「胸に熱を持っているようだし、瀉剤でいいような感じね」と、井上先生。

「あの、神経だけやね、これ。下半身が弱って起こるのと違うよ。」
  「そうですか」
起き上がってもらって肩を見ると、肩こりがすごい。
「肩、カチカチよね」
  「そうです、すごい肩こりで..」と、患者さんは笑いながら答える。

「それじゃ、言葉で言うでね」と、ここでコトダマ診断を始めました。
「私たちの体は肉体だけの存在ではありませんので、薬の名前を聞くだけで体が変化するでね」と、いつもの前置きをして「竹茹温胆湯を飲みました...飲んだらどうなると思うだけでいいよ。体が答えてくれるでね。頭がスッとして腰があったかくなったら正解ね。猪苓湯合四物湯を飲んだ...さっきとどっちがいいかな..それじゃあ、竜胆瀉肝湯を飲んだ。あっ、こっち、こっちやね。」竜胆瀉肝湯が気の流れがいいようです。

「いまから薬を飲んでもらうのでね」と、
竜胆瀉肝湯を1包その場で飲んでもらいました。
・・・・・・・・・・
10分後にもう一回診察室に入ってもらいました。
見た瞬間に「スッキリしたんじゃない。顔がスッキリしているよ」
  「お腹がすこしあったかくなった気がします」と、患者さん。
横から見ていても、顔がすこし引き締まったような感じがあります。
「首、肩らくやろ。いいよね、ちょっと寝てくれる」と、もう一回腹診をしました。
腹診をすると、腹の緊張が緩んでいます。

「これで、いいよね、お肌綺麗になる薬出しておくよ。気になるんなら、パットして行けばいいのよ。体悪くないし、神経だよ、癖ができている、心配する癖が。そうすると堂々と外出できるので。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回は竜胆瀉肝湯を処方しました。

井上先生のコメント
「どっちかというと、男性のようなお肌。丈夫なお肌をしている。
重労働でも耐えれるタイプ」
「いわゆる実証の肌」
「男性的な女性にも使える」
「虚証のおり物だったら防已黄耆湯とか補中益気湯とかいろいろあるんですけど、実証だからね。ウチにはあまり来ないタイプだね」
井上内科にはどちらかというと虚証の患者さんが多くおいでになります。

本によると、竜胆瀉肝湯は”肝経の湿熱”というのがポイントのようです。
「腹証上、肝経に沿って、緊張し、圧痛あり、皮膚の色浅黒く、手足の裏が湿潤している」と矢数道明先生は書いています【臨床応用 漢方処方解説】。
井上先生の描写「男性的な肌、重労働でもOK」というのは良くわかります。


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【2012/12/30 23:16】 | 症例
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IMG_0043.jpg 12月××日外来

大学生、男性
アトピーでかかっている
長身で若いひと、アトピーはそれほどひどくなさそうですが、
肌は乾燥しているのがわかる。
卒業が近く同時に資格試験の勉強で忙しい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「どうでしたか?」と患者さんに聞く。「人参養栄湯にこの前したんですが。」と説明してくれる。
「ちょっと休んでくれる」と腹診のために横になってもらう。
  「アトピーの状態どうなった?」
「アトピーですか...まあまあ」
腹診をしながら、「腸は弱いよね、このお腹見るとおへその周りがふくれとるよね」
井上先生は、へその周りがポチャッとふくれていると腸の弱さを示すといいます。

「過食せんようにね。早く寝ている?」アトピーでは食べ物に注意して、睡眠など生活が大事だとよく言われます。
  「ちょっと...」と笑う。
「何時に寝ている?」と笑いながら聞くと、
  「1時ぐらいですかね。勉強に追われているので」と素直そうに、小さい声で答える。
「集中してやってる?」
  「やってますけど、足らないので」

「舌出して。」舌を見ると「口はかなり粘っているけど」
「やっぱり気血両補剤の人参養栄湯かな..やっぱり受験生だし、心身疲労があるので」

「あのね、試験は短期集中。7時から始めればいいって。」
  「7時からですか」と、小さい声で。
「12時超えると集中しとらんよ。やったように思うけど、本当はやっとん。」
「気合よ!」
  「気合ですか?」と、笑いながら。
「時間だけかかってもやっとらんよ。時間配分しっかりしようよ」
  「時間配分ですか」
「早く寝たほうが、バランス取れて、成績もあがるよ。夜は12時に寝えや」
と、効率よい勉強の仕方も教えてあげる。

でも、患者さんを見ていると、どうも首の辺りが重たい感じがします。
スッキリしないとサントが井上先生に申し上げると、
「首が重たいって先生が言ったよ。」笑いながら、コトダマ診断をされました「ちょっと待ってね、人参養栄湯を飲みますね...少し楽か。じゃあ、ちょっと待ってね、香蘇散を飲んだ...なんか、腰のあたりがいかん。腰がわるいなぁ。」
  「腰が悪いんです」と、患者さん。
カルテを見ると、実は、腰椎分離症で2年前に手術を受けているのです。
「腰が良くなれば首も良くなるよ。合う薬をさがすでね。ちょっとまってね、大防風湯を飲んだ...あっ、これでいいか。これ、ながれがいいね、OK、OK。大防風湯にしときます」と、患者さんのためにちょうどいい薬がわかりました。

「はいがんばってよ。無理せんようにね。朝日浴びたほうがいいよ」
  「はい、わかりました」
「じゃあ、大防風湯を1日3回飲んで。ねえ、いいね。つかれとれる。」
「よかったね、先生がきてくれて、いいときにきてくれたね、ちょうどいい薬がわかって」
井上先生はサントに花を持たせてくれました。
「はい」と、患者さん。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、今回は大防風湯を処方されました。

井上先生のコメント
大防風湯は老人の腰痛、膝痛に使う漢方とおもっていたのですが、
井上先生に質問すると
「20代でも使います、年齢関係ないよ。」
「気血両補剤なので疲れが取れる」
「十全大補湯のような薬で、使いやすい」

井上先生は、老人の腰痛に八味丸の代わりに使えるとおっしゃっています。

【2012/12/28 22:06】 | 症例
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12月××日外来

50代女性
胃の調子が悪いと言うことで3週間前からかかっている。
六君子湯と呉茱萸湯を出して、同時に
他院で胃カメラを受けてもらている。
今回は、胃カメラが終わったので結果をもってこられました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
検査報告には逆流性食道炎が認められたとありました。
「検査してもらってよかったね」悪いものでなかって一安心です。
  「今回の、検査楽でした。鼻から入れていただいたので、ぜんぜん痛くなかったです。緊張だけだったんですけど」

「今、症状としては?」
  「ちょっと楽になったので、すこし夜更かしをして、寝る前に食べたりすると、また胃がムッとするような、自分で悪くなることをやってしまって。自分でちょっとコントロールしながらやると調子が良くなってくるんですが。」と、胃が良くなったので、自分がつい食べ過ぎてしまうことを笑いながら言う。
「逆流性食道炎は自分が作っているわけですから、ちょっとがんばりましょう」と、井上先生も笑いながら答えます。

「このお薬、六君子湯と呉茱萸湯、胃の支えと軽い熱なんですけど。割といいみたいね。お顔つきがいいので」まえに比べて、顔がスッとしています。
  「浮腫んでいたのが、取れたのがわかるんです。朝起きたときに足のむくみがなくなったみたいで」
「これは胃腸風邪の薬でもあるので、またお出ししておきますよ」
  「薬がなくなって、少し心細くなってしまっていたので」

胃カメラを受けた病院からは、ネキシウムを出すようにという指示が出ていましたが、
漢方だけでとても調子がいいので、漢方だけでやることにしました。
「もし、漢方でかなわんときには、これを出させてもらうようにするので、生活気を気を付けてくださいね」
  「楽にさせていただいて本当に有難うございました」
「ほんとに良かったですね。お大事にね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回も続けて、六君子湯と呉茱萸湯をだしました。
ネキシウムは出さずに漢方だけで様子を見ることになりました。

井上先生のコメント

井上流だと六君子湯は胃の熱をとるので、胃を暖める呉茱萸湯と一緒に使うのは、少し変だと思ったので質問すると。「胃のつかえを取りながら、軽い熱をとるんですね。
呉茱萸湯証があって、わずかな熱がある人に六君子湯をつかう。
カサカサしたり、唇とか胃とかに少し熱がある。
食べ過ぎて胃が冷えておかしくなるひとに、六君子湯に呉茱萸湯を足してあげるといいよ。
冷えだけが有る人は呉茱萸湯と人参湯を合方する。」

呉茱萸湯と人参湯はどちらも胃を暖めるので、一緒につかうのは理解できます。
現に、サントもつかっています。

でも、この場合は、胃の中に熱と冷えが混在しているので、呉茱萸湯と六君子湯をつかうのですね。
陰の中に陽が有り、陽の中に陰が有る、東洋医学の根本につながりそうです。

*ネキシウム:プロトンポンプインヒビターの中で新しい。オメプラゾールの光学異性体。胃酸の分泌を抑える効果に優れる。

【2012/12/27 21:38】 | 症例
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IMG_0033.jpg 12月××日外来

40代女性、新患
冷えが主訴
やや痩せ気味だがた
顔を見ただけでは冷えがあるかどうかわからない。
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  「なんか、冷えがすごくて...」
「今、なんか薬飲んでいる?」
  「特にないんですけど、夜中に目が覚めて、どれだけ布団かぶっても、お腹のなかが冷たくて寝れない感じなんですよ。」
「休んでくださる」腹診のために横になってもらう。「失礼しますよ」と、足を触ると
「ここから下すごく冷えているね」膝から下の冷えが著明です。下半身はとても冷えています。
お腹を触ると「内臓が少し下がっている。便秘勝ち?」
  「そんなにひどいことないですけど」
「夜中にトイレ行く?くしゃみ鼻水はでる?」
  「それもないでが、喉がいつもイガイガした感じで...あと、頭痛が、今朝も頭が冷えていて、頭が痛くて...」
「胃が動いとらんよね、チャバチャバ言っとるよね」胃の辺りを軽く叩くと水の音がします。
「これ胃内停水というんだけど」
  「はい」
「腰痛いことない?腰の冷えは?」
  「あります。子宮頸癌の軽いもので手術をしたんですけど」
「腰が冷えるという自覚はないですか?」
  「もうこの辺一帯が冷えているっていう感じがします」患者さんにとって特に腰だけでなく
下半身一帯が冷えているようです。

「ちょっと言葉で言うで、教えてね」ここでコトダマ診断を始めました。「苓姜朮甘湯をのみました...飲んだと思ってくれると、ここ、喉が少し楽になるね。ここの流れが良くなるので。頭痛にも効くので。それか、苓桂朮甘湯を飲んだ...これは上だけだよね、下に降りないよね。やっぱり苓姜朮甘湯だよね」気の下がり具合は苓桂より苓姜朮甘湯の方が良いようです。
「大体、下腹部の手術した人で、胃内停水があると、苓桂より苓姜の方がいいね。ここの操作してあるので」と、サントに教えてくれます。

「今から薬飲んでもらって、生活指導させてもらうでね。頭に気が上がっているので、気を下げると頭痛も喉のイガイガもとれるでね。」
その場で、苓姜朮甘湯を一包飲んでもらいました。
・・・・・・・・・・
20分後にもう一度入ってもらうと、
「ちょっとスッとした?」と、井上先生。
  「スッとしてはいますけど、まだ..」と患者さん。
「そしたら目がまだいかんね」井上先生は、患者さんの目の周りの流れが悪いのを見ただけでわかります。
ここでお灸のコトダマ診断を行いました。
「それじゃあ、太谿にお灸したと思ってくれる?..じゃあ、三陰交にお灸したと思ってくれる...こっちの方がいいね。目がすっきりして来ましたね。」三陰交の灸の方が効果があるようです。

「じゃあ、お灸の仕方を話しますので隣の部屋にいってくれる」
隣の部屋で、看護師さんが患者さんにお灸の仕方を教えました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回の処方は、苓姜朮甘湯と三陰交のお灸となりました。

井上先生のコメント
この患者さんは、「胃内停水ははっきりしている。腰から下が全部冷えている。ちょっとノボセもあるんだけど、子宮の手術しているのでやっぱり苓桂朮甘湯より苓姜朮甘湯の方がいいよね」
苓桂朮甘湯はのぼせを下げる効果が強くて、苓姜朮甘湯は水を取って暖める効果が強いのです。

この患者さんの場合は、ノボセがあるので苓桂も使えそうですが、水と冷えのほうが主なので苓姜を使ったのです。また、下腹部の手術をしているのも選ぶポイントになりました。本文に引用したように「大体、下腹部の手術した人で、胃内停水があると、苓桂より苓姜の方がいいね。ここの操作してあるので」と言われました。

子宮の手術を受けていて三陰交の灸が良かったので、サントの「瘀血もあるのですか?」と、いう質問に対して「まず、いっぺん気を流してからでないとね」と答えてくれました。気が流れるようになってからでないと駆瘀血剤は使いにくいのです。

Dr.サントのコメント

井上先生は鍼をしない代わりに、お灸の指導をされます。
患者さん自身ができるので、やる気があれば毎日できるし、効果を実感できれば治療についての励みになります。

上に述べたように、井上先生はお灸でもコトダマ診断をします。
それで一番いいツボを選択します。

漢方と同様に、このときも、患者さんがツボのことをぜんぜん知らなくても効果があります。
このあたりが井上流漢方の醍醐味です。

* 太谿:腎経の原穴。足の内顆の後ろのへっこんだ所。腎を補うのに使います。
* 三陰交:脾経のツボ。足の内顆の上3寸の所。3つの経絡が交差します。瘀血の処置に良く使います。

【2012/12/25 23:25】 | 症例
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IMG_0038.jpg  12月××日外来

50代女性
腰痛、だるさ、便秘などで前から通院されている。
すこし痩せている程度の方で元気そう。
前回は、真武湯と大建中湯を処方されている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「どんな感じですか?」
  「なんか、すごい快便なんです。ダイエットになって体重も減ったの」
「良かったね」お休みください、腹診のために横になってもらう。
  「もともと便は出てたほうなんですけど、もっともっと出るようになって」
「それは良かったね」
  「体重が減ったのにはびっくりした」
腹診すると胃のつかえがすこしありました。すこし腸の辺りにはまだ冷えがあります。
ガスは減っているようですが、下腹にまだあります。

「いいみたいなので、あの薬でいいと思うのでね、お出ししておくでね」
  「はい」

  「前にも、ちょっと話したんですけど、アレルギーがあって、鼻の辺りがむずがゆいんですが..」
「この薬アレルギーの薬にもなるよ。いま、もう春になりかけているから、少し軽く出てきているのかもしれないね」まだ12月なのに春になりかけている、という感覚は井上先生独特です。体の中に季節を読み取って処方を出されることも多のです。

「食べ過ぎんようにしてみ」
  「あまり、満腹までたべんですけど」
「それと、果物とか甘いものをへらして。アレルギー出にくいから」
  「厳しいです。果物好きですから」
「みかんなら、一日一個ぐらいにして、そうするともうちょっと体が変わるで。まだお顔むくんでいるから」
  「そうなんですか」
「ちょっとがんばろう、アレルギーも大建中湯でいいよ」
  「そうですか、有難うございました」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回は、アレルギーに対しても、大建中湯のみ処方されました。

井上先生のコメント

大建中湯は一般的には「腹が冷えていてガス満が目標です」

「最近、良く大建中湯を出すんですよ。お尻の大腸兪(腰椎4,5)の辺りが良くなる。お尻の流れが良くなる、そうすると首の後ろの気の流れも良くなる。だから腰痛、首凝りにも効く。」とも、言われました。

大腸だけでなく背中の膀胱経にも作用するのですね。
すると、「体のめぐりが良くなるので神経症、うつ病にも効く。顔色が悪くてそんな人にも効く。大塚敬節先生も書いているよ」

腹のガスというと厚朴とも違うのですか?という質問に対して「厚朴は胸や腹にガスが溜まっているけど、気をはらして、のぼせを下げる働き、。大建中湯は腹や腰が冷えちゃっている、特に大腸兪のあたりが。」と、言われました。

大建中湯は使い方によってはアレルギーにも神経症にも効く、大建中湯=便秘の薬ではないのですね。


【2012/12/24 12:07】 | 症例
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hana41.jpg 12月××日外来

40代女性、新患
頭痛、腰痛が主訴
痩せ気味の女性、元気がなさそうで声に力がない。
他院でソラナックス、アモキサン、ネキシウム、セレキノン、ビオフェルミンを処方されている。
処方内容から見ると鬱病があって、胃にも問題がありそうです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「前からこういう薬飲んでいるの?」たくさん薬を飲んでいるので、井上先生は聞かれます。
  「この4月ぐらいから特にひどくて、家庭の事情があって、生理もなくなって下痢が悪くなって...もともと下痢気味だったんですけど...」と、非常にゆっくりしゃべられます。
「じゃあ、ちょっと休んでいただけます」と腹診のために横になってもらう。
「お子さんはいらっしゃいます?」
  「大学生と、高校2年の男の子がいて..大学生の子は東京にいて..」
腹診をしながら「胃腸が余りお丈夫ではないよね」と聞かれます。
  「そうですね」

「夢よく見る?」
  「夢は、はい..」
「人参養栄湯でもいいよね、こんな感じの方ね」とサントに説明してくれます。「目に力が、目力が弱い」のが目標だそうです。
「夜ぐっすり眠れてないのと違う?」
  「そうですね、何回もおきてしまう。今はその、セレキノンとビオフェルミンで治まっているんですけど、一時食欲も全然なくて...胸やけがして..」

「脈が虚脈だね」脈も虚を表しています。
  「最近、腰痛というか背中のほうが痛くて、今日はそれが主で来たんですけど。頭が痛いのは半月前からあって...」と、患者さんはゆっくり、のろのろ話されます。

「じゃあちょっとそのままにしてみて、こちらから見ると神経的に参っている様にみえるのね」
  ―「はい」
「私たちの体は肉体だけの存在ではないので、薬の名前を聞くだけで体が変わるでね」―「はい」、ここでコトダマ診断をはじました。
「ちょっと実験するよ」―「はい」、患者さんは、つられて自動的に「はい」といっている感じです。
「人参養栄湯を飲みました。飲んだとだけおもって。」―「はい」、「人参養栄湯を飲みました...背中があったかくなるね。」―「はい」、「ちょっと、今から飲んでもらうでね」―「はい」
「生活指導をさせてもらってもう一回見せてもらうでね」―「はい」
その場で飲んでもらいました。
・・・・・・・・・・
10分後、もう一度診察室に入ってもらいました。
「お薬どうでした?」
  「はい、美味しかったです」
「美味しかったね、よかったね」井上先生は、患者さんを見て確信したようです。「この薬出しておくでね」
  「はい、有難うございました」

「なんか楽しみながら暮らすことを工夫しよう。ちょっと、神経的に参っているところがあるので。この薬で神経科の薬もいらなくなることもあるよ。なにかこう、いろんな楽しい事を自分で探すこともいいよ」
患者さんの「はい」という言葉にも力が出てきています。
顔が明るくなって、目力が出てきています。10分間で劇的に変わりました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回は人参養栄湯を処方されました。

井上先生のコメント
「お肌に色艶がないような感じ、それが人参養栄湯。目に力がなくて、胃腸が弱っている、そんなのに使うのです」キーワードは弱い目力です。
不眠、多夢は典型的ですが、「ご本人は寝れないとかいわないけど、今の方も主訴は腰痛と頭痛でしたよね」と、不眠は本人の主訴となりにくいようです。

他にも、
「心が疲れたときに使える。一人暮らしの先行きに不安を持つような人にもいい」
「夏ばてにも使える。シェーグレンにも効く。関節リュウマチにも効くことがある。若い人のアトピーにも効くことがある」

井上先生は、最近良く使うそうです、思いもかけない疾患に効くといっていました。一見がっしりした男性でも良く効くことがあるようです。
心の疲れを見逃さないことがポイントです。

【2012/12/23 00:52】 | 症例
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hana40.jpg 12月××日外来

40代女性
先週から下痢があり、喉がいたくなり、咳も出てきたといって
来院する。
マスクをかけているが、顔がやや火照っていて熱が少しありそう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ゴホンゴホンと咳をしながら患者さんが診察室に入ってくる。
  「まだ下痢しますか?」
「食べたくないのであまり食べていないです。頭痛も有る、咳して、こう頭が痛くなる」
  「咳はどこから出る?」
患者さんは胸の辺りを指します、と、同時にゴホンゴホンとまたやりだしました。

横になってもらって腹診をすると、胃に水振音がします。
「胃が弱っているよ、チャバチャバしているよ」
  「昨日、みかんと、バナナと、りんごを食べた。ほかに食べたくなくて」
「口渇くの?」
  「そうです」
胸を触ると「あーっ、ここに熱持っているね」と、熱を察知されました。
「ちょっとのぼせとるね」
  「だからつま先が冷える感じがする」

そこで、コトダマ診断を開始しました。この患者さんに対しては、前置きはなしです。
「一般的には、少し熱を持っているけど、たとえば茯苓飲合半夏厚朴湯をのんだと思っていくれる...あまりスッとせんね。六君子湯を飲んだ...こっちのほうが少しいいね。
じゃあ、六君子湯と香蘇散を一緒に飲んだ...じゃあ、六君子湯だけ...この方が落ち着くね。
六君子湯という風邪薬で、胃の薬で、咳止めで、神経の薬という便利のいい薬があるので、しばらく飲んでみて」
「それと、粗食にしてね」
  「そうですね、金曜日と土曜日に忘年会でいっぱい食べてしまったら下痢をしてしまって」

「ちょっと寒気ある?」
背中を触ると冷えがあります。
「茯苓四逆湯をちょろちょろ飲みながら、六君子湯で風邪熱をとるともっといいと思うよ」
風邪の冷えがあるので茯苓四逆湯を一緒に出されました。

「果物食べると冷えるよ、確かに熱は取れやすいけど」
  「喉がヒリヒリして、どうしても冷やしたくなる」
「じゃああ、今、煎じ飲んでもらうよ」と、茯苓四逆湯を一杯飲んでもらいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、今回は六君子湯を風邪薬として出しました。

井上先生のコメント

井上先生が今まで六君子湯について話されたことをまとめると。
・胃腸が弱い人の風邪薬としてよい.陳皮,半夏が気管支の熱を冷ます.咳が取れます。
・胃の熱があるので、舌の先が赤い,唇が赤い,かさかさ,口渇,冷たいものを飲みたがるなどの証が見られる。水を飲んでしまって胃腸の症状が出やすい。
・人参湯、四君子湯は胃の冷えなので違う。
・胃腸虚弱の鼻炎,気管支炎,喘息のファーストチョイスとなる。
・胃腸の調子が悪くて,神経性の咳が出るとき六君子湯+香蘇散がいいことがある。
・補中益気湯は気をあげるが六君子湯は下げる。

Dr.サントのコメント

・風邪に使って、確かに六君子湯が良く効くことがあります。
こんなことは、あまり、漢方の教科書には書いていません。

・また、胃の熱状に注目することも、偉い先生の本にはのっていません。
多くの本は、六君子湯は四君子湯+二陳湯なので、水毒があると書いています。
井上流によると、熱があるので水を飲んでしまって、一見水毒に見えると解釈できるようです。

・実際に使ってみると井上流のほうが患者さんの実際の体に合っているようです。
本に書いていることよりも、患者さんの体の声に耳を傾けることが大事だと改めて思います。

【2012/12/21 03:14】 | 症例
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hana39.jpg 12月××日外来

50代女性
新患。
2年前から高血圧がありブロプレスを飲んでいるが、漢方で治療ができないかと来院。
体はがっしりして丈夫そうだが、
顔はややくすんでいる印象がある。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「漢方で高血圧の治療をできないかということですね。ほかに何か自覚症状がありますか?」
  「血圧以外はきわめて健康だと思うのですが、運動もしてますし、さしあたってどうと言うこともないのですが」
「それではお体見せていただきます」と、腹診をするために横になってもらう。

腹診をしながら「下腹が張りますか?」と聞くと、
  「そうですね、便秘がちだったりします」と、患者さん。
下腹には瘀血の所見があるようです。

「肩こりとかあまり感じませんか?」
  「風邪を引いたときとか感じることもありますが、普段は特にないです」
「動悸しますか?」
  「するかも知れません」
「顔色がちょっと悪いような気もしますが」
  「あー、そうですか」と、患者さん。

「漢方の立場では、中年以降に血圧が高くなるのは、それはいわゆる腎虚といって、腎臓の働きが弱るということで起こることが多いといわれていて、補腎薬といって腎臓の働きをよくすることが、そういうお薬を出すといいと言われているんですよ。よかったら、そんな薬いっぺん出してみますで飲んでみられますか?」井上先生は高血圧と漢方の関係を説明されました。
  「はい、有難うございます」

「じゃあ、一番基本は女性は四物湯なんですけど、飲みやすい薬が芎帰膠艾湯。ちょっとお体に聞いてみますね」と、ここでコトダマ診断をします。「まず、四物湯を飲みました...芎帰膠艾湯をのみました...どっちかというと、こっちがあったまってくるわね。それか、七物降下湯をのみました...これよりも、芎帰膠艾湯がいいね。芎帰膠艾湯..下に気が下がるね」

「じゃあ、漢方の立場での生活指導させていただきますよ、そしてお薬出しますよ」
  「お願いします」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして、生活指導をして、今回は芎帰膠艾湯を処方されました。

井上先生のコメント
「高血圧では女性は四物湯が基本なんですが、それから派生した漢方を考えると良い」
「芎帰膠艾湯は肺があったまる薬なのね、花粉症にも良く使います。補腎剤、補血剤の中で現代の女性にもっとも使いやすい薬です。四物湯は胃にこたえることが多いので使いにくいことがある」

「腹診で胃がつかえていて瘀血があると芎帰膠艾湯が合うことが多い。
現代では、胃のつかえている人が多い」

補腎と聞くと八味丸は?という質問に対して「あの顔は違うよ、八味丸はサンタのおじさんのようには鼻が赤くなって、熱がこもっているような、髪の毛薄くなったような男性にいいよ。女性でも時にはあることはあるけどね。」



【2012/12/19 22:05】 | 症例
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12月××日外来

30代男性
風邪で受診。
喉が痛くて、咳がでて、痰も出る、典型的な風邪症状。
特に漢方を希望してきたわけではありません。
そんな方に対しても、
診察する前から待合室で茯苓四逆湯を飲んでもらっている。
しばらくして、診察室に呼び入れます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いまね、煎じ(茯苓四逆湯)飲んでもらいましたけどどうでした?」
  「なんか、喉のイガイガが治まったようです」
患者さんは体格のいい男性。熱があるのか顔が少し赤い。

「休んでくださる」と腹診のために横になってもらう。「いつも喉が痛くなったり、扁桃腺炎になったり、高熱出たりする?」
  「扁桃腺腫れるときが多いですね」
「今回はどんな感じ?」
  「今回は扁桃腺とか喉の痛みはあんまりないですね」

「お腹を見させてくださいね」と、腹診をしながら、「あの煎じ、気に入っていただきましたか?」と、聞きます。
  「はい、結構いいですね」と、患者さん。
「今、皆さんどうしても胃腸も弱っているから、風邪薬で咳止めにもなる、あの煎じを飲んでくださったほうがね...おへその回り冷えてちゃっているから...真武湯あわせてもいいかな..」と、井上先生。
お腹を触らせてもらうと、確かに腹が全体的に冷えていました。
「便は固め?」と、井上先生。
  「硬いです、最近は」と、患者さん。

次に座ってもらって、背中を診ます。
「今、寒気はないですか、背中冷えているよ」背中の大椎(C7T1)の辺りから下が冷えています。
  「少しあります、昨日から少しゾクゾクします。」
「今日一日風呂やめて足湯だけにして、早く寝ると、早く風邪治るよ。茯苓四逆湯を煎じで飲みながら真武湯を1日2回飲みましょうか。腎臓と喉をあっためる薬をだすと、風邪が軽くすむと思うでね」
「漢方で出させていただいてよかったですか?」
  「はい」と、患者さん。予想外の漢方を処方されても納得されていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
たぶん、患者さんは内科で普通の風邪薬をもらえると思っていたはずですが、茯苓四逆湯と真武湯を処方されました。

井上先生のコメント
「胃が弱っているときは煎じ(茯苓四逆湯)だけで行くんですが、どっちかというと汗かきで便秘勝ちで、少し余力があるので、真武湯でもう少し追い討ちかけたほうが治りやすい。真武湯で陰を補ったほうが治りやすい」

「まず陽を補ってから陰を補うのが原則です。下痢したりして余力がなければ茯苓四逆湯だけとか、エキスなら人参湯だけとかで行きます。でも、余力があればそれに真武湯をたせばいい」

下痢にも真武湯を使うのではないですか?という質問に対して
「あれはね陰虚による下痢ですよ。今の場合は陰を補うのに真武湯をつかう」

Dr.サントのコメント
*井上先生の診察室では茯苓四逆湯を煎じていて、いつでも飲める状態になっています。風邪の症状の患者さんがくれば、裏寒であることは間違いないので診察するまえから飲ませてあげています。

*「茯苓四逆湯」は井上先生のもっとも好きな漢方の一つです。
漢方の臨床 45(11),に 「私の好きな処方、茯苓四逆湯」 という論文を書かれています。参照してください。

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【2012/12/18 22:47】 | 症例
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12月××日外来

30代女性。
疲れて体がだるいという主訴にて8月から通院されている。
体格は普通で痩せてもいない方。
カルテを見ると最初は甘麦大棗湯と真武湯でスタートしている。
多分、冷えがひどかったのでしょう。
月経時の腹痛と頭痛もあるので、
前回は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯と大建中湯を出している。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  「だいぶいい感じですけど、ちょっとまだお腹が張り気味です」
「生理前の偏頭痛、生理通は?」
  「だいぶ良くなりました」
「鎮痛剤いる?」
  「飲まなくても大丈夫です」
「すごいね。お灸やってみた?」前回、お灸の指導もされたようです。多分、井上先生が良く使う三陰交でしょう。
  「毎日やっています。」
「すごいね」若い人なのに、まじめにお灸をやっているのに井上先生も感心しています。
  「胃が、胸焼けと軽い吐き気が結構前から、夏ごろからなんですけど、胃の薬をもらって飲んでるんですけど...」と、患者さんが言います。

「胸焼けというと、安中散がありますよね。当帰四逆加呉茱萸生姜湯と大建中湯をだしてて、瘀血がはっきりしてきたら安中散にしたいんですけど。安中散にできるかどうかね...」腹診をしながら話されます。

「お腹にガスがたまっていて、冷えていたので、あっためないと仕方なかったのね。そうだよね、今もお腹にガスがたまっているんだけど」
  「すごい、つらいです」
「ただね、お肌がカサカサなのね。だから安中散のほうがいいんですが、手も冷えているんだけど、だからこのままでいくか..でも瘀血ははっきりしているし...」「痛いよね、これ瘀血ね」と、下腹部をさわって患者さんに言われます。下腹部に瘀血がはっきり出てきています。
  「痛いです」と、すこし顔をしかめて患者さん。

「そうですね、次のステップに行きたいのですが...」瘀血がはっきりしているので、どうするかすこし迷われています。ここで前置きなしにコトダマ診断をされました。「今のお薬が、当帰四逆加呉茱萸生姜湯と大建中湯を一緒に飲みまた...じゃあねえ、もう一つ発展した薬が安中散です。安中散を飲んだと思った...方が、下腹あったまったね。ここら辺すっきりしてくるんじゃない?」胃の辺りをさして言います。
安中散のほうが気の流れがいいようです。
  「はい、しました」患者さんも敏感な方なので、感じがわかるようです。

「もうこれでいいと思うでね。今から安中散をのんでもらうでね」
次のステップに進めそうです。患者さんには安中散を1包その場で飲んでもらいました。
・・・・・・・・・・
10分後に診察室に入ってもらいました。
みるとすぐに「頭スッとしたね。ここら辺の流れいいね、おへその周りのね。」と、井上先生には変化が見ただけでわかります。
患者さんも「あったかくなりました」と、言います。
「じゃあ、この薬出しておくでね。うまくいったよ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして今回は、安中散を処方されました。


井上先生のコメント
*「女性の場合は駆瘀血剤にいきたいのね、でも無理というときはまずあっためておいて、瘀血がはっきりしてきたら駆瘀血剤にいくことをかんがえればいいよ」

*井上先生は安中散を胃薬というよりも駆瘀血剤としてよく使われます。延胡索が駆瘀血効果があるといいます。中国の本草書『開宝本草』では延胡索について「血ヲ破ル、婦人ノ月經不調、腹中ノ結塊、産後ノ諸血病、・・」に効くとあります。だから安中散は瘀血に効くのですね。

*井上流の句訣では、皮膚がガサガサで、瘀血があって、甘いものが好きな女性が安中散の適応です。
動悸があり寝れない人に安中散を使われたこともあります。牡蠣があるので安定するといわれました。

Dr.サントのコメント

*普通は最初から駆瘀血剤に行ってしまいそうですが、これだときついことがあります。だからのこの患者さんの場合は、最初は「真武湯+甘麦大棗湯」で冷えを取って気をめぐらし、次には「当帰四逆加呉茱萸生姜湯+大建中湯」で子宮と腸を温めて、最後に瘀血がはっきりしたので「安中散」に持っていったのです。

*井上先生は、いつも最終的な治療の方向をイメージして処方を組み立てています。その場限りの症状がなくなればいいというものではないのですね。大局的な治療をいつも念頭に置かれて治療に当たっています。
なるほど、と、いつも勉強になります。

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【2012/12/16 20:38】 | 症例
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12月××日外来

30代女性
元気そうでお洒落な女性。
生理の前の落ち込みがひどいという主訴で6月からかかっている。
前回は加味逍遙散を処方されている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「どうですか?」
  「調子は割りといいです。2回生理があったんですけど、落ち込みはそんなになかったです。」
「それは良かったですね、じゃあ、お体見せてくださいね」腹診のために横になってもらう。「加味逍遙散にしてるんですが、ちょっとお肌がカサカサしとるかな。」井上先生は、脈を診ながら手の皮膚をみて言われます。

患者さんが、ジーンズのすそをあげて足くびが丸見えなのを見つけて、
「若いけどね、これ、風邪引き実験しとらん。すごい若いからこんなことできるんやね。風邪引くよこれ。」と、びっくりして言います。12月で外はとても寒いのです。サントが名古屋までくる新幹線の窓からは琵琶湖を越えたあたりから雪が積もっているのが見えました。
「すごいね、寒くない?いい体して見えるんだよね」井上先生はあきれています。
  「そうですね...」患者さんは笑いながら言います。

腹診をしながら、「加味逍遙散があっていると思うんだけど、お肌がね、すこしカサカサしてきているので今の薬の兄弟みたいな薬があるのね、それに行ったほうがいいかなと思うことと、あと、ちょっと腸が弱っとるよ。」患者さんのおなかがの臍のところがボッテリして冷えて力がなさそうです。
「風邪引きやすいので、これはやめたほうがいいよ。丈夫なんやね。きれいにしとるし、すごいね。」と、井上先生は若さの無防備さにあきれて同時に感心しています。

「ちょっと風邪気味じゃない?」
  「ちょっと鼻水が出ます」
「そうやな。だから十全大補湯のような薬を補助で飲んで..朝晩朝晩のんで体落ち着けた後に、そして生理前になって滋陰至宝湯にいこうかな」「生理前ののぼせとか、お乳の張りとかがくると、加味逍遙散にもうちょっと足した薬が滋陰至宝湯だから、そっちを飲んでね」

「今日は、加味逍遥散の親戚の滋陰至宝湯を出しとくね。そして、頓服的に十全大補湯を飲んで」
「寒くないかね?それじゃあ、お大事に」最後まで、井上先生は驚いていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回は滋陰至宝湯を主にして十全大補湯を補助に出しました。

井上先生のコメント

「加味逍遙散のカサカサタイプが滋陰至宝湯です」
「冬は滋陰剤を使う機会が多い」
また「足くびは女性の急所だから冷やしたらだめ。足くびには三陰交とか女性にとって大事なツボがあります。」とも、よく言っています。

Dr.サントのコメント
十全大補湯で風邪を引かないように体力を持ち上げておいて、月経前のPMSの症状には滋陰至宝湯をつかうのですね。
サントにはPMSに滋陰至宝湯をつかうという発想は出てこなかったのですが、「加味逍遙散」、「滋陰至宝湯」も「逍遥散」がベースなので理解できます。
古典の「万病回春」では滋陰至宝湯は「婦人諸虚百損...を治す」とありました。なるほど!

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【2012/12/15 22:23】 | 症例
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井上先生の文章から「気」についての説明をみつけたので引用します。
原典は「現代のいわゆる自律神経失調症に対する漢方治療」(Wordファイル)です。

・・・・・以下引用・・・・・
まずは漢方医学における心身相関に関する基本的な考え方を紹介しましょう。
漢方医学では「気」という概念で心身を統一して捉えています。目に見えないエネルギー「気」を更に「気(実体のないもの」)と「血(より実体のあるもの)」に分けて考え、後世になると気血の「血」から狭義の「血」を分立させ、「血」と「水(血液以外の体液)」に分けて取り扱われるようになり、「気」、「血」、「水」(気血水)という3要素から病態を観察し治療するようになりました。
 気とは、下記のように考えられています。
● 目には見えないが身体に作用し精神にも作用するもの
● 血・津液および排泄物を押し動かし臓腑機能を促進するもの
● 身体を温める
● 過剰な排泄・出血を抑え、内臓の位置を保つ
● ものを変化させる
● 栄養にかかわる

(中略)

 古代中国には大自然の法則を5つの要素に分けて説明する陰陽五行説があり、漢方医学における疾病の診断治療の基礎となっています。
 五臓六腑にそれぞれ神が宿り、臓腑の機能を整えるとともに、各臓腑には固有の感情を内蔵していると考えます。また、疾病の内因として、七情と言い、極端な感情の逸脱が臓腑の気の過剰を来たし、病的現象として火を生じさせ、気の偏在を起こし、臓腑の機能を狂わせ、精神のバランスを失わせ、様々な身体の病気を引き起こすとともに、いわゆる自律神経失調症にもなると考えられており、それぞれに的確な治療薬方を用意しています。
 治療薬方については後に紹介いたしますが、ここでは「気と陰陽五行説の考え方」と、五行思想の五行がそれぞれ何に対応しているかを記した「五行配当表」を紹介しておきましょう。

 気とは、世の中を構成しているすべての最小単位で、物も心も命も気によって成り立っており、これら万物の変化の仕組みを理論化したものが陰陽五行説という考え方であり、五行(木、火、土、金、水)がそれぞれ何に対応しているかを記したものが「五行配当表」です。配当表をご覧ください、一見、荒唐無稽に思えるのですが、よく見ると鋭い感覚で病証を的確に捉えています。
・・・・・引用終わり・・・・・

是非、原典にあたってください。

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【2012/12/13 20:55】 | 井上流漢方
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12月××日外来

60代女性。
肩こり、腰痛、便秘などいろいろの症状で通院している方。
少し久しぶりのようです。
糖尿病もあり、他院で検査するとHbA1cが6.8と良くないという。
顔は痩せ気味で、やや乾燥して少し赤みがある。
声が、ガラガラしてかすれている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「風邪気味?」
  「そうですね」
「ちょっと胃がおかしいね」腹診をすると胃のところに振水音がありました。
「歩くとチャバチャバいうやろ?」
  「そうです、食べることはないんですが」
「水分は?口渇いちゃう?」
  「乾きますね」
「でも飲みすぎたらいかんよ」胃内停水は飲みすぎかも知れません。
  「腰の調子は前より良くなった気がしますけど」と、患者さん。もともと腰が悪いのも主訴のようです。

ここで、慣れている人だったので、いきなり前置きなくコトダマ診断にかかりました。「じゃあね、麦門冬湯を飲んだと思ってくれる。麦門冬湯です...口が渇いて飲むから胃がおかしくなるんかな?...」麦門冬湯の反応はもうひとつのようです。
「じゃあね、苓桂朮甘湯をのんだ...目が重いね。苓姜朮甘湯は?...これも、目が重いね。」
「のど渇くもんだから、胃がチャバチャバしているし。のんでしまって、かえって胃がおかしくなるんだね。それかよ、じゃあよ、いっそう、八味丸を飲んだ...この方がいいか、気がスッとするね。目が楽になるね」
八味丸がもっとも気の流れがいいようです。

「八味丸5粒を1日2回のんだと思ってくれる...八味丸の方がスッとするので、これにしとく。足腰の薬で有名な薬にしときます。ただ、量を少しにして、少量じゃないときついから。口渇いても飲むのを控えてね。」

「粒で出すので、5粒ずつを1日2回飲んで。足腰の薬で糖尿病のくすりで有名だからね。ただね胃腸がいいことが条件だから、胃腸が重たいときとか飲まんようにね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回は、小太郎の八味地黄丸を処方されました。
これは粒なので、井上先生は少量で使用されます。
少量でも十分効くとおしゃっています。

井上先生のコメント
サントは、井上先生が苓桂朮甘湯から急に八味丸に飛んだことにびっくりしたのですが、「喉が渇いて、水を飲んで水毒のように見えている人がいます。こんなときは水毒の薬は効きません。」確かに、サントの経験でも、炙甘草の合う人は口がかわいて水をのんでむくんでいる人がいました。

麦門冬系統、八味丸系統でも口が渇くので、水分をとって水がたまる人がいるんですね。

さらに「金匱要略に条文があるよ」と教えてくれました。
後で、しらべると「痰飮欬嗽病脉證并治第十二」に「夫短氣有微飮。當從小便去之。苓桂朮甘湯主之。腎氣丸亦主之。」と、ありました。ウーン、なるほど、またまた感心しました。

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【2012/12/13 16:57】 | 症例
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12月××日外来

20代女性。
生理痛がひどいということで通院中の方。
尿のにおいがあるということで、
前回、清心蓮子飲を処方されている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なんか、いいみたいね、お顔がスッとしているよ」と、井上先生が患者さんの顔を見るなりおっしゃる。
サントは、初めて見せていただくが、顔がさっぱりしている感じがある。
  「下腹のシクシク感が減りました」と、患者さんが言います。
「尿のにおいは?」
  「それも減りました」
腹診のために「じゃあお体見せてください」と、横になってもらう。

「清心蓮子飲をお出ししたんですけどこれでいいみたいで。生理前におちち張ったり、下腹がいたくなったりする?」
  「いまがちょうど生理前で、ちょっと張る、、」
「おなかのほうはいい?」
  「はい」
「じゃあ、清心蓮子飲はこのままにして、なんか顔がかなりちがってみえるのでいいと思うよ」清心蓮子飲はとてもあっている感じです。

腹診をすると、下腹部に瘀血を感じられました。
すでにコトダマ診断になれている患者さんのようで、前置きをせず、いきなりコトダマ診断を始めました。
「下腹に瘀血があるので、清心蓮子飲を飲みながら牛車腎気丸を飲んでみようか?...胃が温まってきて、下腹わりといいよね。清心蓮子飲に牛車腎気丸を半分足して飲もうか。...半分足すと...下腹割と暖かくない?こんな感じにしていいんじゃないかと思うけど。鼻も通るしね。こんな感じでいくね」
と、処方は割りと早く決まりました。

「湿熱が有る人は清心蓮子飲がわりといいのね。」と、サントに教えてくれる。

また、患者さんには、「胃が疲れたときは清心蓮子飲だけにして、生理前のおなかが張ったときは牛車腎気丸を半分足して、自分で調節してくれる。」と服用上の注意をされました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして今回は清心蓮子飲に牛車腎気丸を処方されました。

井上先生のコメント
女性の生理痛にも牛車腎気丸が効くのか?というサントの質問に対して
「清心蓮子飲と牛車腎気丸の組み合わせで内膜症の痛みが止まった人があります。腎を補いながら駆瘀血するので」と答えてくれました。
牡丹皮が駆瘀血の作用があるのでしょう。

hana33

【2012/12/13 16:00】 | 症例
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12月××日外来

80代男性
奥さんと一緒に受診。
10月から鼻づまりがあり、鼻水が出て、痰も出てよくならないという。
大柄な方、顔色がが少し黒っぽい感じがする、むくみもありそう。
無口な方で、奥さんが代わってほとんどしゃべる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
病歴を見て「心膜炎があったんですか」と、井上先生が聞くと
奥さんが「10年前にT病院に10日ぐらい入院しました」と、答える。
「そうでございましたか」
  「それと、胸の帯状疱疹がでて1月かかりました」
「わかりました、今は鼻のほうが気になられるのですか?」
  「あの、鼻と痰ですね、ネバネバの」と、また奥さんが答える。
腹診のために横になってもらって、
「鼾はどうですか?」と聞くと
  「一晩中というわけではないですけど」と、これも奥さんが答える。
ご本人は終始しゃべらない。

井上先生は腹診をして胸の流れが悪いのを感じたのか、「木防已湯でいいかもしれん。胸が、胸がね」といわれる。触らせてもらうと、心窩部が硬くて詰まっている感じがする。
「胸のレントゲンも痰の検査も問題なかったですが、なかなか取れなくて、もう」と、奥さんが答える。

そこで、井上先生はいつものコトダマ診断を始めました。「じゃあ、ちょっと実験しますでね、教えてくださいね。木防已湯を飲みました...辛夷清肺湯を飲みました。石膏の入った、、、辛夷清肺湯を飲みました...」「こっちでもいいか。鼻がスッとするね」確かに見ていると鼻がスッとしてきました。
「胸も楽じゃない?」と、サントに尋ねられます。そこで、もう一度コトダマ診断をしました、「木防已湯を飲みました..辛夷清肺湯を飲みました....木防已湯を飲みました...これより、、、辛夷清肺湯やね。」

「いまに、お薬飲んでもらうでね、いいお薬あるでね」
確認のために、辛夷清肺湯を1包そのばで飲んでもらいました。

飲んでもらっている間に、奥さんが、息子さんが夏に癌でなくなったことを話されました。それで、お二人とも看病で体調を崩されたそうです。
・・・・・・・・・・
10分後みせていただくと「いま鼻とおってきましたね」と、井上先生。
  「うん、この薬きいているね、うん」と、初めて、ご本人がゆっくりと喋りました。
「口の渇きも取れてきたんじゃない」
  「うん」
「ちょっと、1ぺんこれ飲もう。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回は、辛夷清肺湯を1週間処方されました。
奥さんの舌が荒れて治らないという訴えに対しては、木防已湯を処方されました。

井上先生のコメント

・ご夫婦は同じ漢方になることが多い。
・奥さんのほうは胸に熱があって、コトダマ診断で木防已湯を選びました。
・辛夷清肺湯と木防已湯は石膏が入っている点では良く似ている処方。
・胸の帯状疱疹でも木防已湯が効くことがある。
・今日は、木防已湯をだす患者さんが多かった。同じ日に同じ漢方をだす患者さんがかさなることがよくある。

hana32

【2012/12/11 21:26】 | 症例
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今回はフォトタッチメソッド(PTM)の具体的な方法を書きます。

さて、方法をいろいろ模索していたころ、2012年5月のゴールデンウイークに時間があったので、そのころ興味を持っていたバッチ・フフラワーレメディー(注1)の写真をインターネットからダウンロードしてプリントアウトして、花の写真を看護師さんに触ってもらうことを行いました。
すると、文章を読まなくても、その人にあったレメディーがなんとなくわかるようなのです。自分に合っているレメディーだとスッとする感覚がおこるのです。同時に私がフィンガーテストをすると、彼女に合うレメディーのときに陽性の反応がでるのです。

これは面白いと思って、漢方薬でも同様のことができないかと思いました。
漢方パネル
そこで、ツムラのすべての漢方を20個ずつ並べてデジカメで撮って、プリントアウトしてラミネートしたパネル(右写真→)を使って、患者さんに写真を触ってもらいました。

すると、なんとなく、患者さんの気の流の変化がわかるのです。
通常は患者さんに漢方の写真を触ってもらいながら、私は左手で患者さんの膝に触れています(下写真↓)。患者さんに触れたほうが私にとって患者さんの気の流れを察知しやすいからです。サントはまだ、井上先生のように見ただけで気の流れがわかるまでにはなっていないからです。

PTM.jpg患者さんがご自身に合った漢方の写真を触ると、「頭がスッとする」、「腹が暖かくなる」、「足が温かくなる」etc.という感じが起こってきます。合わない漢方の場合には「頭や肩が重くなる」、「息が苦しくなる」etc.などの嫌な感じが起こってきます。この感じは、私が感じるのと同時に多くの患者さんも同じ感じを持ちます。

大体7~8割の患者さんが何らかの感じを言ってくれます。よくわからくても、「今、おなかがあったかくなってきませんか?」とすこし体の中に注意を向けてあげると、多くの患者さんがその感覚を理解されます。気の流れのわかる人の割合の多いのには、私自身驚いています。人は普通に気の変化を感じることができるのです。少しだけ、体の中の「気」の流れに注意を向けてあげるだけでいいようです。
気を感じるのは特殊な能力ではないということがこれからいえます。

さて、治療に際しては、もし患者さんの主訴が頭痛であればPTMで「頭がスッとして、腹や足が温かくなる」感じをおこす漢方を処方すれば良く効きます。風邪であれば「背中や腹があったかくなる」感じを起こす漢方を選べはいいのです。腰痛であれば「腰が暖かくなる」漢方が適応になります。
PTMの起こす感覚と、井上先生のコトダマ診断でおこる感覚が一致するかどうかについて、井上先生に実験をしてもらいましたが、ほぼ同様の感覚を引き起こします。
ということは、PTMはコトダマ診断の代わりに使えるのです。

PTMではコトダマ診断のように名人である必要はありません。漢方の写真を用意するだけです。さらには、患者さんにあった漢方の場合は、敏感な患者さんだと「これがいい」と勝手に漢方を選んでくれます。私が感じるより患者さんのほうが微妙な感覚を感じる人も最近では出てきました。
すると患者さんのほうで、「以前出してくれた漢方の写真を触らせてくれ」といって、自分で漢方を決める人も出てきました。こうなると、私としては、医者が要らなくなってしまって困るのですが (+◇+、)。

どうして、こんな簡単なことを、今まで誰もやらないのか不思議です。
PTMを使うと、サントのような初心者でも漢方の名人と同じレベルの診断ができます。

さらには、西洋薬でも使えます。
サントのところには頭痛の患者さんが多いので、よく使う頭痛薬の写真のパネルを使ってPTMをしています。特に、片頭痛のトリプタンは5種類ありますが、それぞれ少しずつ効き方が異なります。
どれにするか選ぶのにとても役立ってくれています。
つまり、PTMで「頭がスッとなる」トリプタンを処方すればいいのです。

あと、PTMをやっていると鍼の感覚も鋭くなるようです。サントは井上先生のように言霊(コトダマ)だけで気を動かすまでにはなっていないので、その代わりに鍼をして患者さんの気を動かすことをやっています。これについては、またの機会に書きます。

(注1)バッチ・フフラワーレメディーについて

バッチ フラワー BOOK  〜38種 花のエッセンスが心をいやす〜バッチ フラワー BOOK 〜38種 花のエッセンスが心をいやす〜
(2006/10/20)
白石 由利奈

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hana31

【2012/12/10 21:29】 | フォトタッチメソッド(PTM)
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今回はいよいよ、Dr.サントが漢方診断に使っているフォトタッチメソッド(PTM)のお話をします。
コトダマ診断に変わるものとしてサントの一押しの方法です。

実は、サントは井上先生のコトダマ診断をまだ十分には使いこなせません。
見学していて、井上先生に「今、患者さんの頭がスッとしたやろ?」といわれると、なんとなく「そうかな...」と、わかる程度です。
言葉(コトダマ)をかけて、患者さんの気の変化を察知するのはやっぱり難しい。
今までの外来の実況中継からお分かりのように、井上先生はこともなげにコトダマ診断ができてしまいます。

でも、これは特殊な能力のある名人か、長年の訓練をしないとできないというのがサントの実感です。
どうにかしてコトダマ診断と同じようなことができないかと思い、試行錯誤の結果編み出したのがフォトタッチメソッド(PTM)です。フォトタッチメソッド(PTM)を使うと常人であるサントも患者さんの気の流れがわかるようになりました。
それを、今からお話します。

さて、振り返って見ると、半年間井上先生の外来に通ってもどうしても患者さんの気の流れがつかめませんでした。
患者さんにツムラの漢方薬をもたせて変化を見る方法や、オーリングテスト(注1)や入江式フィンガーテスト(注2)を試みましたが、なんとなくいいのですが、これはOK、というものでもありませんでした。

漢方の袋を一つ一つ持たせるのは非常に手間がかかります。ファイルから漢方を取りだして、また入れなおさないといけない。外来でやるには時間がかかりすぎます。
オーリングテストをやると患者さんにとって怪しい医者に映ります。フィンガーテストもわかったりわからなかったりします。また、これら2つのテストは適・不適合はわかりますが、患者さんの気の流れが直接わかるものではありませんでした。
次回は、フォトタッチメソッド② で具体的な方法について書きます。

注1:オーリングテストについては
O-リングテスト入門O-リングテスト入門
(2009/04/21)
大村 恵昭

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注2:フィンガーテストについては

東洋医学原論(入江正 著、東京入江FT塾販売)を参考
アマゾンでは出てきませんでした。

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【2012/12/09 21:26】 | フォトタッチメソッド(PTM)
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12月××日外来

40代女性、新患。
顔がややむくんでのぼせがあって、言動からイライラがうかがえる。
体温調節がうまくいかず、夜中に寒くなってガタガタ震えるという主訴で来院されました。
生理痛があるのでヤーズを飲んでいる。
以前には加味逍遙散を飲んだことがあるが効かなかったといいます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お体見せてくださいますか」と、腹診のために横になってもらう。
井上先生は「夜は何時に寝てみえますか?夕飯何時にめしあがってますか?」と、生活の基本的なことを聞かれる。
舌を出してもらうと、先端がやや赤い。
一見したところ加味逍遙散の舌をしている。

「ご自身は何で体調不良と思いますか?」と、原因についても聞かれる。
  「子供を生んだときに初めて、20年前に、そのときに寒気があったんです。夏だったんですけど、エアコンかけていて急に寒気が出たんです。それ以来ときどき、ちょっと寒いなと思ったら寒さがガクガクするぐらい寒くなって、布団に入ると汗は出るんですけど、体中寒くなって困るんです...」
「夕方、足むくんできませんか?」
  「来ます」

足の母趾が上に反っているのを見て、井上先生は「肝気はたかぶっていますよね」と、サントに言われる。
  「最近、地下鉄に乗っていると熱くないのに汗がダーットでてきたりして、からだが汗で冷え切ってしまうんです。」と、患者さん。
やっぱり冷えとのぼせはとても強いようです。

「ホルモン剤はのんだほうがいい。飲まんときとくらべたら飲んだときのほうがいい?」ヤーズの副作用を気にされて、聞きます。
  「寒さはかわらないですね」
「精神的にはどうですか?生理のときとか不安的になることはない?」
  「生理のときは頭が痛くなるので不安定というより、痛みをこらえるのが大変で..どこのお医者さんに見せても、急に寒くなってガタガタふるえて、でもそれが治まらないんですよ。そういう症状は聞いたことがないっていわれるんです」

井上先生は大体、処方のイメージが決まったのか、ここでコトダマ診断を始めました。「わかりました。それならね、今から体に聞きますね。それじゃあね、私たちの体は肉体だけの存在ではないので、薬の名前を聞くだけで体が変化します。ちょっと実験ですよ、軽く実験に参加しましょう」と、いつもの前置きをされて、
「それじゃ、目をつぶってて、附子湯をのみました...飲んだらどうなるかなと、思っていて。それか、真武湯と甘麦大棗湯を一緒に飲みました...」

「こっちかな、ねえ先生。こっちやね。肝気が高ぶっているものね。これでいいね。」と、サントに同意を求められます。確かに、なんとなくこっちの方がいいような感じです。

そこで、効果を確かめるために、「ちょっと今から飲んでもらうね、漢方は即効性がありますのでね。ですから10分ぐらいしたらわかるでね。そして生活指導をさせてもらいます」と、真武湯と甘麦大棗湯を1袋ずつ飲んでもらいました。
・・・・・・・・・・
10分後にもう一回診察室に入ってもらって、「どうでした?」と、井上先生が聞かれます。
  「足のほうが暖まりました」と、患者さん。
「そうだよね、お体見せて」ともう一度腹診をすると、腹部の右の緊張が減少しています。
井上先生は確信をもったので、「漢方ってこんだけ変わるんだよ」
  「ちょっと不思議な感じがして..びっくりしてます。体の芯からポカポカしています」と、漢方のすぐの効果に驚いて患者さんが言います。
「生活がんばろね。もしよかったら、1週間で来てくれますか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今後、体が変化することを予想して処方は1週間にされました。

井上先生のコメント
患者さんはイライラして、肝気が高ぶっているので、どちらかというと柴胡剤の適応ではないですかと聞くと。
「こんだけ、冷えていると使えんよ。よほどの時じゃない限り。寒気がするしね。」と答えてくれました。

確かに、一見加味逍遙散が合うようですが、以前に飲んでも効かなかったと患者さん自身が言っています。
病情がこじれて、過敏性があって冷えがあるので、甘麦大棗湯と真武湯にしたのでしょう。甘麦大棗湯でまず気を動かすことを重視したのでしょう。

「気」が動かないことには、冷えも取れないし、肝気の高ぶりも治まらない。
東洋医学では「気」が動いて初めて「水も血」も動くと言われています。

こじれた病情の場合には、治療のスタートはまず気を動かすことのように思いました。そのためには、気を見ることができる井上流漢方が役立つのです。

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【2012/12/09 19:38】 | 症例
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12月××日外来

80代女性
喉の痛みと背中が寒いということで通院中。
小柄で背中が曲がり声も小さい。
乾いた小さい声をしてゆっくりしゃべる。声からするといわゆる肺虚があるのか。
前回は真武湯と炙甘草湯を処方されている。
大きい声でないと通じないので、耳も遠いようです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「どうでございますか?」
  「まだ背中がね、今度は喉がすごく痛。焼けるように痛いの、ひどいときは」と、小さい声で言われる。
「真武湯をのみながら炙甘草湯にしたんですが、これ辛夷清肺湯とか石膏の入った薬でいいかもしれん。木防已湯とかね。」と、サントに説明してくれます。
  「胃がやっぱりもたれる、ちょっと食べ過ぎると。」
「下痢にはならんよね?」
  「下痢にはならん」
舌出してもらって見ると乾燥している「口渇くよね」
  「うん」
腹診をすると胃の部分は冷たいけど、胸を触るとすこし熱がある。喉の乾燥した燥熱でもなさそうです。
そこでコトダマ診断をしました
「木防已湯を飲みました。」患者さんはすこし理解が悪いようで急に動き出したので、井上先生はあわてて「体に聞くだけだから、何も気にせんでいいでね」
  「うん」
「ボーっとしとって。木防已湯を飲みました...背中あったかくなってくるね。喉もあったかくなるよね」と、サントに聞きます。そういえばそんな気もします。
「それかもっと強い薬で行くと、辛夷清肺湯を飲んだ...これじゃちょと重いやろ」と、またサントに聞かれます。そうかもしれません。
「それじゃ今から薬飲むでね」
そのまま確認のために木防已湯1包を飲んでもらいました。
・・・・・・・・・・
10分後にもう一回診察室に入ってもらいました。
「背中の寒いのどうなった?」耳が遠いので大きな声でしゃべりかけます。はっきりした返事がありません。
「さっきよりあったかいよ。胸が楽になった気がするよ。いいんじゃない」「10年ぐらい前によく来てくださった方で、以前は炙甘草湯をよく出した方なのですが、久しぶりに見えられて、お年もめされて...」と、サントに説明してくれます。
「喉のおかしい感じどうなった?」とまた大きな声で聞きます。
いいのか悪いのか「どうもない」と、患者さんは答えます。
確かに、声は飲む前に比べて、大きくなって力が出ています。
腹診をすると、胃の部分が暖かくなっていました。
これで井上先生は確信をもったので、「ここに熱持っているので、熱取るようにお薬工夫したでね、体が楽になるように工夫したでね」と、胸のところを指しながら説明されました。
「有難うございます」と、患者さん。
看護師さんも患者さんの声が大きくなったと驚いていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回は木防已湯を主に出されて、真武湯を従に出されました。
次回には症状が取れているかどうか楽しみです。

井上先生のコメント

「80とか、ある程度のお年寄りになると、心臓も弱ってくるので、木防已湯も考えないかんね」
「以前は麦門冬の薬でいけてた人なので、今回、炙甘草湯でいったんですが、もう一つ踏み込んだ薬じゃないとだめなようね、ここが(心臓)よわっとるんやろね。」
「心臓の弱った結果として、胸郭に流れの悪くなった水があって、石膏はそれをさばくという感じの薬のようです」

麦門冬は“乾いた喉の熱”を取るという感じで、木防已は“リンパのうっ滞といった胸の熱”を取るといった感じのようです。
年齢とともに心臓がよわると麦門冬から木防已に移っていくことがあるのですね。そんな風にサントは理解しました。

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【2012/12/07 00:07】 | 症例
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12月××日外来

80代女性。
肩の凝りと痛み、特に左の肩が朝に痛いという主訴で11月から通院中。
心房細動もあり、循環器内科から5種類の内服もしている。
冷えとむくみがあるので、苓姜朮甘湯と真武湯を前回処方されている。
大柄で、顔にはむくみがあり、歩く姿から腰も重そうだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  「朝の肩のズーンとした痛みは少し減ったのですが。」
「舌のピリピリはどうですか?」
  「舌のピリピリはもうありません」
「じゃあ、おやすみください」腹診のためにベッドに横になってもらう。
腹診でやはり冷えとむくみを認めました。
患者さんがヨーグルトと果物をたくさん食べるといっているので、
「意識してあったかい物を召し上がってくださいよ。ヨーグルト控えたほうがよくなります。果物も少なめにしましょうね」と、井上先生。
  「そうですか」と、患者さんはヨーグルトがよくないと聞くのは始めてのようです。
「ヨーグルトも健康にいいと言われていますが、少しにしてくださいね。お顔どちらかというとまだむくんでおりますので」
  「ああ、そうですか」と患者さん。

「ちょっとお体見せてください」と、腹診を進める。
「前は苓姜朮甘湯にしました。真武湯と..でも、まだ胸が重いわね..」井上先生は、患者さんの膻中を触ると胸の重苦しさを感じたようです。
ところが患者さんは「左の肩が痛いんです。右はいいんですけど」と、胸ではなくて肩の痛さにこだわっています。

ここでコトダマ診断をしました。「じゃあ、真武湯と大建中湯を一緒に飲んだ...、苓姜朮甘湯、真武湯、苓姜朮甘湯の順で飲んだ...それか、苓甘姜味辛夏仁湯...これのほうが目がすっきりするね。目がね。」この中では苓甘姜味辛夏仁湯がいいようです。
「苓甘姜味辛夏仁湯にしてみます。これは心臓の薬になるでね。前よりよろしいのでね」と苓甘姜味辛夏仁湯に決まりかけていましたが...

このときサントが、すこし口をはさんで苓甘姜味辛夏仁湯と木防已湯の違いを聞いたところ、井上先生はすこし思い直したように「ああ、それか、木防已湯を飲むにしたら冷えがあるので真武湯とあわせてならいいかもね。」と、木防已を試してみることになりました。
続いてコトダマで、「それじゃあ、真武湯1袋に木防已湯半袋をいっしょに飲んだ...これでもいいか。目の周りがちょっと、目の周りがちょっといかんのだけど。それか、木防已湯と真武湯を半袋づつ一緒に飲んだ...わるくないね。気ながれますね。」
と、木防已湯もなかなかいいようです。

「じゃあ、ちょっとおくすり真武湯と木防已湯を半分ずつ飲ませてあげて」と、その場で患者さんに飲んでもらいました。
「もうっちょと心臓の薬になるようにしますよ」と、井上先生。
  「心臓の薬は循環器のほうでいただいているんですが..」と患者さん。
「漢方のほうでここの流れをよくする薬を出すと首と肩がよくなるでね」と、井上先生は胸のところを示して言われました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10分後診察室に入ってもらうと。顔つきが、むくみが減ったようで、スッとしています。
「さっきよりスッとしたね。それじゃ、おだししとくでね。漢方の心臓の薬で首肩にもいいお薬をおだししときます」
今回は木防已湯と真武湯を処方されました。

井上先生のコメント
「いまの私のなかで、胸の流れが悪いのは見ただけでわかるのですが、苓甘姜味辛夏仁湯か木防已湯かは見ただけでははっきりとはわからない」といわれました。井上先生でも見ただけでは鑑別できないと言われます。でも、サントにすると、肩が痛いといってきた人を見て心臓の薬を処方するのもたいしたものです。

すると「心臓に問題があれば、胸の流れをよくすれば首肩の痛みもよくなるよ」と、言われます。
「ここ(心臓)に葛根湯なんて無理だよね。そうでしょ」といわれました。確かに、心臓に問題がある人に肩こりがあるからといって麻黄剤は問題があります。
でも、そんな使い方をしているお医者さんは結構いるのです...困ったことです。

Dr.サントのコメント
ヨーグルトについて私の経験を書きます。
サントの経験でもヨーグルトを食べて腹が冷えている方は多いです。
特に、ご高齢の方で、健康のためにお子様にすすめられて、美味しくないのに毎朝ヨーグルトを食べている方がいます。
そして、胃腸が冷えて便がゆるくなっている方が多いと思っています。

おじいちゃん、おばあちゃんの子供のときにはヨーグルトは日本にあったわけではないのに、年をとってから食べなれないものを食べて胃腸を悪くしているのです。
サントは決して、メーカーの敵ではないのですが最近のヨーグルトの宣伝には問題があると思っています。
井上先生は日本人にあった味噌汁とご飯を勧めています。

下痢気味の人にはヨーグルトをやめて腹巻をするように勧めています。
最近はおしゃれな腹巻がたくさんあります。
腹巻はヨーグルト食べ続けるより、胃カメラ受けるより、薬よりずっと安あがりで、一生もつよと勧めています。
安くて効果的なものが健康法においてももっともよいものです。
メーカーや製薬会社やお医者さんを儲けさせる必要はないのです。

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【2012/12/06 20:06】 | 症例
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11月××日外来

3歳の女の子と母親が一緒に受診。
子供さんは風邪症状で、母親は2人目の子供がほしいという主訴。
女の子は嫌がって小児科で出るイチゴの味の薬も飲まないという。
元気なことは元気だと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  「食欲はあって、でも朝ゼコゼコいっていました」と母親。また「目やにも出ている」と。
「風邪熱があるということやね」と井上先生。「ねんねしようか、何もしないから」と、女の子にいうが動かない。「あかん?おなか見るだけだよ」
でも、子供は母親の横にぴったくっついてベッドに寝てくれない。

仕方ないので、「じゃ、まず、お母さんみよう、お母さんからいこうか」と、
まず、お母さんを診ることにする。母親には腹診のために横になってもらいました。
お母さんは大柄な人。頑丈そうで、おなかもやや膨満している。
「2人目の赤ちゃんがほしいということやね。手は火照るほう?」
  「手はあったかいです」
「夏なんか、手足がほてってあついことはある?」
  「それはないです」
「ご飯食べると眠くなる?」
  「多少は、つかれていれば、でも耐えれないほど眠くはないです」
「あなたも風邪引きやすい?」
  「いま、ちょっと風邪ひいています、家族全体的には風邪引いています」
「最初のおこさんは自然にできたの?」
  「なにもせずに、基礎体温とかまったく付けずに気がついたらできて、またほしくなったので産婦人科にいって排卵誘発剤とか飲んでいたんですけど、できないので...」
  「どっちかというと背中に冷えがあるわね」
「そこは疲れると背中が痛くなるところです」

「じゃあ二ついうでね、教えてね。」とここでコトダマ診断を開始しました。
「不妊症の薬でもあるし風邪薬でもあるという薬でね。不妊症の薬は、こういう薬が不妊症の薬というわけじゃなくて、あなたの体にあった薬を出せばすべてうまくいくというね。今は風邪引いているし、背中冷えているのでおなかをあっためて子宮卵巣をあっためるという薬を出すでね」

「今から実験するでね、私たちの体は肉体だけの存在でないので、薬の名前を聞くだけで体は変わるでね。」そして、いつもの前置きをしてから、「今から実験だよ、目をつぶっていてね。十全大補湯を飲みました。十全大補湯をのんだらどうなるかなとおもってくれると...こんなもんかな...それか、当帰建中湯と黄耆建中湯を一緒に飲んだ...これは、ちょっと胸がえらいね..ちょっといかんね。やっぱり十全大補湯ぐらいかな?...」
「夢よく見る?」
  「結構見る感じです」
「じゃあ、人参養栄湯を飲んだ..こっちやね。このほうがスッとしたね」
「風邪薬でちょっと神経も落ち着く薬をだしておくで、1週間まずのんでみて。」

そこで、薬包紙のうえに人参養栄湯のエキスをのせて、お母さんに舐めさせます。
  「あっ、これぐらいなら」と、お母さんにとって味はよかったようです。
次は、子供に向かって「ちょっと舐め舐めし、やってみ、美味しいよ」と。
お母さんが舐めたので安心したのか、子供は恐る恐る指にエキスを付けて舐めました。
「大体一緒になるので」と井上先生。「美味しい?」
子供は「うん」とうなずきました。
「そうやろう、飲んでみるね。体の疲れ止めです。心肺あっためるので風邪にもいいよ。人参養栄湯を飲みました...、うん、いいよね」と子供にもなにげなくコトダマをかけて効果を確認しました。
「いっぺん飲ましたって。子供の喜ぶ量だけでいいからね」と、お母さんに言われました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
親子ともども今回は人参養栄湯を処方されました。
次回は風邪が治り証が変われば別の処方となるかもしれません。

井上先生のコメント
「子供は、多分、たいていお母さんと同じ薬になります」
「お母さんが好きな薬は子供もすきだよ、たいていね」
「そりゃ、同じ顔して、一緒のもの食べて、一緒に風邪引けば、一緒の漢方になってもおかしくないよ」

井上先生の外来を見ていると、ご夫婦でも同じ漢方になることが結構あります。
そんな時はご夫婦に対して「仲がいいことでね」と言われています。

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【2012/12/04 21:14】 | 症例
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11月××日外来

30代女性、新患
ややガッチリして、少し顔にむくみがある。
3年前からめまいがあり、疲れが取れない。
貧血もあり鉄剤を飲み始めて便秘がひどくなったと言う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  「鉄剤を2回じゃなくて1回に減らして飲んでるんですけど、なんだか飲んでいること自体が、苦痛というか...」
「そしたらね、もうちょっと体力が出るまで胃腸が弱いとそうなるから、漢方で食べ物が吸収しやすいように、内臓に力が出るように、出してみるから。そして自信がついたらフェロチームを少しずつ飲むようにしたらどう。そういうふうにしようか?」
  「はい」
「そう、それじゃ、お体見せてくれる。休んでください」と、ベッドに寝てもらう。
脈を診ながら、「脈は虚なんですよ、だから薬としては...夢見ない?」と、井上先生。
  「夢見ないです。今回、生理の1週間前から生理の3日目までめまいがあるんです」と、患者さん。

「どんなことを気を付けている?生活の中で」と寝る時間とか、夕食の時間とか、について質問される。
「貧血の原因は調べてもらっている?婦人科系の病気とか」
  「それはないと言われました」
「まず、生活ね、生理のときに血を失っちゃうからいかんので、余計とえらいんだよね」次いで、月経中の生活の注意事項の説明をされました。

「ちょっと背中見せてくれる」座ってもらって背中を見ると、右の肝臓の裏がかたくなって流れが悪くなっている。また、左に比べて熱を持っているようです。胸脇苦満がはっきりしています。
井上先生は右の肝臓の裏で胸脇苦満を確認することが多いのです。

「胸脇苦満があるけど、柴胡剤は、こういう場合は最後になるのね。だからたとえば帰脾湯みたいなものからスタートするね。」と、サントに説明してくれます。

ここで、いつものコトダマ診断をされました。
「私たちの体は肉体だけの存在ではないので、薬の名前を聞くだけで体が変わるでね。ちょっと実験だよ。帰脾湯を飲みました...帰脾湯という薬を飲んだとおもってみて..うん、少し楽になるね。これかな。念のために、人参養栄湯を言うね。人参養栄湯を飲んだ...これは気下がらんので..帰脾湯を飲んだ...これは少し気が下がるので。」
帰脾湯のほうが気の流れはいいようです。

「どっちかというと心配性だよね」
  「はいそうです。自分ではあまり意識しないようにしているんですけど、でも結果的にやっぱり心配していることが多いです」
「そうやね、いわゆる胃の薬で神経の薬をだすので、一度生理のときの注意を守ってくれることと、今からお薬飲んでもらって、別の部屋で生活指導させてもらうわね」
  「はい」
患者さんには別の部屋で帰脾湯を1包飲んでもらって、生活指導を受けてもらいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10分後にもう一度診察すると、体がスッとしてしたと患者さんがおっしゃいます。
そこで、今回は帰脾湯を処方されました。

井上先生のコメント
「今、単純に柴胡剤を行きたいところだけど、これだけ貧血あるで、もうちょっと落ち着いてからしかださん」
次は加味帰脾湯(帰脾湯+柴胡、山梔子)になるんですか、というサントの質問に対して「意外と帰脾湯でいい場合がある。とどこおてりゃ、胸脇苦満にみえるじゃない」「体調が悪くて来る人には、柴胡剤は慎重にしかださん」と答えてくれました。

サントの経験でも腹診で胸脇苦満があるように見えても、柴胡剤でよくならない人が結構います。そんな人は別の補剤や気剤でよくなって胸脇苦満がなくなることもあるのです。

帰脾湯の証はという質問に対して
「心配性で、貧血があって、夜寝れんとか夢が多いとか、疲れが抜けんとか、そのくせ割と太ってみえるんだよね。痩せとらん。そんなに脾胃虚弱じゃないんだね。利気剤だものね。」と、答えてくれました。

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【2012/12/02 00:02】 | 症例
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