FC2ブログ
日本古来の漢方や中医学とも違う、新しい漢方ともいうべき「井上流漢方」について説明します。患者さんの気の流れをみて気を整えることを第一義とする「井上流漢方」を名古屋の井上先生の外来から報告します。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

IMG_0173.jpg3月××日外来

30代女性
花粉症がきついと言って来られる
目のかゆみと、くしゃみが出るという
マスクをして診察室に入ってくる
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『なんか、このあたりが重いね』と、見た瞬間に、おでこを指して井上先生が言われる。
額のところの気の流れが悪いのがすぐにわかるようです。
   「なんか、顔が最近は赤いです」と、患者さんが言います。
マスクを外してもらうと、確かに顔が火照っていて少し赤くなっている。
   「でも、寝汗はかかなくなりました..」
   
『ちょっと体に聞いてみるよ、横になってくれる』と、腹診のために横になってもらいました。
『足はそんなに冷えていないね』足を触りながら言います。
『舌出してくれる』、舌は、少し先端が赤くなっています。

そしてここで言霊診断を始めました。『じゃあよ、清暑益気湯を1日3回飲んだ...このほうがスッキリするかね、まだ鼻のところで止まるね。』顔前面の流れが鼻のところで止まるようです。『ここんところがあかんね』
   患者さんも「いつも、ここのところが悪いです」と、鼻のところを指して言います。
『じゃあよ、もうちょっときついのというと、清心蓮子飲を1日2回飲んだと思ってくれる...ここがまだスッキリせんわね。』鼻のところの流れがまだ悪いようです。
   「ティッシュを使うのが多いです。悪寒もあります。悪寒と目のかゆみとくしゃみで夜中も目が覚めるんです」と、患者さんが言います。
悪寒があるというので、解表剤が候補にあがります。そこで『じゃあよ、香蘇散を飲んだ...少しいいかな、さっきよりいいよね。そう悪くはないね...それとも、少し強くすると、川芎茶調散を飲んだ...肩が楽、鼻が通る。目がスッキリするんじゃない』
   「はい」
『これ飲もう。香蘇散よりきついのがいいみたいね。これ今、飲もうね』
その場で川芎茶調散を1包飲んでもらいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10分後に診察室にもう一回入ってもらいます。
『鼻はどうなった?』
   「多少はいいです」
『ここら辺はいいね』背中を指して言います。暖かくなっているのが感じられます。
   「悪寒がなくなりました」と、患者さんも言います。
『じゃあ、川芎茶調散と真武湯で行くよ』
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして、今回は川芎茶調散を主で真武湯を従で処方しました。

井上先生のコメント
・川芎茶調散というと頭痛の薬なんですが、解表剤としてもつかえるのですか?と聞くと
『生薬構成からいって使えます。寝汗が出る人に麻黄剤は使えないし、香蘇散かそれより少しきついと川芎茶調散かね。最近、花粉症で香蘇散のきついタイプに川芎茶調散を使っています。』

・川芎茶調散は単なる頭痛の薬ではないのですね。頭痛専門医のサントの経験でも、川芎茶調散が頭痛に効いてくれたことはあまりないです。むしろ、悪寒がする時の解表剤としての使い道のほうがいいようです。花粉症に川芎茶調散というのも面白い。気の流れがわかる井上流漢方だからこそできることだと思いました。


スポンサーサイト

【2013/03/31 22:41】 | 症例
トラックバック(0) |
IMG_0161.jpg3月××日外来

小学校5年生の男児、母親と一緒に来院。
喘息は出ていないが、
アトピーがひどくなったと言われる。
1年前にもかかっていたがその時には苓桂朮甘湯を処方している。
今回は左の首の発疹がひどい。
痩せていて、顔の瞼のあたりが赤くなって、火照っている。
少しボーっとしている印象もある。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『どうされましたか?』
   「首の湿疹がひどくて」と、母親が答える。左の首の鎖骨の上のあたりが真っ赤になっていて痛々しい。寝ているときにそこを掻いてしまうようです。
『今どういう治療を受けているの?』
   「何も治療していないです。この1週間前から首のところがわるくて」
『目のところも赤いね、花粉症ある?』
   「はい、ちょっとあります」

『ちょっと休んでくれる。』と、腹診のために横になってもらう。『前は、苓桂朮甘湯を出していたんだよね。』
   「はい」
『口すごく乾く?』
   「うぅーん」と、男の子は首を横に振ります。
『あのね、胃は弱いね、水分をとりすぎると胃がチャバチャバいうことはない?』腹診をすると胃のところに水振音を感じます。
   「あります」と患者さんが言います。
さらに、へその横に動悸も感じます。手はアトピーのために乾燥していて。
手足は冷えてかつ火照りもある。

『前と同じ薬出すで。苓桂朮甘湯と甘麦大棗湯を出します。苓桂甘棗湯。水分はね、あまり取りすぎんようにしてくれる。牛乳はのまんほうがいいよね。温かいご飯に温かい味噌汁ね。それと早く寝てくれる。』
   「はい」
『今アレルギーのシーズンだから少し悪いと思うけど、前よりずっと大きくなってくれているし、これくらいならいいほうだと思うよ』
   「夜寝ているときにボリボリ掻いていて、赤くただれているんです」と母親が首のところの湿疹を指して言います。
『ああそうか、そしたら、抗生物質とステロイドの入った軟膏も少し出すよ』
   「ありがとうございます」
『ずいぶん大きくなられたので、治る力が出てきていると思うよ。生活しっかり頑張られると治ると思うよ』
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は苓姜朮甘湯と甘麦大棗湯を処方しました。

井上先生のコメント
・左の首は意味があるのですか?と聞くと
『左は気やね。気を動かすほうに持って行ったほうがいいと思うのよ。だから苓桂甘棗湯やね。』
前回は苓桂朮甘湯にしましたが、今回はこれに甘麦大棗湯を加えて、苓桂甘棗湯の方意で使いました。こうすると余計に気が動くようになるのだと思います。

・のぼせがあって、胃のところに水振音をふれて、臍のところに動悸もあるので苓桂朮甘湯がいいようです。さらに、アレルギーなどの過敏性もあって、ボーっとしているので、甘麦大棗湯の証もあります。これら2つの証の合わさった結果として、2つを合わせて苓桂甘棗湯として処方したのだと思います。


【2013/03/30 21:05】 | 症例
トラックバック(0) |
大建中湯100. 大建中湯

【生薬構成】
蜀椒2、乾姜5、人参3、膠飴20 (g)
*山椒(蜀椒)と乾姜が腸を温めます。山椒がガスを抜きます。人参と膠飴で脾を補います。
【原典】
《金匱要略》の『腹滿寒疝宿食病脉證治第十』
*有名な『…皮起。出見有頭足。上下痛…』の部分は、「腸の蠕動運動が激しくて、上下に行ったり来たりするのが、腹の皮の上から見える」という風に解釈されています。
【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》には『此方は小建中湯と方意大いに異なれども、膠飴一味あるを以つて建中の意明了なり。寒気の腹痛を治する此方に如くはなし。蓋し大腹痛にして胸にかかり嘔あるか腹中塊の如く凝結するが目的なり。故に諸積痛の甚しくして、下から上へむくむくと持ち上る如き者に用ひて妙効あり。解急蜀椒湯は此方の一等重き者なり。また小建中湯の症にして、一等衰弱腹裏拘急する者は、千金の大建中湯を宜しとす。』とあります。
*下から上へむくむくと持ち上る如き:これが上の金匱要略の有名な語句に対応しています。
【先人】
・虚状と寒状を帯び、腸の蠕動亢進が発作性にきたり、腹痛の激しいものに用いる。《矢数道明:漢方処方解説》
・腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの。《秋葉哲生:活用自在の処方解説》
・寒虚証/蠕動不穏、腹痛(Subileusの如き症状)《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流】
・胃腸を温め、動きを活発にする作用がある。麻痺性イレウスに用いる。救急で用いる場合は単独で用います。
・今日、一般的には大建中湯を単独で長期に用いる場合が殆どのようですが、大建中湯には心を保護する甘草が配されていないため、長期的には大建中湯は補中益気湯などの補気剤や小建中湯などの裏虚に対する方剤などと合方して用いる必要があると思います。
・大建中湯は山椒、生姜、人参、膠飴が配されており、腸管を温め蠕動運動を活発にする作用があるため、ガス満となっている老人や虚弱者に気楽に主薬方に大建中湯を良く合方して用います。《以上、消化器疾患の漢方治療》

・山椒で胃腸を強く温め、膠飴で胃腸の力をつけて腹が冷えてガス満して便秘する人に使用します。麻痺性イレウスに使用の場があります。《脾胃を整える「補気剤」の活用》

・青白い顔をして額に皺を寄せ、くどくどと繰り返し自律神経失調症状を訴える人で、腹が冷えて軟弱で便が出にくいのを目標に用いる。排便がスムーズになるとともに、食欲も出て、気分が晴れやかになり、元気になっていただけることがある。《自律神経失調症の漢方治療①》

・大建中湯で腰の大腸兪(腰椎4,5)のあたりが暖かくなるので腰痛、首こりにも効く。花粉症にも効くことがある。

・背中の膀胱系の流れがよくなるので、体のめぐりが良くなるので神経症、うつ病にも効くことがある。

・目標は「腹が冷えてガス満」

・甘草が入っていないので、たくさん薬を飲んでいるご老人にも使いやすい。

【Dr.サントのコメント】
・井上先生の教えに従って、下腹部の冷えとガス満を目標にして使っています。これでよく効いてくれます。

・サントの個人的意見ですが、《金匱要略》や《勿誤薬室方函口訣》にひきずられて、成書では”腸の蠕動亢進が必発”というように書いているものがあります。しかし、これはほとんど無視してもいいと思っています。入院患者さんは別として、クリニックの外来では”腸がうねうね動く”ような患者さんを診ることはほとんどありません。そんな症状があっても、外来で腹診をする数分間の間に起こることはめったにないでしょう。また、接触鍼をしたり腹を触っていると、大建中湯の証でなくても、腸がぐるぐる動いてきます。脈を診ただけでも気が流れると腸は動き出します。
それに、胃腸の悪い患者さんは、たいてい胃腸薬や便秘薬を飲んでいるので、こんな状況では腸がぐるぐる動くということはあまりないように思います。
だから、現代人の大建中湯の証としては、「冷えとガス満」が適当だと思っています。

・PTM(PhotoTouchMethod)では下腹が暖かくなるのがわかります。場合によっては、腰や大腿部まで暖かくなります。こなときはよく効きます。

【症例にリンク】
症例1. 2. 

【2013/03/28 23:05】 | 漢方解説
トラックバック(0) |
DSC05502.jpg3月××日外来

40代女性
生理不順とかでかかっている。
久しぶりに花粉症が出たと言ってこられる。
少し太り気味の方、
顔も少しむくみ気味
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『どうですか?最近どんな調子?』
   「花粉症は鼻の点鼻をやっています」
『休んでくれる、生理はどうなった?』
   「整理は40日ぐらいです。最近咳がよく出るんです。元気がある時が少ないです」
『舌出して』、見ると、舌が粘っています。
   「舌が腫れる時があるんです」
腹診をすると『皮膚ちょっとカサカサしとるしね。アトピーもあるんだね』
喉のところを触ると『ここはすこし熱持っとるけど、』、次に膻中のところを触ると『ここは冷えとるよね。』、心下の胃のところを触ると『胃がジャバジャバしているよね。』と、切診の所見をとっていきます。腹はやや膨満気味で結構食べてしまう人のようです。
『喉はイガイガする?』
   「なんだか、自分の本当の声でないような...」
   
ここで言霊診断を始めました。『当帰湯を飲んだと思ってくれる...厚朴の入った薬。当帰湯...スッとしたね。楽になってきたね。当帰湯、真武湯、当帰湯ぐらいかな。今から飲んでもらうでね』
当帰湯を1包その場で飲んでもらって、外で待ってもらいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10分後に入ってもらうと
『どうですか?』と、聞くと。
  「胸のあたりがすっとしたようです」と、患者さんが答えます。
『これ合っているよね。当帰湯と真武湯を出しておきますよ』
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は当帰湯と真武湯を処方しました。

井上先生のコメント
・麦門冬の咳ではないんですか?と聞くと
『喉の燥熱がそれほどなかった。厚朴の咳だよ』

・厚朴というと井上先生はいつも腹部の「ガス満」を目標に言います。
今回もあったのですか?と聞くと
『あった、あった。どっちかというと食べ過ぎてガス満がある人に使う。浮腫んでいたし厚朴の場がある。』
咳といえば麦門冬と思いがちですが、厚朴もあるんですね。
咳があるとき、麦門冬は”乾燥傾向”で、厚朴は”むくみ傾向”があります。


【2013/03/26 21:53】 | 症例
トラックバック(0) |
IMG_0171.jpg3月××日外来

中学生、女子、新患
肌荒れがあり、手足が冷えると言ってこられる。
母と一緒に来る
手が乾燥して、ひどくガサガサに荒れている。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『じゃあ、靴抜いて仰向けに寝てください』腹診のために横になってもらう。
  「はい」
おなかの肌もカサカサしているので『アトピーはあるんだよね』と聞くと
  「はい」と答えます。
『夜は何時に寝ていますか?』
  「11時ぐらいです」

『生理痛は有りますか?』
  「そんなにないです」と答えますが、「生理になる前に調子が悪くなります」と、代わりに母親が言います。
足は冷えていて、
腹診をすると下腹部にしっかりと瘀血を触ります。
口唇がカサカサして乾いているので『口がすごく渇くよね』と、聞くと
  「はい」と、答えます。

『どこか皮膚科に行っている?』
  「今は、いっていないです」
『下腹の滞りを取るには足が冷えるとあかんから、長ズボン履いて。そして、早く寝ることと、甘いもの止めようね。』
足は冷えているのに、スカートですこしさむそうです。
『生理を整えて口の渇きを取る薬がありますので、温経湯という、その薬でアトピーが落ち着いてくると思うので。今から飲んでもらいますよ。生活が大事なので生活のお話もしますよ』と、温経湯を1包飲んでもらいました。
そして、待ってもらっている間に、生活指導を受けてもらいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10分後に入ってもらう。
『どうですか、お腹が暖かくなったね』
   「はい」
顔つきもさっきよりすっきりしている。
『生活気を付けてくださいね、そしたらよくなるよ』
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は温経湯を処方しました。
   
井上先生のコメント
・中学生でも温経湯があうんですか?と聞くと
『みんな若年寄だもの。最近は、3歳の子供でも人参養栄湯をだすこともあるよ。今は、温経湯が普通の薬、生理痛でアトピーのある。』
温経湯というと、不妊症でもっと瘀血が強いイメージがあったのですが、中学生でも使うのです。時代が変わると、それにしたがって漢方も変わるのです。

・そういえば浅田宗伯も《勿誤薬室方函口訣》で『年五十云々に拘るべからず』と言っています。


【2013/03/25 17:49】 | 症例
トラックバック(0) |
IMG_0162.jpg3月××日外来

4歳の男児、新患
便秘がひどくてラキソベロンを使っているという
ひどい時には便秘で泣くこともある
お母さんに連れられて来院する。
活動的で元気そう。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『どうしていますか?』と、井上先生が聞きます。
   「整腸剤とラキソベロンをもらっています」と、お母さんが答えます。
『何かあるとすぐにお腹が痛くなることはない?緊張するときとか。』
   「そうでもなく、ほんとにウンチが出ないって感じです。」
   
『ねんねしてくれる』と、男の子に横になってもらう。
お腹を触ると、とてもくすぐったいので、ケラケラ笑いながら嫌がる。
『この子ね、くすぐったげるとよくなるよ。かわいい子だね』井上先生も楽しそうです。
『じゃあ、この薬飲もう。小建中湯という薬飲のもうね。飴が入っておいしい薬だよ。下剤じゃなくてお腹の働きをよくしてお通じを付ける薬で。』

『まず、お母さん舐めてみて』と母親に舐めてもらいます。そのほうが子供が安心するのです。
   「あっ、おいしい」と、母が言います。
『飴とニッキが入っています、ニッキ飴みたいな薬ね』
紙の上に小建中湯エキスを載せて、子供に舐めさせると。嫌がることなく舐めています。
『おいしいやろ?』
  「うん」と、子供がうなずきます。
『それじゃこのお薬出しておきますよ』
   「ありがとうございました」
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
今回は小建中湯を1日2回で処方しました。

井上先生のコメント
・子供での小建中湯の目標は?と、聞くと
『すぐにくすぐったがって、お腹がキューピーさんのようにポッコリでていて、食欲もあって、だけど、顔色が少し悪い感じ』
以前に、くすぐったがるのは、芍薬がいる証だと仰っていました。
サントの印象では、顔色が、なんだか眉間のところがすこし青いようなイメージがあります。

・大人は桂枝ののぼせがあるのですが子供にはないのですか?と聞くと
『あることもあるけど、あんまりない。それより、むちゃくちゃくすぐったがる。』
大人は、腹直筋の緊張と軽いのぼせと虚脈と手足の火照りが特徴的ですが、子供ではこれはハッキリしないことがあるようです。


【2013/03/24 18:16】 | 症例
トラックバック(0) |
IMG_0165.jpg3月××日外来

40代女性
冷えのぼせ、抜け毛、微熱、などで2月からかかっている。
抜け毛は3年前からあってどこに行っても治らないので困っている。
顔が少し赤くて、一見ボーっといている。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『いかがですか?』
   「尿の量は少し減ったような感じがします。後は、加味帰脾湯をやめてから頭痛もなくなったし。でも、ここがかゆくなって」と、脇腹のところを指します。
『休んでくれる』腹診のために休んでもらって腹を見ると、右の脇腹に結構広い範囲で発疹が出ている。アトピーもあるようだ。
『食べ物、気を付けている?甘いものとか』
   「気を付けています」
『この方は虚だと思ってやっていたんですが、、でも、肝に熱があるので竜胆瀉肝湯にしたんですが...』と、説明してくれる。

   「すごくかゆくなって、掻いてボロボロになっている、他のほうもかゆくなって」
『あなたって腸が弱いよね』腹を見ると、へそ下のあたりがボテッと盛り上がっている。
   「小さいころから、食べることは食べれるのですが、お腹が鳴りやすいので...」
『腸のほうを気をつけて竜胆瀉肝湯を飲まないと、竜胆瀉肝湯には胃の薬が入っていないから、あかんのだと思うよ。』
   「かゆみも一回はよくなったんですけど、またかゆいし」
『腸が弱いもんだから、腸を保護する薬の加味帰脾湯とかだしたんだけど、そしたらあなたがよくないと言ったので、そしたらもっときつい肝の熱をとる竜胆瀉肝湯にしたのよ。そしたら腸が弱いのが露呈した。だから、この竜胆瀉肝湯を飲むなら半分にするかしないとね。それか、竜胆瀉肝湯の虚が清心蓮子飲だから清心蓮子飲に行くかやね』と、井上先生が言います。

   「夜は手足が火照ってのぼせるし、こういう状態ですから、肝陽上亢だと思うんですが...」と、患者さんは中医学の用語をよく知っている。
『肝陽上亢なら竜胆瀉肝湯でいいわけよ。胃腸の保護する薬でやらないと仕方ないかね、清心蓮子飲とか。竜胆瀉肝湯でいくなら半量やね』
   「3年前に激辛の食事ばかりしていたのと、すごく怒っていたので、こうなりだしたので...」と、患者さんがぶつぶつ言います。

『じゃあ2つ言うでね教えてよ』と、ここで言霊診断を始めました。『竜胆瀉肝湯を半分ずつ飲んだと思ってくれる...これで行くか、清心蓮子飲を飲んだ...頭すっきりするのは竜胆瀉肝湯やね。量を半分にするわ。これで行きますよ』
   「そうですか」
『76番を半分にするよ、腸が動いていないのでね。』
   「髪が抜けるのが一番困るので、これは、あとどのくらいで治りますか?」
『治すのは自分だよ。それをお手伝いします。日常生活を見直さないと』
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は、竜胆瀉肝湯を半分にして処方しました。

井上先生のコメント

・竜胆瀉肝湯というと膀胱炎や帯下などの下焦のイメージなんですが、肝の熱なんですか?と、聞くと
『肝の熱だよ、きつい』

・抑肝散陳皮半夏よりきついのですか?と聞くと
『もっときつい。竜胆瀉肝湯が一番きつい怒りです。』

・右のわき腹の湿疹はなんですか?と聞くと
『あれは肝にそってでている、肝に熱があるんだよ。でも、胃腸が弱いので悪くなっている。髪の毛が抜けるのは肝の暴走なんだよね。』


【2013/03/23 21:22】 | 漢方解説
トラックバック(0) |
IMG_0159.jpg3月××日外来

40代女性
胃が弱いので六君子湯が出ている。
また、胃腸風邪で昨日から嘔吐と下痢があるという。
顔はほっぺたが少し赤いが、鼻はすこし白みがかっている。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
   「昨日から下痢と嘔吐があって、熱もある。37.4度だった。」と、患者さんが言います。
『お腹痛い?』と、井上先生が聞きます。
   「痛いというか、胃がすごくむかむかする」
『なんか変わったもの食べた?』
   「子供がノロウイルスにかかっていて、胃腸風邪になってうつったのかな。昨日はサンドイッチとコーヒーしか食べていない。」
『コーヒーはあかんよ、胃が弱いんだから。今のままなら、特別な治療法はないので、、舌出して』
舌は粘っていて熱を持っている感じがある。

『ちょっと休んでね』と腹診のために横になってもらう。
   「はい」
『春の風邪だから...』
   「もうひどいんですよ、下痢と嘔吐が、口は乾燥するのでお湯飲んでいました」
『飲めているので、点滴しないといけないレベルではないと思うよ』
   「ああ、そうですか」
『それじゃ漢方をもうちょっと考えてみるよね』

腹診をすると、腹は張っていて、胃と腹に熱がある。
ここで言霊診断を始めました。『それじゃ、五苓散をのんだ...これ胃が暖まってくるね。五苓散と人参湯を一緒に飲んだ...これより、五苓散だけやね。五苓散を一日3回飲んだ...それとも2回飲んだ...2回やね。それじゃ、3日間飲みました...5日間飲みました...やっぱり3日でいいね。』
   「3日飲んで、そのあとは以前にもらった六君子湯でいいんですか?」
『それでいいよ』
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして、今回は五苓散を3日分処方しました。

井上先生のコメント
五苓散の証はどんなんですかと?と、聞くと
・『胃腸風邪で下痢と嘔吐があって、口がねばって、胃と腹全体にねつがある。桂枝があるのですこしのぼせがある。』と、答えてくれました。

・六君子湯、半夏瀉心湯と五苓散の違いはと、聞くと
『五苓散は腹全体の熱があるけど、六君子湯は心下のところの胃の熱がある、半夏瀉心湯は黄連なので胸に熱がある。六君子湯と半夏瀉心湯は腹の下のほうは冷えている』なるほど、熱の位置を上から順でいうと、半夏瀉心湯、六君子湯、五苓散となるのですね。

・サントの経験ですが、頭痛では五苓散とよく言われますが、あまりスカッと効くことはありません。それより、苓桂朮甘湯、呉茱萸湯、桂枝加人参湯などが多いです。井上先生も頭痛には五苓散をあまり処方していません。


【2013/03/21 20:18】 | 症例
トラックバック(0) |
IMG_0155.jpg3月××日外来

20代女性
不妊症とか花粉症でかかっている
前回は苓桂朮甘湯と甘麦大棗湯がでている
小柄な女性、話し方は歯切れがよくて元気そう。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『どんな感じ?』
   「くしゃみが出ていないです」
『あっ、そう』
   「この前の月曜日に黄砂がひどかった時には、粘膜がひりひりしたんですけど、くしゃみは出ずに行けています」
『それ、すごいね』
   「ポケットティッシュ一回も使わずです」
『これって、苓桂朮甘湯に甘麦大棗湯を足して、真武湯を1日2回飲んでもらっています』と、説明してくれる。『真武湯はね、ここ、鼻白いもんね。そして顔ほてっているもんね。だから苓桂朮甘湯が合うたちで、そして甘麦大棗湯を合わせたほうが粘膜の過敏性にいい。』と、詳しく説明してくれる。

『この薬合っているよね』
   「なんだか、快挙ですよ」いままで効く薬がなかったので、患者さんも驚いてかつ喜んでいます。
   
『ちょっとお腹見せてくれる』と腹診のために横になってもらう。
手はすこし火照っていて、足は少し冷えている。
さらに、へその周りがボッテと盛り上がっているので『おへそを見ると、胃腸が弱いということがわかりますよ』と、井上先生が仰る。
心窩部を触ると、胃のところの流れがわるい。 乗り物酔いもよくすると、カルテには書いてある。
『これ合っていると思うよ、飲み過ぎ食べ過ぎに注意してね』
   「ありがとうございます」
   
   「それと、排卵の注射をやっていたのですが、足が冷えたり身体がよくないので行っていないですと、」患者さんは、不妊症の治療につても相談されます。
『それでいいんじゃない、自力でやったら』
   「このまま体外受精とか、いろいろやっても、やったけどで、終わりそうな気がする。だからもっと元気になったらやろうって話し合っています」
『それが賢いと思うよ』
   「今、ずっと低温期なんですが」
『そのうち変わるでね、待っときね』
   「はい」
『あなた、ぶれていなくて、たくましい生命力をもっているので、そしたら自然にできるよ』
  「はいありがとうございます」
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回も前回と同様に、苓桂朮甘湯と甘麦大棗湯、それに加えて真武湯を処方しました。

井上先生のコメント
・上の患者さんとの話に出た井上先生のコメントを解説すると;患者さんの鼻が白かったのは「裏寒」を意味します、だから「真武湯」を処方しています。また、ほっぺたが桜色で、のぼせがあり、乗り物酔いもあるので「「苓桂朮甘湯」を処方しています。さらに、花粉症などの粘膜の過敏性に対しては「甘麦大棗湯」を処方しています。

・井上先生は別のところで『苓桂朮甘湯は、胃の中に水が溜まり、気がのぼって、めまいがある人につかう。乗り物酔いを目標として用いる。桂枝が入っているのでほっぺたが桜色にのぼせている。』と、述べています。
また『臨床では、裏寒がある場合には、苓桂朮甘湯に真武湯を併用したほうがよいことが多い』とも述べています。
サントのころでは頭痛やめまいの患者さんが多いので苓桂朮甘湯はとてもよく使う処方です。

・井上先生は花粉症に甘麦大棗湯をよく使われます。
「甘麦大棗湯」は心の過敏性につかう方剤ですが、粘膜の過敏性にも効くと言っています。じっさいに、黄砂の影響などには「甘麦大棗湯」はとても有効です。
この患者さんでは「苓桂朮甘湯+甘麦大棗湯」を使っていたので、気の上衝が強い場合に使う「苓桂甘棗湯」の方意もありました。



【2013/03/19 22:27】 | 症例
トラックバック(0) |
IMG_0152.jpg3月××日外来

80代女性
ずっと前からかかっている方
脊柱管狭窄症による歩行困難があったが
徐々に改善してきている。
お年寄りによくあるように、いろいろな症状を、
とめどもなく、ゆっくりと話される。
すこし腰が曲がっておられる。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『どうですか?』と、井上先生が尋ねる。
  「2月から狭心症みたいにドキドキして苦しくなって、もらっていたワソランを飲んで、麻子仁丸をへらしたんです、そして防已黄耆湯にしたら、そしたらすっきりしてきて...」と、患者さん。
『そうかもしれんね。麻子仁丸は下半身の弱りを取る薬で、春になってきたので、防已黄耆湯が胸に作用するのでいるのかもしれんね』
『お通じはどうなった』
   「麻子仁丸を1回だけでいいみたいです」
『他はどうだった?』
  「そのあとには胃がどーんと重くなって、桂枝加朮附湯をやめてみました」
『風邪ひいていなかった?』
  「そうかもしれません」
『花粉症みたいな症状は?』
  「花粉症あります」

『休んでくださいね。』
  「勝手に変えていけなかったかしら?」と、心配される。
『そんなことないですよ、防已黄耆湯がすごく合う方なので』と、説明してくれる『この方はずっと見させていただいている方で、肺気虚があって、脊柱管狭窄症があったんですけど、防已黄耆湯と桂枝加朮附湯や真武湯をお出ししていて脊柱管狭窄症はよくなっている。それに便秘を言われるので、麻子仁丸と防已黄耆湯でやったり、いろいろしている方ですね。』と、説明してくれる。

腹診をすると『ちょっと冷えとるのかな』と、腹が少し冷えている。
立っているときはわからなかったが、横になると足にむくみがある。
『ちょっと口、乾かれるのね?』
  「乾くというより、鼻から続いている喉のところがいがらっぽい感じがします」
『防已黄耆湯に何を足すかなんですが、ちょっと冷えとるのかな』
胸を触ると『ここがすこし冷たいね』と、膻中のひえを感じます。

『ちょっと体にききますよ』と、ここで言霊診断を始めました。『防已黄耆湯はすごく合っている方なので、防已黄耆湯と真武湯を一緒に飲んだと思って...それとも、防已黄耆湯と桂枝加朮附湯を一緒に飲んだ...やっぱり、こっちの方がいいような感じやね。防已黄耆湯と桂枝加朮附湯の半分を一緒にのんだ...半分の方がいいみたいね。鼻が通るよね。』やっぱり、前のように桂枝加朮附湯を一緒に飲んだ方がいいようです。ただし、量は半分で。
『こっちの方がいいやろ、ここあったかくなるね』と、腹を指して言われます。
  「ああ、そうですね」
『それじゃ、桂枝加朮附湯の量を減らして飲んでみようね』
  「はい、わかりました」
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は防已黄耆湯に桂枝加朮附湯を半分足して処方しました。

井上先生のコメント

・防已黄耆湯は心臓にきくのですか、心不全とかにもいいのですか?と、聞くと
『はい、いいですよ、ただ発汗過多でという状況があってですけど。』 と答えてくれました。防已黄耆湯は肺の気を補い、利水作用があるので心不全に有効なのでしょう。

・別のところでは
『老人で水太り気味で体を動かさない人で、息切れなど肺気虚の症状ある方には、防己黄耆湯がよい。』と述べられています。
また、『尿の勢いがない』ことが目標として有用だと言われれています。確かに、患者さんに聞くと、この漢方を飲むと尿の勢いが出てくるといわれます。


【2013/03/18 21:12】 | 症例
トラックバック(0) |
99.jpg
99. 小建中湯

【生薬構成】
芍薬6、桂皮4、大棗4、甘草2、生姜1、膠飴20 (g)
*桂枝加芍薬湯の芍薬を増やして膠飴を大量に加えたもの。膠飴は中を補い急痛を緩和する。
【原典】
《傷寒論》と《金匱要略》
*《金匱要略》の血痺虚労病篇の『虚労、裏急、悸、腹中痛、手足煩熱、』などが、キーワードになります。
【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》には『此方は中気虚して、腹中の引張痛を治す。すべて古方書に中と云ふは、脾胃のことにて、建中は脾胃を建立するの義なり。此方は、柴胡鼈甲(湯)、延年半夏(湯)、解労散などの如く、腹中に痃癖ありて引張痛と異にして、ただ血の乾き、俄に腹皮の拘急するものにて、強く按ぜば、底に力なく、譬へば琴の糸を上より按ずるが如きなり。積聚腹痛などの症にても、すべて建中(湯)は血を潤し、急迫の気を緩むるの意を以つて考へ用ふべし。全体腹くさくさとして力なく、その内にここかしこに凝ある者は此の湯にて効あり。即ち後世の大補湯、人参養栄湯の祖にして、虚を補ひ血を調ふの妙を寓す。症に臨んで汎く運用すべし。』とあります。
*中気:胃腸の機能、 痃癖(げんぺき):疼痛を伴う塊のこと、 積聚(しゃくじゅ):腹部の塊、 急迫:急に痛んだり痙攀すること、
【先人】
・虚証の体質で、いわゆる太陰病に属し、脾胃の虚弱なものに多く、痛みや急迫症状を伴うものである。小児に用いることが多い。虚弱児の体質改善薬として重要なもので、主として夜尿症、云々《矢数道明:漢方処方解説》
・体質虚弱で疲労しやすく、血色がすぐれず、腹痛、動悸、手足の火照り、冷え、頻尿および多尿などのいずれかを伴う次の諸症状:小児虚弱体質、疲労倦怠、神経質、慢性胃炎、小児夜尿症、夜泣き。《秋葉哲生:活用自在の処方解説》
・腹部軟弱/腹皮拘急/小児では胃腸型の虚弱児 《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流】
・建中湯類には膠飴が配され、脾胃を補う効果が高いために、脾胃剤とも言えます。別の言い方をすると消化器の立て直し、中焦の機能の立て直しを目的とした処方です。建中湯類の代表は小建中湯です。身体の弱りの著しい時は基本薬の小建中湯を先ず、投与します。

・使用目標 :一種の強壮剤で、身体が虚弱な人や平素は丈夫でもひどく疲労しているときに使用します。一般的には子供の体質改善薬とのイメージが強いのですか、老若男女を問わず広い世代の緒疾患に使用の機会が極めて多い処方です。
興奮しやすく疲れやすい、疲労倦怠、手足煩熱、咽乾、口燥、腹痛、動悸、胸の重苦しさ、鼻出血、便秘、腹直筋の緊張、こむらがえり、一般には下痢なし、食欲不振なし。

・臨床応用 :虚弱児の体質改善「夜泣き、夜尿、ヘルニア、臍仙痛、アトピー性皮膚炎、喘息など」疲労時の風邪、慢性疲労、夏ばて、湿疹、蕁麻疹、自律神経失調症、過敏性大腸炎、腹痛、便秘、腰痛、肝炎、脂肪肝など

・他の薬方との鑑別:人参湯や四君子湯との鑑別点は、腹直筋の緊張が認められない、下痢傾向が多く、少食であることなどがあげられます。

・使用量について:老人などで腹直筋の緊張が分からず、虚労の程度が著しく、軟便や下利気味となっているときは投与量を常用量の半分から三分の一程度にしたほうが良いことが多い
《以上、脾胃を整える「建中湯類」の活用》

・裏虚に対する体質改善薬として小児の諸疾患に広く使用。コロコロ便で便秘・臍仙痛・疲れやすい・身体をだるがる・手足のほてり・水分をやたらに欲しがる・興奮しやすい・寝付かれない・喘息・アトピー・夜尿
《小児科領域の漢方治療》

・小建中湯など建中湯類は子供の薬とのイメージが強いのですが、老人にも使用の機会が多い薬です。興奮しやすく疲れやすい、手掌発汗、手足のほてり、こむらがえり、腹直筋の緊張など裏虚「肝虚」に起因する症状を目標に諸疾患に用います。《老人の漢方治療②》

・いわゆる虚労を治す処方。太りすぎの生活習慣病に悩む人には一見、適応が無いように思われるが、よく診ると神経疲労のために虚労に陥っている人が現実には多い。我が医院では小建中湯など建中湯類を生活習慣病に頻繁に用い、喜んで頂いている。《生活習慣病の漢方治療》

・裏虚に対する方剤は補血剤、補陰剤ほど重くないため殊に小建中湯などは単独で使用しやすいが、気虚を伴っている時は小建中湯に人参湯や四君子湯、大建中湯を合方して用いると良い。
《補血剤、補陰剤について》

・井上先生は、真武湯、甘麦大棗湯、大建中湯などを一緒に出すことがあります。

・過敏性腸症候群では桂枝加芍薬湯より小建中湯を使うことが多いとも言っておられます。

【Dr.サントのコメント】
・井上流漢方で頻用する処方の一つです。現代人がいかに裏虚になっているかを表しているようです。サントも外来で頻用しています。とくに、ビジネスマンで疲れている方に多く使います。ご本人は裏虚と思っていませんが、よく見ると、手足がほてり、手足が汗ばみ、脈に動悸を感じ、腹直筋が緊張して、軟便気味という所見があります。だいたい、そのような体質を大人になるまで持ち越しているイメージです。

・井上先生は脈を診て「虚脈」だと建中湯だとすぐにわかるようです。井上先生の言う「虚脈」がどんなものか言葉で説明しにくいのですが、弦脈ぽく指に触れるのですが、力なく、かつ動悸のようなものを感じる脈、とサントは理解しています。

・成書では小建中湯より虚のときに黄耆建中湯を使うとありますが。井上先生の外来をみていると、建中湯類のなかで小建中湯がもっとも虚証に適応があるように思います。サントの経験でも小建中湯が最も虚証の方に適しています。時々、黄耆建中湯と迷う時がありますが、言霊診断やPTM(PhotoTouchMethod)で鑑別ができます。

・時どき、補中益気湯と鑑別に迷う時があります。「手足のほてり」が鑑別に使えると井上先生は言っていました。PTMができれば鑑別は簡単です。

・サントの症例ですが、70代の男性で、他院からパキシルを処方されていた方がいます。物事を悪いほうにばっかり考えて、マイナスの考えにとらわれて、鬱々として寝れないと言われていました。外見は頑丈そうで、糖尿病の薬も飲んでいて、舌の所見からも八味丸証だとおもいました。しかし、このとき始めたばかりのPTMをすると、以外にも小建中湯で気の流れがよかったのです。そこで、思い切って小建中湯を処方すると、次の診察時には気分がとても落ち着いたと言われました。おまけに、血圧も180から120に下がったので降圧薬も内科でへらしてもらうことができました。小建中湯が老人の鬱病にきくのかとびっくりした症例です。そのころは、サントの腕は今より未熟で、裏虚があるのに見逃していたのかもしれません。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3.


【2013/03/17 19:36】 | 漢方解説
トラックバック(0) |
IMG_0151.jpg3月××日外来

40代女性。
1年以上前から手足の湿疹、皮膚潰瘍でかかっている
皮膚科でなおらなくて井上内科に受診して
1年近くになる。
十全大補湯をしばらく前から処方している。
ようやく、よくなってきているので嬉しそうだ。
やせ気味の女性。皮膚はややくすんでいて潤いが少なそうだ。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆

『十全大補湯でよかったかね?お顔色は落ち着いとるわね』 
   「だいぶよくなって...」
『これが一番オールラウンドな薬なのでね。夜は寝れている?』
   「うん」
『湿疹はだいぶ落ち着いてきた?』
   「あともう少しで皮ができてきている」
『十全大補湯は治らん怪我とか、皮膚の湿疹とか、最後の詰めはこれがいいね。他の薬だしたとしても、これでずーっと行ってしまう。子供もこれで行くことがある』と、サントに説明してくれる。

   横になってもらって、両足のすねの部分のガーゼを外すと、5X15cnmぐらいの皮膚の剥離部分が見える。以前はグチュグチュしていたのだが、最近では乾燥してきている。この1年、荊芥連翹湯とか種々の漢方で対応してきたが、この2か月前からは十全大補湯を処方している。ようやく、上皮が張ってきたので患者さんは満足しているようだ。
   「皮ができてきている。右のほうがもう少し」
『こういうのが十全大補湯が一番いいのね。気血両補するより仕方ない。荊芥連翹湯とか短期間のんだけど、結局、温補するより仕方ないのね。ながく最後はこれで行くっていうか、そんな使い方』と、説明してくれる。

   「境目がかゆくてしかたない」と、患者さん。
『紫雲膏も出しておくでね、少し塗ってくださいね』と、井上先生。
   「はい、わかりました」
『もうちょっとで、とてもいいね』
   「はい、もうちょっとのところです。」
   
『ここのところは一番治りにくいのね。』足のすねのところを指しながら言います『若い人でも治りにくい人がいっぱいいる。結局、ここ治すのは、大体の人は十全大補湯だよ。』
   「手のほうはかなり治ってきた、カサカサになってきた」と、患者さんが言います。手にも同様の皮膚病変があったのですが、ほとんどわかりません。
『よかったね、頑張りましょう。治らんかった状況を治す力が十全大補湯にはあるので、これでいいよ』
   「全体的に、調子がいいです」
『それでは、これを出しておきますよ』
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回も、十全大補湯を処方しました。

井上先生のコメント
・川芎があってもずっと使っていいのですか?と聞くと
『人参養栄湯みたいな人はいかんけど、そうでない人はずっとこれでいっていいよ。かるい柴胡剤的な効果があるし、かるい駆瘀血剤的な効果があるし、すごく使いやすい。逃げ場としていいくすり。いろんな薬は癖があるけど、この薬は癖がない。』

・すねのところの皮膚疾患は治りにくいと言われましたが、そうですか?と聞くと
『ここは治りにくい、最後は1~2年飲ませることがある。それで治る。若い人でも、10年ぐらいかかることもある。色々薬つけても、結局無理なのね、やっぱり肉芽を作らないといけなので、これには漢方がいい。』

・『皮膚病だと黄連解毒湯とか消風散とか言うけど、十全大補湯のような無難な薬をもっと使ったらいいよ』と、教えてくれました。


【2013/03/16 22:24】 | 症例
トラックバック(0) |
IMG_0150.jpg3月××日外来

40代女性
以前からずっとかかっておられる方
今回は、久しぶりに花粉症がひどくなったと言ってこられる。
顔がややむくんでいる。少し水太り気味に見える。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『どうですか?』
   「花粉症がひどくて。」
『これ水毒やね。』顔がむくんでいるので、水毒があるのがすぐにわかる。
『それと、ほっぺたに比べてね、鼻が白くて、見ると冷えとるということもわかるよ』
井上先生によると鼻が白いとことは裏寒を意味します。

『お休みになってください』と、腹診のために横になってもらう。
足を触ると、やはりむくみがある。腹を触ると、胃の支えもある。
胸を触ると僅かに熱がある『ここんとこ、少し熱があるね。でも、全体としては冷えていてね、水毒やね。胃も支えていてね。』
   「はい、そうです」
『どっちかというと、顔青いので、苓桂朮甘湯は合わないよね。苓姜朮甘湯とか苓甘姜味辛夏仁湯になるよね。』と、サントに説明してくれる。

『それじゃ、教えてくださいね』と、慣れている方なので、前置きなしで言霊診断を始めました。『苓姜朮甘湯をのんだ...それとも、苓甘姜味辛夏仁湯を飲んだ...』
   「後のほうですね」と、患者さんがすぐに答える。「後のほうが背中のながれがいいです」、この患者さんは、気功を長年やっていて気の流れがすごくわかる人のようです。
『ありがとう、教えてくれて』と、井上先生も笑いながら言います。
『半分でもいいかもしれないね。苓甘姜味辛夏仁湯を半袋ずつ1日2回飲んだ...これでいいよね。首から背中楽になってくるよね。それと真武湯を1日1回飲んだらいいね。』
   「わかりました」
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は、苓甘姜味辛夏仁湯と真武湯を処方しました。

井上先生のコメント
・『水毒があって、むくんでいても、苓桂朮甘湯はのぼせていて顔がすこし赤い、この方は白かった。だから、桂枝の入らない薬になる。苓姜朮甘湯とか苓甘姜味辛夏仁湯とかになる。』

・冷えがあるので真武湯証でもないのですか?と聞くと
『真武湯っぽいけど、胸に少し熱がある。胸と心下に支えがある。』
・木防已湯でもないのですね?と聞くと
『それは、心臓が弱くて、口が渇くし、動悸がして、などの症状がある』
『この方の場合は、調子が悪いときは真武湯だけにして、時には苓姜朮甘湯がいい場合もあった。だけど、今は、花粉症の時は苓甘姜味辛夏仁湯があっていたね、小青竜湯の裏処方だよ。前は、腰が痛いと仰ると苓姜朮甘湯にしていた。』
苓甘姜味辛夏仁湯のポイントは、水毒と胸の少しの熱と心下の支えのようです。

・水毒の処方では、真武湯、苓桂朮甘湯、苓姜朮甘湯、苓甘姜味辛夏仁湯の鑑別が大事になるようです。

・最近のサントの症例ですが、ずっと息切れ、動悸があって、鬱っぽくて、心気症的な方がいます。この方には、補中益気湯にしたり、黄耆建中湯をだしたり、炙甘草湯を出したりしていたのですが、最近、花粉症が出てきたといったので、PTMで苓甘姜味辛夏仁湯を選んで処方したら、いままでずっとあった息切れがスパッと消えた方がいます。疲れていて、息切れ、動悸では炙甘草湯が多いのですが、苓甘姜味辛夏仁湯を見逃していた感じがしています。




【2013/03/14 21:27】 | 症例
トラックバック(0) |
IMG_0158.jpg3月××日外来

20代男性
めまい、頭痛などでかかっている方。
だるくて会社を時どき休むという
前回は人参養栄湯が出ている
顔がすこし茶色っぽくて顔色が悪い。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『どうでしたか?』と、井上先生が聞く。
   「2月は自宅療養して休んでいました。」と、患者さん。声が小さくて力がない。
『横になってくださる。何がきついのかな?』
   「今それほどでないんですけど、1月は朝、動けないぐらいにだるくて、めまいやら体のだるさがすごくあって...」
『舌出してくださる』舌は、少し粘っている。
『今、お家にいるので体調は悪くないんだね』
   「はい」
『仕事合ってないように思う?』
   「うーん、それほどでもないです」
『他に、自分にあっている仕事があるように思う?』
   「よくわかんないです」
『そういう風なレベルではないわけね、でも体のだるさとかはあるんだね』
   「午前中はどうしようもなくだるくて、午後ぐらいになるとようやくましになります」
腹診をすると『胃が動いてないよね。夜は夕飯は何時にたべてみえるの?』
   「夕飯は大体7時ぐらいですね」
『今、人参養栄湯を出したんですけどね...』と、サントに説明してくれる。

ここで言霊診断を始めました。『じゃですよ、人参養栄湯、今飲んでいる薬を飲みました...じゃあよ、半夏白朮天麻湯を飲んだ...口のネバネバはとれるけどね。頭はスッとしないかね?』
   「なんか、もやっとする」
『じゃあよ、温胆湯を飲みました...温胆湯、、こっちのほうが楽やね。加味温胆湯を飲みました...竹茹温胆湯をのみました...温胆湯を飲みました...こっちやね。これにしないと仕方ないね。温胆湯というキモをあっためる薬を出す。キモが座るとシャッキとするのよ。』
   「わかりました」
『いっぺん、試してみてね。様子教えて。』
  「ありがとうございました」
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
今回は温胆湯を処方しました。

井上先生のコメント
・足を触ると胆経に力がなかったので、温胆湯は「胆」を「温める」ので胆経に力を与えるんですか?と聞くと
『そうです、そうです』と答えてくれました。
半夏白朮天麻湯は胆経の緊張があり、反対です。
すると、胆経に関しては、温胆湯は補で半夏白朮天麻湯は瀉になるという訳です。面白い。

・『温胆湯は優柔不断。心療内科にかかっている患者さんで、温胆湯が効く人が多いはずだよ』とも、教えてくれました。



【2013/03/12 22:07】 | 症例
トラックバック(0) |
IMG_0156.jpg3月××日外来

40代女性、新患
貧血が強いといって来られる
息子さんが井上先生にかかって学校に行けるようになったので
今回は自分が受診を希望される。
やせ気味の方。
顔は少しやつれているが、すごい貧血というほど白くはない。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『どのくらいの貧血だった?』と、井上先生。
   「ヘモグロビンが8.7です」と、患者さん。声は少し小さい。
『それは、ドキドキすることとかある?』
   「自覚はあまりないのですが、」
『検査すすめられなかった?』
   「大腸はしたんですが、異常なかったです」
『下り物とか、生理とかそういうのは?』
   「すこし長引いて、少しずつ、出たりする...」
『婦人科とか行っていないの?』
   「4,5年前に行ったんですが...」
『今行ったほうがいいよ。それだけの貧血は、何かあってのものだから。それと鉄剤飲めれる?お腹の調子は?』
   「あまり、ちょっとよくないので」
   
『そうやろうね。それじゃ休んでくれる、靴脱いで。診察しますよ』と、腹診のために横になってもらう。
腹部は痩せていて虚していて力がない。また下腹部に瘀血を少し触れる。
『生理痛はきつい?』
   「量は少し多い気がする」
『下痢になる?』
   「下痢にはならないです」
『舌出して』と、舌診をすると、ややボテッとしている。
脈も弱い感じがする。

『じゃあ、体疲れるよね。ちょっと身体にきいてみるでね、教えてくれる』と、言霊診断を始めました。『人参養栄湯を飲みました...四君子湯を飲みました...やっぱりこちらから行かないと仕方ないね。あのね、気力体力をアップするようにお薬出すので、もうちょっと落ち着いてから鉄剤を飲もうよね』
『それとまず婦人科に行ってくれる』
そこで四君子湯を1包のんでもらいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10分後にもう一回診察室に入ってもらうと
『どうだった?』
   「さっきから、お腹があったかくなったような気がします」
『体力が落ちているので意識して消化のいいもの食べて、早く寝て、それで近いうちに婦人科に行ってくださいね』
  「はい」
『息子さんもよくなった来たし、楽しいことを考えて一杯やってくださいね』
  「はい」
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は四君子湯を処方しました。

井上先生のコメント
・『鉄剤を飲んでも現実は吸収できん。四君子湯で胃腸が落ち着いてからなら出せる。婦人科で原因を見つけることが大事』

・貧血といえば十全大補湯が浮かぶのですが、井上先生は次のように書いています、『体力低下の著しい時や気力低下の著しい時は十全大補湯が合わないことが多く、四君子湯をひとまず使用し、脾胃を養って自然治癒力を高めるというように、いわば土台を固めてから十全大補湯を使用されることをお勧めします。』《現代における漢方治療のABC》
この患者さんの場合も、息子さんが学校に行けないことで心労があり、不正出血もあり、気虚の程度が著しかったものと思われます。だから、四君子湯からスタートしたのでしょう。

・同様に、四君子湯について『補気効果が一番高く、病後回復などに第一選択として用います。現在、一般にはあまり使用されないようですが、補気剤の中で一番重要な薬です。』とも、書かれています。


【2013/03/11 23:11】 | 症例
トラックバック(0) |
136.jpg136. 清暑益気湯

【生薬構成】
人参3.5、白朮(蒼朮)3.5、麦門冬3.5、当帰3、黄耆3、陳皮3、五味子1、黄柏1、甘草1 (g)
【原典】
明の時代の長三錫による《医学六要》。
*四君子湯去茯苓+生脈散が入る。補気して津液を補い、黄柏で虚熱を清する。
全体として補中益気湯の変方となっています。
*上のように9味からなりますが、金の李東垣の《内外傷弁》には15味の「清暑益気湯」が出ています。「内外傷弁-清暑益気湯」から6味を省いて簡素化したものといえます。その適応・効果はほぼ同じですが、下の浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》にあるように「医学六要-清暑益気湯」は薬味が少ないだけ、シャープに効きます。エキス剤は「医学六要-清暑益気湯」の構成なので、以下、断らない限り「清暑益気湯」と言えば「医学六要-清暑益気湯」を指します。

【古典】
・浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》には『内外傷弁-清暑益気湯』について、
『長夏湿熱大いに勝んに、人これに感じ、四肢困倦、身熱心煩、小便少なく、大便溏、或は渇し或は渇せず、飲食を思わず、自汗するを治す。此方は注夏病の主剤なり。虚弱の人、夏になれば羸痩(るいそう)して倦怠し、或は泄利、或は乏喘し、四肢煩熱する者を治す。此方、東垣の創意にて多味に過ぎたり。即効を取るには近製の方を用ゆべし。老人などの持薬には此方を宜しとす。餘は近製方の條下に具す。』とあります。
*注夏病:夏バテ、 近製の方:医学六要の清暑益気湯のこと、
・同様に『医学六要-清暑益気湯』について、
『近製の主治は《内外傷弁》の方と同じ。此方は注夏病を主とす。《医学入門》に、春末夏初に遇ふ毎に、頭疼脚軟、食少く体熱す、注夏病と名づく、これを治す方は、補中益気湯去升柴加黃柏芍薬五味子麦門冬、即ち此方一類の薬なり。また張三錫《
新定方》には麦門、五味なく、升麻姜棗あり。いずれもその宜しきに従って選用すべし。また《弁惑論》の升陽順気湯云ふ、飲食節せず、労役に傷られ、腹脇満悶、短気、春に遇へば則ち口淡にして味なく、夏に遇へば熱すと雖も、なほ悪寒あり、飢するに則ち常に飽くが如く、冷物を食するを喜ばず云々と、これまた注夏病の主方なり。然れども注夏病は大抵此方を服せしめ、《萬葉集》によつて鰻鱺を餌食とし、閨房を遠のくれば、秋冬に至つて復するものなり。《金匱》云ふ、春夏劇しく、秋冬いゆと。またこの病を謂ふに似たり。』とあります。
*近製:医学六要の清暑益気湯のこと、 萬葉集の鰻鱺:大伴家持の歌にあります、 
【先人】
・暑気あたり、厚さによる食欲不振、下痢、全身倦怠、夏やせ。《秋葉哲生:活用自在の処方解説》
・夏バテによる食事不振/口渇・多汗・尿量減少・全身倦怠/心煩 《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流】
・補中益気湯の変方であり夏バテの専用処方とされる。人参・白朮・甘草・陳皮・当帰・五味子・麦門冬・黄耆・黄柏(陽明の熱を瀉す生薬)が配されている足三里の圧痛、両臍傍の天枢辺りの圧痛などを目標に用いる。《夏バテの一般的漢方治療》

・清暑益気湯も補中益気湯も共に夏ばてに用いられる。両者とも脾胃剤であるが、清暑益気湯証の方が口渇、手のほてり、胸が熱<胸苦しい、尿の色が濃いなど、身熱心煩症状が著しい。《滋陰剤の臨床応用》

・麦門冬湯と同じように麦門冬が配された補気剤。当帰・黄耆が加わり、補気・補血しながら黄柏で五臓にこもった熱をとる働きがある処方構成となっている。身体がだるく、手がほてり、尿の色が濃い人の夏やせ、夏バテに止まらず、気管支炎、慢性肝炎、糖尿病など広く諸疾患に用いる。《老人の漢方治療①》

・広い意味での温病処方で、現代において適合する人が多い。夏バテに限らず、四季を問わず、糖尿病など生活習慣病にも使用の機会がある。脾胃虚弱、身熱、心煩、自汗、四肢困倦を目標に用いる。
《現代のいわゆる生活習慣病に対する漢方治療<前編>》

・今年(平成25年)の2月ごろから特に多く処方しています。

【Dr.サントのコメント】
・井上先生の仰るように、最近多く処方しています。喉の渇く人が多いので麦門冬の入った処方をPTM(PhotoTouchMethod)で選んでいくと清暑益気湯に適合する人が多く出てきています。
井上流漢では半夏白朮天麻湯とともに今の旬(H25.3月頃)の漢方となっています。

・サントの症例ですが、中学生の男の子で眠くて仕方ないといってこられました。学校から帰ると怠くてすぐ寝るし、また起きて22時ごろから7時ごろまで寝るというのです。立ちくらみ、乗り物酔いもあるので小児科で苓桂朮甘湯が処方されていましたがよくなりませんでした。当院では、喉の渇きがあり、ノボセがあり、胃腸が弱くて過敏性もあるので、清暑益気湯と甘麦大棗湯を処方しました。それで眠気は改善しました。次に、胸脇苦満が出てきたので補中益気湯に変方して現在みているところです。

【症例にリンク】
症例1. 2. 


【2013/03/10 18:45】 | 漢方解説
トラックバック(0) |
IMG_0119.jpg3月××日外来

50代女性
眠れないことと膝痛で前回からかかっている。
前回は九味檳榔湯がでている。
大柄なやや太り気味の方
顔は、きめが粗くてゴワゴワした感じのむくみがある。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『どうでしたか?』
   「少し下痢気味になりました」
『そう、休んでくれますか?』
『膝が痛くて眠れんと仰るので九味檳榔湯にしてみたんですが』と、サントに説明してくれる。
『あなたって、食べ過ぎるほうだよね』
   「はい、」
『食べ過ぎると下痢するよ。よかったこと何もない?』
   「膝がすこしいいです」

腹診をすると、『ああ、ここにガスが溜まっているんだね』と、へその右下あたりにガスをふれる。胃のあたりを触ると『冷えちゃているよ、冷えがあります』
『舌出して』、見ると、舌には瘀斑があるので『瘀血があるよね』と、言います。
『だからね、真武湯と九味檳榔湯を半分ずつぐらいにしてみるかね。どう見てもこれはむくみやでね。顔が特にね』

そこで言霊診断を始めました。『九味檳榔湯を飲みました...半分ずつ2回でのみました...そうすると背中があったかくなるよね。九味檳榔湯と真武湯を半分ずつ飲みました...すると、目がすっきりするよね。』
   「今、花粉症があって、目がショボショボするんです」
『じゃあよ、半夏白朮天麻湯を飲んだ...このほうがいいか、それとも九味檳榔湯と真武湯を半分ずつ飲んだ...やっぱりこっちのほうやね。』
   「はい」
『真武湯を足しておきますので、これで頑張りましょう』
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
今回は、九味檳榔湯と真武湯を半分ずつ処方しました。

井上先生のコメント

・九味檳榔湯の目標はなんですか?と聞くと
『水毒と瘀血と気滞です。』
気滞というとのぼせがあってもいいのですか?と聞くと
『あってもいい』

・水毒というと苓桂朮甘湯とか防已黄耆湯とかありますが、違いは?と聞くと
『苓桂朮甘湯だとほんのりと火照ってのぼせがある。防已黄耆湯は色白できめの細かい肌で水毒がある。この方はちょっと違ったでしょ。顔の皮膚にきめの細かさがないし、ゴワゴワしたむくみという感じ。』
 
・ふくらはぎのむくみと圧痛はなくてもいいのですか?と聞くと
『それも目標にあるけど、顔見て、ああいう顔のかたに使えばいい。』

・『九味檳榔湯はある程度の年齢で、悪太りして、水が溜まった人で、瘀血もあるような人に使っている。厚朴があるので食べ過ぎるひと。瘀血があるけど通導散までいかない人。痩せたいという人には五積散の代わりに使う。五積散が使える人はめったに来ないよ。麻黄が入っているしね。』



【2013/03/08 21:23】 | 症例
トラックバック(0) |
IMG_0120.jpg3月××日外来

30代女性、新患
冷え症が困ると言ってこられる。
花粉症もあり、不妊症で以前は当帰芍薬散を飲んだことがある。
頬が少し赤くてマフラーをしている。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『どうですか?』と、井上先生が聞く。
   「この2月は、風呂とかであっためても足が温まらない感じがします」と、患者さん。
『わかりました、休んでください』と、腹診のために横になってもらう。『赤ちゃんも欲しいと思っておられるんですか?』
   「そうです、できれば」
顔は少し上気して、やや水気が多い感じ。手足もむくんではいないが水気はある印象を受ける。

『花粉症は、鼻づまりのほうがひどい?それとも鼻水のほうがひどい?』
   「鼻づまりのほうがひどいです」
『ちょっと舌出して』、口は少し粘っている。『でも、水分をとくにほしいという訳ではない?』
   「特にほしいとは思いません」
腹診をしながら、『ご飯食べると眠くなりますか?』と、聞く。胃がボテッとして力がなく支えているので脾虚を疑う。また、下腹には瘀血も少しあるようだ。
   「ときどき眠くなります。食べた後は動きたくなくなります」と、患者さん。

『天気が悪いと頭痛がある?』
   「重い日があります、雨が降るか降らないかの時に重くなります」
『食べれないタイプではなくて、食べれるほうだよね』
   「食欲は落ちることはないです、量はそんなに食べないんですが。」

『そうですねェ、、』井上先生は、少し迷っておられる。ここで言霊診断を始めました。『私たちの体は肉体だけの存在でないので、薬の名前を聞くだけで体が変化しますのでね』と、いつもの前置きをして
『例えば、香蘇散を飲んだと思って、、香蘇散を飲んだらどうなるって、思っていて...これわりといいね。鼻が通るね。念のために、人参養栄湯を飲んだ...そうじゃないね。香蘇散やね。』香蘇散が気の流れがいいようです。
『お薬飲んでもらうよ。胃の薬で、頭痛にもよくて、咳止めにもなるっていう薬を出してみますよ。漢方は、胃がよくなるのが条件だから、食べ過ぎ水分の取り過ぎに注意してね』
   「はい」
その場で、香蘇散を一袋飲んでもらいました。

しばらく生活上の注意をされた後に『いま、体のどこが変わってきたかな?』
   「胃のあたりがかるくなりました」
『あと、首の後ろ楽になってこない?』
   「あっ、スッとしてます」
『ここの流れがよくなると花粉症がよくなるよ』と、後頚部を指して言います。
  「はい」
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして、今回は香蘇散を1日3回で処方されました。

井上先生のコメント
・不妊があって、水っぽくて、冷えと瘀血があるので当帰芍薬散かな?と思ったのですが、と聞くと
『胃が支えていて、ご飯食べると眠気が来る人でしょ、ちょっと無理やね。』
次に、将来的には当帰芍薬散になる可能性もあるのですか?と聞くと
『できる、できる、でも今は胃をよくしてあげて、気の流れをよくするといいというか、あまり急がんでもいい』

・さらに、『ちょっと脈が弱かったので、人参養栄湯を言ってみたけど良くなかったよね。極端な虚の状態でなかったので、香蘇散で気をめぐらしてもいんだよね。虚が強かったら、中が空っぽだったら、気をめぐらすとよくないけどね。今年は、花粉症に対して、小青竜湯より香蘇散がいいよ。』

・香蘇散は理気剤で気をよくめぐらします。サントが思うところでは、虚が強いときに気をめぐらすと、気が薄まって、動悸がしたりしてしんどくなります。香蘇散は軽いと思っていたのですが、少し注意が必要なんですね。

・井上先生が、香蘇散の目標でよく言われるのが、天気で起こる頭痛です。これはとても参考になります。教科書的には、雨の時の頭痛は五苓散とありますが、少し違うようです。


【2013/03/07 22:48】 | 症例
トラックバック(0) |
IMG_0118.jpg2月××日外来

60代女性、新患
胸が痛いという主訴で来られる。
大柄の人
マスクをしていて目が赤い
少し思いつめている様子がうかがえる
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『胸が痛いってどこが痛い?』
   「ここのあたりです」右の胸を撫でていう。「月曜日から痛かったり治ったりしています」
『何か原因はある?』
   「強い痛みでないので、筋肉痛かなって様子見ていたんですけど。またなったりするので」
『胸の写真とか?』
   「健康診断では異常がなかったんです」もって来られた報告書を見ると異常がない。
『咳痰は?』
   「でないです」

『まず体見せてくださいね。お休みください』腹診のために横になってもらう。
『舌出して』みると、舌は先端が赤くて、やや乾燥がある。
『夜はぐっすり眠れる?』
   「この2,3日は、3時ごろに目が覚めて、また寝ても覚める。下痢もするんですよ」
『そうですか。なにか、神経的に参っていない?』腹診で左の腹直筋が緊張しているので、精神的な要因を疑って患者さんに質問します。
   「アーぁ、圧迫されるような感じあったり、何もなくなったりするんです」
『心が締め付けられるような思いしとらん?』
   「アーぁ、先週、兄が亡くなったんですよ。それで、お線香の煙が息苦しくて、、もともと喘息があったんですが今はないし、それもあるのかなっと...』
『夜寝れている?』
   「寝つきが悪いです」
『ひょっとして、夢に出てこられる?お兄様」
   「はい、一昨日とか出てきて、起きたら2、3時。写真を見たのが印象に残っていたのかなって...」
   
『たぶん、これね病気というか、心身のほうだと思うので』と、ここで言霊診断を始めました。
『私たちの体は肉体だけの存在ではないので、薬の名前を聞くだけで体が変化しますので、、心に胸の痛みを感じてたという、そういう状況の薬を考えてみるね。甘麥大棗湯を飲みました...甘麥大棗湯を飲んだらどうなる、って思ってくださる。背中温かくなるんじゃない。呼吸も落ち着くね。甘麥大棗湯に真武湯を半分足してみようか...余計によくなるね。』甘麥大棗湯と真武湯で気の流れがいいようです。
『心の痛みだと思うよ』
   「うん...」
『隣の部屋で、飲んでもらいますよ』
と、甘麥大棗湯を一袋飲んでもらいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10分後に入ってもらう。顔つきが穏やかになっている。目の赤味も取れている。
『どうなった?呼吸は?』
   「呼吸は楽になりました」
『どんな形でもいいから、ご供養してあげるといいよ。宗教じゃないので、特殊なことはせんでいいからね』
   「行き気が少なかったので、それで...」
もう一度腹診をすると、『さっきと変わってきましたね』と、左の腹直筋の緊張が取れている。『心をこめてご供養してあげるといいよ』
   「はい」
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は甘麥大棗湯に真武湯を少し加えて処方しました。

井上先生のコメント

・心が弱っていたのですか?と聞くと
『そうやね、左腹直筋が緊張していたものね』
井上先生によると、甘麥大棗湯の適応のある人は、左腹直筋が緊張しています。
右と書いている教科書もありますが、サントの経験でも左です。

・甘麥大棗湯があっている患者さんに、PTM(Photo Touch Method)で甘麥大棗湯の写真を触らせると、左の気の流れが頭から足までスッと流れることを感じます。
胸脇苦満は「肝」なので右に現れるのですが、甘麥大棗湯など、「心」の状態は左にあられやすいのでしょうか、そんな気がします。

・この患者さんのようにスピリットの問題がある場合に、井上先生はとても深いところで、察知できるようです。話の途中で患者さんが泣き出したりすることもあります。こうなると、とてもサントにはまねができません。



【2013/03/06 21:18】 | 症例
トラックバック(0) |
IMG_0117.jpg2月××日外来

40代女性
腰痛とか疲労とか風邪でかかっているかた。
前回は風邪気味で清暑益気湯を出している。
今回は花粉症の症状があるので来院される。
顔が少し赤く火照っている。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『どうですか?』
   「鼻が詰まった感じ、そろそろ花粉症があるのかなと思って」
『休んでください、』と腹診のために横になってもらう。
『お通じはどうですか?』
   「一日2回ぐらいですが、、」
『夜中にトイレとか行く?』
   「行ったり、朝方行ったり、行かなかったり」
『カサカサしているので、この方は麦門冬がいるんですよ、前は風邪気味だったから清暑益気湯にしたんですが、麦門冬の入った薬で考えないとね』と、サントに説明してくれる。
腹を触ると『ここ冷えとるね』と、胃のあたりから下腹にかけて冷えている。
腹は元気がない感じがする。

ここで言霊診断を始めました。『じゃあよ、清心蓮子飲を飲んだと思ってくれる...首の流れ良くなるよね。鼻通るよね。清心蓮子飲、真武湯、清心蓮子飲でやってみるよ』
   「花粉症はよくなりますか?」
『花粉症という訳ではなくて、体がどうなっているかで選んでいるのね。そしたら花粉所にも効きますよ』
   「子供は落ち着いたけど、おばあちゃんの介護をしないといけなのでいろいろ考える...」
『カーッとならないようにね、頭に熱がすこし上っている。軽くいこうね、日本はいい国だからどうにかなるよ』
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は清心蓮子飲を主にして真武湯を副で加えました。

井上先生のコメント
・清心蓮子飲というと「上盛下虚」ですが、それはあったのですか?と聞くと
『そうそう、上盛下虚。あります。顔が火照っていて、腹が冷えていて、尿も頻尿だし、夜中にも行くし、上下のバランスが悪い。上に行ったエネルギーを下に行くように持っていかないとね。』
*「上盛下虚」は原典の《和剤局方》に出てくる有名な言葉です。

・清心蓮子飲とは、「清心」というぐらですから「こころ」の症状もあるのですか?と聞くと『そうですね。麦門冬の場の燥熱は喉にあるんですが、それに加えて鬱的な鬱々と思う気持ち、考えすぎが心にある。』

・原典の《和剤局方》に「心中の蓄積、時に常に煩躁して、思慮勞力、憂愁抑鬱...」とあります。サントの意見では、清心蓮子飲は泌尿器症状が注目されがちですが、精神症状ももっと注目されてもいいと思っています。


【2013/03/04 22:49】 | 症例
トラックバック(0) |
105.jpg106.温経湯
【生薬構成】
麦門冬4、半夏4、当帰3、甘草2、桂皮2、芍薬2、川芎2、人参2、牡丹皮2、呉茱萸1、生姜1、阿膠2 (g)
*当帰、芍薬、川芎で補血し; 人参、甘草で補気し; 麦門冬、阿膠で滋潤し; 呉茱萸、生姜、桂皮で温め; 半夏で帯下の水湿を除き; 牡丹皮で駆瘀血する。

【原典】
《金匱要略》の「婦人雜病脉證并治第二十二」にあります。
*ここに出てくるキーワードを抜き出すと『婦人年五十所、手掌煩熱、唇口乾燥、帶下、半産、瘀血在少腹、久不受胎、崩中去血』となり、温経湯の証をよく表しています。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》には『此方は胞門虚寒と云ふが目的にて、凡そ婦人血室虚弱にして、月水不調、腰冷腹痛、頭疼下血、種々虚寒の候ある者に用ふ。年五十云々に拘るべからず。却つて方後の主治によるべし。また下血の症、唇口乾燥、手掌煩熱、上熱下寒、腹塊なき者を適症として用ふ。もし癥塊あり、快く血の下らざる者は桂枝茯苓丸に宜し。そのまた一等重き者を桃核承気湯とするなり。』と、あります。
*胞門虚寒:子宮の虚と冷え、 月水:月経、 年五十云々に拘るべからず:年は関係ない、 方後の主治:金匱要略の「亦」以下の文、 腹塊・癥塊:子宮筋腫など

【先人】
・手足がほてり、唇が渇くものの次の諸症:月経不順、困難、こしけ、更年期障害、不眠、神経症、湿疹、足腰の冷え、しもやけ《秋葉哲生:活用自在の処方解説》
・気血の虚と寒冷が主目標で、手掌の煩熱と口唇の乾燥、下腹部の膨満感又は不快感があり、その他云々。《矢数道明:漢方処方解説》
・衝任虚寒し、瘀血が滞り、新血が生じない。/貧血、冷え性/口唇乾燥、手掌煩熱、角化症/腹部軟弱、下腹部不快感 《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流】
・でっぷりがっちりした体つき、のぼせて生理前に乳房の張りや下腹の張りを訴える人で、広い年代の月経障害、PMS症状、便秘、花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎、主婦湿疹、高血圧、腰痛などに用います。キーワードは「のどの渇き」「手荒れ」
・温経湯は花粉症ばかりでなく、アトピー性皮膚炎、喘息、蕁麻疹などアレルギー疾患に良く用い極めて効果の高い薬です。
・桂枝が配され、黄連や大黄が配されていない。のぼせがはなはだしい人が多いが、赤黒い色ののぼせではなく、ほんのり桜色ののぼせである。臍下に冷えも認めることが多い。《以上;攻撃剤の使い方:清熱瀉下剤を中心に》

・温経湯(106)は麦門冬の配された温性駆痂血剤で、今日の女性に極めて効果の高い処方です。月経障害ばかりでなく、頭痛、肩こり、便秘、花粉症やアトピー性皮膚炎、喘息、蕁麻疹などアレルギー疾患などに良く用います。《アレルギー性疾患の漢方治療》

・温経湯:上胸部に熱を触知、咽喉のイガイガ、口渇、のぼせ、下腹にお血を思わせる抵抗と圧痛を目標に使用 《現代のアレルギー性疾患に対する漢方治療 補足1》

・温性駆瘀血剤であるが胃腸虚弱症状が無い、便秘勝ちである、柴胡の証が無い、腹直筋の攣急がある、口唇乾燥、手指先のほてりを訴える。《女性に対する漢方治療》

・桂枝茯苓丸加減で、やや虚証向きの方に投与します。当帰や川きゅうなどが配されており、温性駆お血剤となっていて虚弱となった今日の日本人向きです。桂枝茯苓丸と同様にがっしりした身体つきで、のぼせて赤ら顔な人に用います。皮膚のかさつきを訴える人が多くいらっしゃいますが、温経湯には麦門冬や阿膠が配されており、臓腑や皮膚を潤す効果も兼ねますので非常に使い勝手の良い薬です。生理痛や月経前症候群、子宮内膜症ばかりでなく、湿疹、花粉症、喘息、腰痛など幅広い疾患に良く用いています。
《現代における漢方治療のABC:C「温補しながら、攻下する」》

・四物湯との鑑別: 四物湯証にも顔のほてり、のぼせ、発汗しやすい人が多く、つい、桂皮ののぼせと思い、これら桂枝湯類を投与しがちであるが、桂枝茯苓丸証や温経湯証は下腹の瘀血が際だっており、生理前の乳房の張りや下腹の不快感の程度が強いことより鑑別出来る。《滋陰剤「補血剤、補陰剤」について》

【Dr.サントのコメント】
*以下の内容はDr.サントに文責があることをお断りします。
・下腹部にしっかりした瘀血をふれるかたが多いと思います。

・麦門冬が入っているので、井上先生が言うように、「口唇の乾燥」だけでなく「喉の燥熱」を見逃さないともっと鑑別しやすいと思います。つまり、前胸部に熱がある麦門冬のグループの一つで腹を温めて瘀血をとる薬と考えるとわかりやすいと思います。

【症例にリンク】
症例1. 

【2013/03/03 16:17】 | 漢方解説
トラックバック(0) |
IMG_0124.jpg2月××日外来

20代女性、新患
3年前から、顔に赤い発疹が出ると言って来院。
皮膚科で自己免疫疾患だと診断されている。
マスクをして顔を隠して診察室に入って来られる。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『自己免疫疾患と言われているの?』
   「はい、血液検査でそういわれています」、声が小さい。
『わかりました。マスク取ってみてくださいね』
マスクをとると、顔全面に小さな赤い発疹が多発している。
こがらな、おとなしそうな方。
舌を見ると、白苔があって、浮腫んでいる。

『寝てくれる』と腹診のために横になってもらう。
脚を触ると『膝は冷えているね。それと、ここ硬いね、少し痛いね、ここ血海というツボなんだけど』裏寒があって、血海に圧痛があるので瘀血も疑います。
手を触ると『手は火照って、冷えるね、汗もかきやすいね。足にも汗をかくよね』
腹を触ると『ちょっとガスがたまっているのかな。少し腸の動きが悪いかな』
次に、右と左の側腹部を軽くたたいて『これ(左)たたいた感じと、こっち(右)をたたいた感じと、右のほうがきついかな』
   「はい」、右か硬いので胸脇苦満もありそうです。
   
『全体としては加味逍遙散にちかい、滋陰至宝湯ぐらいをだしたらいいんですけど、でも胃腸が弱いのでちょっと無理かもしれん。鼻のところも発疹が出ているので、これは熱取りの薬からかね。胸脇苦満もなるし、瘀血もあるし。身体としては滋陰至宝湯だと思うんだけどね』と、サントに説明してくれる。

ここで言霊診断を始めました。『私たちは肉体だけの存在ではないので、薬の名前を聞くだけで身体が変わるのでね、ちょっと実験するよ』と、前置きをして
『滋陰至宝湯を飲みました...胸は楽になるね、ただお腹がいかんよね。滋陰至宝湯に真武湯を半分足して飲んでみてくれる...それか滋陰至宝湯と大建中湯を一緒に飲んだ...もうちょっとお腹がいかんかね。そうすると、一つ手前の清暑益気湯で様子みて、、、清暑益気湯を飲んだ...このほうが全体的に楽やね。』清暑益気湯が最も気の流れのバランスがいいようです。

『出したい薬は、滋陰至宝湯なんだけど、胃腸が弱っているので、ちょっと一呼吸、脾胃剤で様子見た上で、という具合にしますね』

『口が渇くからどうしても水分取ってしまう?』
   「はい」
『そこをもうちょっと我慢してくれるといいよね。この病気治りやすいと思うよ。今から清暑益気湯を飲んでもらいますよ』
清暑益気湯を一袋飲んでもらって、生活指導を受けてもらいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして10分後にもう一回診察室に入ってもらうと
『どんな具合ですか?』
   「胃のもたれが取れました。すこし暖かくなりました」
『どっちかというと口が渇くタイプだよね?』
   「水分をしっかり取っています」
『それ、あまりせんほうがいいよ。胃が弱っちゃっているので。また、ご様子教えてください』
   「ありがとうございました」
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
今回は、滋陰至宝湯に持っていく前段階として清暑益気湯を朝夕2回と真武湯を昼に1回、処方しました。

井上先生のコメント
・『本当は出したいのは滋陰至宝湯なんだけど、腸が弱っているので、清暑益気湯にしました。下腹に瘀血あるし、加味逍遙散証に近い感じ。それの乾燥タイプが滋陰至宝湯。いまの時期は加味逍遙散より滋陰至宝湯をよく出します。』
井上先生は膠原病には滋陰剤をよく使うと仰っています。

・井上先生は最近、清暑益気湯をたくさん出しています。以前の症例
『清暑益気湯、最近すごく出している。当帰、黄耆が入って補血補気して、麦門冬が入って滋陰して、黄柏で熱をとる。胃腸虚弱タイプの滋陰剤、清熱剤になる。』と、言っています。

・この患者さんのばあい、膝の冷えがあったので裏寒を疑いました。でも、同時に鼻の頭に発疹が出て赤くなっていたので胃腸系の熱も疑いました。手は火照って冷えていたので、全体として冷えと熱の混在と言えます。だから、清暑益気湯に真武湯を加えたのだと思います。

【2013/03/03 12:46】 | 症例
トラックバック(0) |
IMG_0123.jpg2月××日外来
40代女性
胃の痛みで前回から通院している方
身体は頑丈そうだが
顔が少しむくんで疲れている様子
前回は、清暑益気湯が出されている
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『胃の痛みはどうですか?』
   「もう今は全然痛くないです。いまは、口とか鼻の乾燥があります。忙しかったので口内炎もできています」

『舌出してくれる?』みると、舌はやや熱があり、歯痕もあり水毒も疑う。
『夜遅くない?』
   「夕食は8時ごろです。それからビールをちょっと...」
『口乾くからほしいんだね。口に熱持っとるものね。だけどお腹によくないんじゃない』
腹診をすると、『肝のところに滞りがあって、そんなに腹力弱いわけではないんですけど。
また、胸にも少し熱を感じる。

こんどは、座ってもらって背中を触ると、『やはり肝腎が弱っとる感じがする。ここが膨れちゃっているのでね』、背中の肝と腎の裏のところが少し盛り上がっている。
『だから内臓疲れているぞっ、ていう体しているので、清暑益気湯でもいいかね。ビール飲みだしたら清暑益気湯でもいいのかもしれないね。口が渇くわけだから』

そしてここで言霊診断を始めました『じゃあ、清暑益気湯を飲みました...それか、黄連があるので竹茹温胆湯を飲みました...こっちか、こっちのほうが楽やね。竹茹温胆湯がいいのかね。』竹茹温胆湯が気の流れがいいようです。

『もう一回、舌出してくれる』見ると
『嫰(どん)だけどかなり熱持っているので、最初は一袋でやってみるのでね。下痢するようだともっと少なくしてね』
  「はいわかりました」
『晩御飯たべたら、なるべく口に何も入れんようにね。胃腸にやさしいよ。』
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は竹茹温胆湯を処方しました。

井上先生のコメント
・咳や痰がなくても竹茹温胆湯を出してもいいのですか?と聞くと
『いいよ、だって温胆湯だもの。麦門冬があるので乾いてて、柴胡があるので肝に熱を持っている。黄連があるのでさらに上焦の熱をとる。胃腸が悪い時に使える。六君子湯の発展となる。この人はビール飲んでお腹弱いので。」
*竹茹温胆湯の構成は柴胡、竹茹、茯苓、麦門冬、陳皮、枳実、黄連、甘草、半夏、香附子、生姜、桔梗、人参なので、中に六君子湯から白朮、大棗を除いたものが入っています。あるいは二陳湯(半、茯、陳、大、生)が入っているともいえます。

・滋陰至宝湯はだめなんですか?と聞くと
『胃腸が弱い人にはつかえん。芍薬が入って胃の薬が入っていない。便秘がちなら大丈夫だけど。ビールやめればこちらになるかもしれん。』

・最近は乾燥している人が多い。滋陰剤を使用する機会が多いと仰っています。
黄砂、PM2.5などで空気が悪く、さらに携帯、パソコンなどの電磁気の影響で現代人は電子レンジに入っているような状態になっていると井上先生は言っています。

【2013/03/02 00:26】 | 症例
トラックバック(0) |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。