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日本古来の漢方や中医学とも違う、新しい漢方ともいうべき「井上流漢方」について説明します。患者さんの気の流れをみて気を整えることを第一義とする「井上流漢方」を名古屋の井上先生の外来から報告します。
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020.jpg020. 防已黄耆湯

【生薬構成】
防已5、黄耆5、蒼朮3(白朮も可)、大棗3、甘草1.5、生姜1 (g)
*防已で利水消腫して、黄耆で表を固め止汗する。朮、大棗、甘草、生姜で脾胃の機能を高める。

【原典】
《金匱要略》の『痓濕暍病脉證第二』と『水氣病脉證并治第十四』に出ています。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》には
『此方は風湿表虚の者を治す故、自汗久しく止まず、皮表常に湿気ある者に用ひて効あり。蓋し此方と麻黄杏仁薏苡甘草湯と虚実の分あり。かの湯は脉浮、汗出でず、悪風の者に用ひて汗を発す。これは脈浮にして汗出で、悪風の者に用ひて解肌して癒ゆ。即ち傷寒中風に麻黄、桂枝の分あるが如し。身重は湿邪なり、脉浮、汗出づるは表虚する故なり。故に麻黄を以つて発表せず、防已を用ひてこれを駆るなり。金匱に治水治痰の諸方、防已を用ふるもの、気、上に運びて水能く下に就くに取るなり。服後、虫の行く如く及び腰以下氷の如し云々は、皆湿気下行の徴と知るべし。』とあります。
*風湿:風と湿の邪の集まったもの。 表虚:体表の機能の衰え。 自汗:汗が自然に出ること。 解肌:肌の邪を和解する。 

【先人】
・体表に水毒があり、しかも表が虚し、下肢の気血めぐらざるものに用いる。  《矢数道明:漢方処方解説》

・気虚の風水&気虚の風湿  《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・ブヨブヨした肥満(風湿身重)/多汗/下肢浮腫傾向  《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流】
・色白で、筋肉軟らかく、水太りの体質で、疲れやすく、汗が多く、小便不利を訴える、主として女性の膝関節症を始め諸疾患によく用いる。中年以降の有閑夫人で、太って疲れやすく、身体が重いという人に用いることが多い。脉は多くは浮弱である。

・私見:処方構成上、利水剤であるが補気剤を兼ねる。
肺気虚に対する治療薬であり、膝関節症ばかりでなく、風邪薬、咳止め、皮膚疾患の薬、自律神経失調症の薬など多岐にわたる疾患に応用できる。排尿回数が少なく、排尿時の勢いがないのを目標に加えている。防已黄耆湯単独ばかりでなく、附子を加えたり、真武湯や桂枝加朮附湯などと合方したりして用いる機会が多い

・応用:体表に水毒があり、しかも表が虚し、下肢の氣血めぐらざるものに用いる。
感冒後皮膚のしまりが悪く、熱が去らず、悪風があって自汗が止まらず、頭痛、身体疼痛し、小便不利もの、腎炎 ネフローゼ 妊娠腎 陰嚢水腫 癰 筋炎 下肢骨カリエス 膝や足の関節炎、潰瘍、浮腫 肥満症で筋肉軟らかく、水太りのもの 皮膚炎 蕁麻疹 多汗症 わきが ひえ症 気欝 月経不順 変形性膝関節炎
《以上;利水剤について②防已黄耆湯を中心に》

・発汗過多で身体をだるがるひとの膝痛などに用いる。
《整形外科の漢方治療》

・ 水太りの中年女性には防已黄耆湯とのキャッチフレーズの通り、水太りには防已黄耆湯が良く効きます。しかし、現代においては隠れた裏寒が併存していることが極めて多く、真武湯や附子末を加えて投与した方が上手くいきます。防已黄耆湯は暑がりで汗かきで疲れやすく、排尿時の勢いが弱いのに加えて、浮腫んで、排尿回数が少ないなどの水毒症状があるのを目標にして用います。
《生活習慣病の漢方治療②》

・いわゆる水太りの代表処方。ことに女性の生活習慣病に使用する機会が多い。 汗かきで疲れやすく、排尿時の勢いが弱い人の肥満、高脂血症 高血圧など生活習慣病に用いる。
《生活習慣病の漢方治療①》

・膝関節症や蕁麻疹など諸疾患に用いるばかりでなく、自律神経失調症も良くなることがある。
《自律神経失調症の漢方治療①》

・汗かきで疲れやすいひとで尿の勢いがない、排尿しようとしてもスーと尿が出ない、残尿感があると訴える人に良く用います。
《泌尿器領域の漢方治療》

【Dr.サントのコメント】
・典型的には浮腫んだ人の膝痛の薬ですが、さらに突っ込んで言うと肺虚がある人の薬です。

・汗をかいて皮膚の締まりがない時は肺虚があります、その時には防已黄耆湯が効くことがあります。特にむくみがなくても効いてくれます。膝痛だけでなくいろいろな症状をとってくれます。腰痛、めまい、心不全、etc. 多彩な症状に効きます。

・年を取ると肺虚が出てくるので、老人に使う機会が多いと井上先生は言っていました。

・汗以外では「尿の勢いが弱いこと」が目標になると井上先生は言っています。

・防已黄耆湯があっている人は、大体ずっとこの薬を処方してくれと言ってきます。水気がある太った女性が多いです。

・夏になると出す機会が一気に増えます。汗が多くなるからでしょう。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3. 

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【2013/07/29 23:42】 | 漢方解説
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029.jpg029. 麦門冬湯

【生薬構成】
麦門冬10、半夏5、粳米5、大棗3、人参2、甘草2 (g)
*方名のごとく麦門冬が君薬です。乾燥を滋潤して上逆を引き下げる。半夏は胃気を開き逆気を下げる。人参、大棗、甘草、粳米で補気して潤す。

【原典】
《金匱要略》の『肺痿肺癰咳嗽上氣脉證并治第七』に出ています。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》には
『此方は肘後に云ふ通り、肺痿、咳唾、涎沫止まず、咽燥いて渇する者に用ふるが的治なり。金匱に、大逆上気とばかりありては漫然なれども、蓋し肺痿にても、頓嗽にても、労嗽にても、妊娠咳逆にても、大逆上気の意味ある処へ用ふれば、大いに効ある故、此の四字簡古にして深旨ありと見ゆ。小児の久しき咳には、此方に石膏を加へて妙験あり。さて咳血には、此方に石膏を加ふるが先輩の経験なれども、肺痿に変ぜんとする者、石膏を日久しく用ふれば不食になり、脉力減ずる故、千金の麦門冬湯類方の意にて、地黄、阿膠、黃連を加へて用ふれば工合よく功を奏す。また聖惠五味子散の意にて、五味、桑白皮を加へ、咳逆甚しき者に効あり。また老人津液枯稿し、食物咽につまり、膈症に似たる者に用ふ。また大病後薬を飮むことを嫌ひ、咽に喘気ありて、竹葉石膏湯の如く虚煩なき者に用ふ。皆咽喉不利の余旨なり。』とあります。
*肘後:書物名《肘後備急方》のこと、肺痿:一般的には肺結核のこと、金匱:金匱要略のこと、大逆上気:金匱要略の中の有名な文言、頓嗽:百日咳、労嗽:肺結核、津液枯稿:口や皮膚が渇いたもの、膈症:嚥下障害を訴えるもの、咽喉不利:金匱要略の有名な文言、咽喉頭違和感のこと

【先人】
・本方は少陽病の虚証を帯びたもので気の上逆による痙攣性咳嗽に用いられる。  《矢数道明:漢方処方解説》

・肺気陰両虚&胃気陰両虚  《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・反射性の激しい咳(大逆上気)/咽喉のひきつり(咽喉不利)/心下痞  《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流】
・麦門冬湯は老人の空咳の薬として有名です。処方構成からみると四君子湯と同じく補気剤で、腸の働きを良くして生命力、自然治癒力を高める薬ですが、麦門冬という心肺や胃を滋潤する生薬が配されており、津液不足に陥りやすい老人にはうってつけの薬です。気管支炎など、肺疾患に用いるばかりでなく、不眠、身体の弱り、痩せ、食欲不振などにも効果が期待できます。
《脾胃を整える「補気剤」の活用》

・脾胃が衰え、津液不足に陥った老人は脱水症になりやすいが、夏バテで脱水症になったり、食欲不振、身体が弱ったり、痩せたりする人にも適応がある。
《老人の漢方治療②》

・一般的に老人に多い、喉の乾燥感や咽頭不利があり、大逆上気して顔面紅潮し、痙攣性咳嗽する、心下痞、腹部軟弱な人に使用。麦門冬湯は補気剤である。夏ばてが激しく痩せて、気力の低下した。口渇、喉の乾燥感や咽頭不利がある人に使用。
《滋陰剤の臨床応用》

・喉やイガイガ、カサカサして空咳が続く風邪で、顔がのぼせ、上胸部に熱を感じ、肺に熱燥があると思われる人で心下がつかえ、下痢や食欲不振があって脾胃虚弱となっている時に使用。現代は津液不足に陥っている人が多く老人に限らず幅広い年齢層の人に適応がある。
《風邪・インフルエンザの漢方治療②》

・老人の乾燥咳の薬として有名であるが脱水をおこしやすい高齢者の胃部の不定愁訴にも用いる機会が多い。
《消化器疾患の漢方治療》

・同じ麦門冬の配された麦門冬湯は良く使用されているが炙甘草湯はあまり使用されていない
麦門冬湯 ――補気剤  どちらかというと下痢傾向
炙甘草湯 ――気血両補剤 どちらかというと便秘傾向
炙甘草湯の場が実際には多い
《脾胃を整える「気血両補剤」の活用》

【Dr.サントのコメント】
・風邪の後の喉のイガイガに良く効きます。またこれが一般的使い方でしょうか。

・麦門冬湯だけを長期に出すことはすくないです。

・また、喉が渇いて空咳がでてても、麦門冬湯より他の麦門冬剤のほうがあっていることが多いように思います。現代人はそんなに単純ではなくなっているのでしょうか。井上先生の書いているように、炙甘草湯や滋陰至宝湯、竹茹温胆湯、滋陰降火湯、清暑益気湯、清心蓮子飲などがあっている人が多いと思います。

・咽が乾燥するときには、腎陰虚と肺陰虚が合併するときがありますが、その時には八味丸、六味丸と合方して出したります。
そうすると、やっぱり老人に使うことが多くなります。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3. 


【2013/07/28 20:42】 | 漢方解説
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111.jpg111. 清心蓮子飲

【生薬構成】
麦門冬4、茯苓4、黄芩3、車前子3、人参3、黄耆2、甘草1.5、蓮肉4、地骨皮2 (g)
*麦門冬は燥熱を去って滋潤する、蓮肉は心熱をさます、地骨皮は虚熱をさる、車前子は下焦を強め、黄耆は補気する、人参、甘草、茯苓は四君子湯の一部で脾の補気作用。

【原典】
宋の時代の《和剤局方》に出ています。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》では、
『此方は上焦の虚火亢りて、下元これがために守を失し、気淋白濁等の症をなす者を治す。また遺精の症、桂枝加竜蛎の類を用ひて効なき者は、上盛下虚に属す。此方に宜し。もし心火熾んにして妄夢失精する者は、竜胆瀉肝湯に宜し。一体此方は脾胃を調和するを主とす。故に淋疾下疳に困る者にあらず。また後世の五淋湯、八正散のゆく処に比すれば虚候の者に用ふ。名医方考には労淋の治効を載す。加藤謙齋は小便余瀝を覚ゆる者に用ふ。余数年歴験するに、労動力作して淋を発するものと疝家などにて小便はかなり通ずれども、跡に殘る心ありて了然たらざる者に効あり。また咽乾く意ありて、小便余瀝の心を覚ゆるは、猶更此方の的当とす。正宗の主治は処とするに足らず。』と、あります。
*下元:下焦 気淋:神経性の頻尿 上盛下虚:下の矢数道明の解説を参照 労淋:長引いた淋 小便余瀝:小便の切れが悪くて排尿が終わったあとにも尿が点滴すること

【先人】
・上盛下虚というのが目標になる。上盛下虚というのは、上部の心熱が盛んになって下焦の腎の働きが弱くなり、上下の調和を失って、下焦にあたる泌尿器に諸症状を現わすことを意味する。 《矢数道明:臨床応用漢方処方解説》

・気陰両虚・心火旺。すなわち、いらいら、焦燥感、不眠、多夢、口や咽の乾燥感、口内炎、胸が熱苦しい、動悸、手のひらや足の裏の火照りなどの陰虚火旺の症候に、元気がない、疲れやすい、気力がない、食欲不振などの気虚の症候を伴う。 《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・気虚(易疲労、胃弱)/心火旺(イライラ、胸苦、口渇)/淋症(頻尿、残尿感)
《漢方常用処方解説:髙山宏世》

【井上流】
・蓮肉で牌胃を補いながら、虚火の炎上による心火旺を治し、麦門冬で燥熱を潤し、地骨皮で肝腎の虚熱を下して、下焦の軽い湿熱を去る働きがある。今日の日本人には適応が多い。
今日ではその他、不眠、自律神経失調、更年期症状、アトピー、花粉症、気管支炎、腰痛、高血圧等広く症例疾患にも応用。

・清心蓮子飲は夜間尿、頻尿、尿意頻迫、残尿感等に使用するのが一般的。上胸部の熱、心下痞硬を目標に投与一般的には八味地黄丸が使いがたい高齢者に使用、若い人で神経過敏となり、上記症状を起こしている人にも使用。

・清心蓮子飲はいわゆる自律神経失調症に良く用います。水を下げ、気を下ろすことで、イライラ、不眠に効果があるばかりでなく、三黄瀉心湯など黄連剤でなくても、心熱を冷ますことで、焦燥感や不安感を和らげる効果があります。

・清心蓮子飲と真武湯を一緒に投与すると良いことも多々あります。多くの場合は清心蓮子飲2.5gと真武湯2.5gを分2で投与しています。清心蓮子飲証と思われるものの手の冷え、足の冷え、浮腫みを認める時に按配しています。

・アトピー性皮膚炎や花粉症など諸疾患に適応あり

・清心蓮子飲は竜胆潟肝湯の虚の処方と言われており、下焦の湿熱をとる薬。女性に対して帶下ばかりでなく、子宮内膜症など女性疾患に適応あり。
 
・明目作用のある車前子が配されているので眼精疲労など眼疾患に良く用います。

・蓮肉が配され、陰虚による心火旺を治す効果があるため、歯肉炎にも用います。
《以上;今日の漢方薬の使い方5 清心蓮子飲を中心に》

・神経質で膀胱炎になりやすい人や、夜間尿のある人で、手足のほてり、のぼせ、イライラ、不眠、高血圧、膀胱神経症などに用いる。
《老人の漢方治療①》

・神経質で夢をよくみたり、夜中にトイレにちょくちょく起きたり、手足がほてり、囗が渇きやすい人に用います。膀胱神経症、尿漏れ、帯下ばかりでなく、高血圧など中年以降の諸疾患に良く用います。竜胆瀉肝湯尾の虚の処方といわれています。
《泌尿器領域の漢方治療》

・ 膀胱神経症の薬として有名であるが、上部の心熱が盛んになって下焦の腎の働きが弱くなり、上盛下虚を起こしやすい現代人向きの処方で、高血圧や糖尿病など生活習慣病によく用いる。 手のほてり、のぼせ、口渇、上胸部の熱、心下のつかえ、不眠、夜間尿などを目標とする。
《生活習慣病の漢方治療①》

【Dr.サントのコメント】
・井上先生は最近頻用しています。その理由としては、以下のように地球環境の変化を挙げられています。
『地球環境が激変し、電磁波の増大により、地球全体が大きな電子レンジの中に入っている状況にあるため人間の身体が内部から熱せられて、干からび、麦門冬を始めとする滋陰薬の配された滋陰剤の適応する人が多くなった。心肺が痛めつけられて弱り、外見は良くても、心気虚、肺気虚に陥っている人が多い上の事が、昨年の夏以降、特に感じられます。』
清心蓮子飲を滋陰剤的な位置づけで見ています。

・のぼせがあって頻尿があるときに使うのが典型的ですが、そのような典型的な兆候がそろっていなくても、色々な症状に効きます。「上盛下虚」にこだわらなくていいようです。

・特に喉の燥熱や口渇があるときに麦門冬の入った薬の鑑別として考えています。
麦門冬の入った薬では、麦門冬湯、炙甘草湯、滋陰至宝湯、清暑益気湯etc.とありますが、それらを「PhotoTouchMethod」で素早くスクリーニングすると、適合する漢方を当てることができます。

・手の「労宮」を押したら気持ちいいという時には、心に熱があると思われるので、効くことが多いように思っています。清心蓮子飲は「清心」という具合に「心」の熱を冷ます効果があります。

・井上先生の言われるように真武湯を少し混ぜると良く効くことがあります。
さらに、井上先生の言うように牛車腎気丸をまぜて、下焦の症状をもっと改善することもできます。

・いままでは、単に八味丸、牛車腎気丸の裏処方的存在だと思っていましたが、それ以上に精神的に作用する力もあるので、現代人には向いているようです。四君子湯が基礎にはいっているので胃腸の弱い現代人向けです。

・不眠の鑑別処方としても当然上がってきます。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3. 


【2013/07/28 16:19】 | 漢方解説
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087.jpg087. 六味丸

【生薬構成】
地黄5、山茱萸3、山薬3、沢瀉3、茯苓3、牡丹皮2.5 (g) 
*八味地黄丸から附子と桂枝が除かれています。
*3補(地黄、山茱萸、山薬)+3瀉(沢瀉、茯苓、牡丹皮)で構成

【原典】
《小児薬性直訣》に出ています。

【古典】
曲直瀬道三の《衆方規矩》では、
『腎経の虚損にて体痩せ憔悴し盗汗ありて発熱し、或は腎虚して渇をなし小便淋秘し気塞がりて痰多く頭目眩暈し眼に花ちり耳鳴り耳聞こえず舌痛み歯痛み腰腿痿縮え、或は小便に下り、音を失い、水あふれて痰となるを治し血虚の発熱を去るの神方なり。八味丸に附子、肉桂を去りて用ゆ。』と、あります。

【先人】
・この方剤はいわゆる腎陰虚の代表的方剤で、腰から下の精力をつけ、循環を良くし、尿の出渋るのを快通させる方剤だと考えればよい。 《桑木崇秀:漢方心療ハンドブック》

・これに冷えが加わると八味丸の適応証となる。したがって、八味丸証に多少の火照りがあってよい。 《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・腎陰虚を治る養陰の主方である。腎虚の症状とともに虚火上炎するため熱証、燥証を呈する。 《漢方常用処方解説:髙山宏世》

【井上流】
・地黄が配され補腎すると共に、牡丹皮が配され駆?血するように配慮されている。
高血圧など生活習慣病に用いられる

 ・杞菊地黄丸 六味丸 菊花 枸杞子
 菊花――甘 苦 微寒  疏散風熱 明目 清熱解毒 平肝陽
 枸杞子―甘 平 補肝腎 明目
 中年以降の諸疾患で目のかすみ、しょぼつきなどを強く訴えるときに

 ・知柏地黄丸―六味丸 知母 黄柏
 知母―――苦 寒  清熱瀉火 滋腎潤燥
 黄柏―――苦 寒  清熱燥湿  瀉火解毒 清虚熱
 知母と黄柏を配合すると神経系の興奮性を抑える 腎火を瀉す作用あり。
 抑えの効かないほど頑張りすぎるタイプの狭心症など中年以降の諸疾患に用いる。

 ・味麦地黄丸「八仙長寿丸」―六味丸 麦門冬 五味子
 麦門冬―――甘 微苦 潤燥生津 化痰止咳
 五味子―――酸 温  肺腎陽虚による咳嗽に用いる
 麦門冬と五味子が配され肺を潤し強化する効果が高い。口渇を訴える糖尿病傾向     のある人の生活習慣病に用いる。
《補血剤、補陰剤について》

・のぼせ、汗かき、寝汗、手足煩熱、臍下の熱があり、腎の働きが低下し、虚熱症状がある時に用いる。

・補腎剤の基本で、生活習慣病一般に使用する。
《生活習慣病の漢方治療①》

・のぼせ、ほてりを目標に、殊に男性更年期に伴う自律神経失調症状にも用いる。
《自律神経失調症の漢方治療①》

・肝腎を補う効果に優れている。体質改善薬としてアレルギー疾患全般に用いる。
《アレルギー性疾患の漢方治療①》

【Dr.サントのコメント】
・原典では小児の薬の様な取扱いですが、井上先生はあまり使っていません。

・長瀬千秋先生によると、中国では良く使うと言います。日本ではあまり使われないようです。その代りに、日本では中国にくらべて柴胡剤を良く使います。
中国が乾燥していて、日本が湿気ているからだと仰っていました。

・井上先生は、ご老人には六味丸の加味方の小菊地黄丸、味麦地黄丸、知柏地黄丸をよく使われます。八つ目製薬の方剤をよく使用します。保険適応がありませんが、数粒で効果があるので1瓶で長持ちします。

・サントもそれほど使いません。
でも、口が渇いて火照る人で麦門冬の薬ではなくて、六味地黄丸がいい人がいます。
ご老人で顔が火照って、頭がワクワクとして違和感があってという方に使ってよかったことがあります。

・糖尿がある女性で結構長期に出していることがあります。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3. 


【2013/07/25 21:02】 | 漢方解説
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IMG_0359.jpg7月××日外来
30代女性
体調不良とかでかかっている。
前回は小建中湯が出ているので、虚労があったのだろう。
顔を見ると少し疲れている印象がある。
眉間に少ししわがよっている。声は小さい。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『最近どうですか?』
   「熱いので疲れやすいですが、漢方で少しましです」
『それはよかったですね。小建中湯を出しているんですが。』と、説明してくれる。

『お休みください。』と、腹診のために横になってもらう。
足を触りながら、足首が冷えているので『どうしてもここ冷えるでね、ここ冷やさんようにしたほうがいいよ』と、言います。
『舌出してくれる』舌は少し乾燥している。
手がほてっているので『手がほてるよね、どっちかというとね』
   「はい」
腹を触りながら、『胃のところがちょっと冷えとるのかな...』と言います。
口が渇くので水をたくさん飲んでいるようです。
   「先週、週の途中にお腹が痛くて下痢をしました。今は落ち着いたんですが」

『手はかなり火照っているね』
『おしっこの色は濃い?』
   「見ていないです」
『夏バテ毎年する?』
   「しやすいですね」
『手が火照りすぎているよね。どうしても水分取っちゃうよね。』
『口はかなり粘る?』
   「そんな気がします」

『例えばね、夏バテの薬は清暑益気湯というのがあるんだけどね』と、ここで言霊診断を始めました。『それじゃ、清暑益気湯を飲みました...これで下腹があったかくなるね、口の粘りも取れるね。』清暑益気湯で気の流れがいいようです。
『今回は清暑益気湯にしとくよね。口乾いてもほどほどに水分取ってね』
   「はい」
『意識してあったかいものを食べたほうがいいよ。冷たいものばかり食べんようにね。冷房も気を付けてね。』
  「はい。ありがとうございました」
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は清暑益気湯を処方しました。

井上先生のコメント

・清暑益気湯を出す目標は、一般的な夏バテの症状に加えて「おしっこの色が濃いこと」「口が渇くこと」「胸に熱があること」などと言われます。
身熱がこもるのでこのような症状が出てきます。処方中の生脈散(人参、麦門冬、五味子)で口の渇きをよくして、黄柏で身熱を冷まします。

・清暑益気湯と補中益気湯はよく似ているので、鑑別が難しいことがありますが、言霊診断とかPhotoTouchMethodで容易です。

・最近、清暑益気湯の患者さんが増えています。熱いので、水分をとりすぎて、胃腸をわるくして、あっさりしたものしか食べられなくなって、結局夏バテになる患者さんが多いです。水分を取ったら夏バテが予防できるというのは間違いだと思います。その逆で水分はホドホドにしたほうが夏の間は体は元気でいられます。
 最近テレビで熱中症予防のために水分をたくさん取れと言っていますが、これで調子が悪くなっている患者さんをたくさん見ます。

・清暑益気湯について詳しくは、漢方処方解説【清暑益気湯】を見てください。


【2013/07/25 13:53】 | 症例
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IMG_0356.jpg7月××日外来
50代女性
多汗、のぼせ、頭痛とかの更年期症状で前回からかかっている。
前回は加味帰脾湯が出ている。
上品な格好をした、標準的な体格の女性。
イライラ感は感じられない。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『どうですか?』
   「頭痛薬一度も飲まなかったです」
『それはよかったです』、また、顔つきが前回より落ち着いているので『少し落ち着かれたんですね』と、言います。
   「はい」
『加味帰脾湯を出していたんですが...』とサントに説明してくれる。
『お体見せてくださいね』と、腹診のために横になってもらう。

『更年期の症状があったんですが、良くなってよかったですね』と、言います。
カルテを見ると、多汗、のぼせ、頭痛、肩こりなどが初診時の主訴として挙がっています。
『生活気を付けてくださっていますか?』
   「そうですね、なるべく早めに寝るようにしています」
腹診をしながら『やっぱり、お腹あんまりお丈夫でないので、もうしばらくこのお薬にしようかと思います』
   「ああ、そうですか」
『前と比べてお声のトーンが変わりました』、前回よりトーンが下がって落ち着いているよです。
   「そうですか」
『これすごく効いたと思います。胃のお薬で安定剤で頭痛薬でというお薬なのでね、続けますよ。』

   「ハーブティーは一緒に飲んでいいですか?カモミールとメトルとローズマリーと...」患者さんはハーブに詳しいようです。
『体に聞くよ』と、井上先生は、ここで言霊診断を始めました。『メトルを飲みました...動悸するよこれ。ローズマリーを飲みました...これも悪くないけど、すこしね。じゃあ、ローズヒップを飲みました...これは気が上がるよ。リンデンを飲みました...これはいいね。それと、カモミールね...これは全体的にいいよ。』
   「そうですね」
『能書きにいろいろ書いていても、あなたに合っているかは別だからね』
   「分かりました」
『貴方は自分でわかるんだから、のむ前に自分の体に聞いてみてね』
   「試してみます」
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回も加味帰脾湯を処方しました。

井上先生のコメント
・加味帰脾湯は胃腸が弱わい加味逍遙散タイプだと言われます。加味逍遙散は教科書的には虚証だと書かれていますが、実際には加味帰脾湯が虚証にあたるように思います。サントも加味逍遙散は実証気味の方に、よく効く印象を持っています。

・言霊診断は漢方薬だけでなく、西洋薬、食物、嗜好品、身に着けるもの、etc.なににでも適用できます。
 サントがよくやるのは、体に合っていないのに「ヨーグルト」を飲んでいる患者さんが多いので、「ヨーグルトを飲んだと思ってください」と腹診をしながらやります。すると、腹が冷えてくるのが患者さんもわかるので、患者さんにヨーグルトが体に合っていないことを理解してもらっています。



【2013/07/24 21:59】 | 症例
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IMG_0337.jpg7月××日外来

70代女性
冷え、腰痛、肋間神経痛などでかかっている人。
顔は少しボーとしてのぼせている感じがある。
小柄な方、声も小さい。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『どうですか?』
   「腰と肋骨のところが痛いんですが、肋間神経痛...」
『肋間神経痛は変らん?』
   「はい」
『そうですか』

『横になってください』と、腹診のために横になってもらう。
『附子湯を1月以上出していたんですが、じゃあ、次のステップに行けたら行きますよ』と、言います。

足を触りながら『足が浮腫んどるよね、でも前ほどでないかな、少しむくみ取れてきたよね。』足はまだ結構むくんでいます。
   「はい」
『じゃあ、今度はね、ここ血海に圧痛があるのでね...』右膝の内側のツボ血海に圧痛があります。これは瘀血の存在を意味します。
次に、『舌出して』、舌を見ると、やっぱり瘀血を疑います。

『つぎのステップに行きます』と、ここで言霊診断を始めました。『たとえば、牛車腎気丸を飲みました...これに行けると一番いいんですが...じゃあ、桂枝加朮附湯を飲みました...まだ、こっちが無難やね。』
『桂枝加朮附湯を飲んだと思うと、みぞおちの流れがよくなったのがわかる?』
   「そうですね、なんだか...」
『今までのお薬(附子湯)にニッキを足すと名前が変わります。これをお出ししとくよ。』
   「そうですか」
『これでうまくいくと思うよ』
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は、桂枝加朮附湯を処方しました。

井上先生のコメント
・附子湯の次に真武湯にせずに、どうして桂枝加朮附湯にしたのかと聞くと、
『附子湯は真武湯の生姜を人参に変えた薬。桂枝加朮附湯は真武湯に桂枝が加わった物』
附子湯は生姜の代わりに人参が加わっているので真武湯より温める力が強い。だから、今更真武湯にする意味がない。それだったら、痛みに対する別の効果を期待して桂枝加朮附湯にしたようです。桂枝加朮附湯は茯苓をのぞいた真武湯を含みます。桂枝加苓朮附湯だと真武湯そのものを含みます。

・『血海と舌に瘀血があるので腎気丸に持っていきたいんですが、まだいけないようだから、その中間の桂枝加朮附湯にした』




【2013/07/23 22:02】 | 症例
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107.jpg
107. 牛車腎気丸

【生薬構成】
地黄5、山茱萸3、山薬3、沢瀉3、茯苓3、牡丹皮2.5、桂皮1、附子1、車前子3、牛膝3 (g) 
*八味地黄丸に車前子と牛膝が入っている構成。車前子は利尿作用があります。牛膝は腰痛、膝痛を良くします。両方で作用を下焦に引き下げます。

【原典】
宋の厳用和の《済生方》に出ています。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》では、
『此方は八味丸の症にして、腰重、脚腫、或は痿弱する者を治す。一男子年三十餘、年々脚気を患ひ、腰重、脚軟、歩する能はず、冬月はやや差ゆるに似たれども、春夏の際に至れば復た発すること故の如し。余強ひて秋冬より春末に至るまで、此方を服せしめて全く癒ゆ。』

【先人】
・八味丸を用いたい場合で、尿量減少や浮腫のあるもの。老人性腰痛や糖尿病性神経障害にはことに適している。 《桑木崇秀:漢方心療ハンドブック》

・腎陽虚の水腫。すなわち八味地黄丸の症候に下半身の水腫を伴うもの。 《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・八味地黄丸の作用をさらに増強させたもの。腰痛著しく小便不利のもの。 《矢数道明:漢方処方解説》

・下半身機能低下(腰痛、脚冷、臍下不仁)/足腰の冷え/排尿障害、浮腫傾向。  《漢方常用処方解説:髙山宏世》

【井上流】
・八味地黄丸の補腎効果を強化した薬。糖尿病の方や女性に使用する機会が多い。
八味地黄丸と同じく、腎虚に起因する疾患に頻用する。

・食欲良好で元気なお年寄りには八味地黄丸、牛車腎気丸なのですが、隠れた裏寒があり虚弱となっている方には温裏剤である真武湯を少量合方すると良いことが多いのです。
《整形外科の漢方治療》

・八味地黄丸の補腎作用を強化した薬。女性や糖尿病の人の腰痛、神経痛に良く用いる。
《老人の漢方治療①》

・牛車腎気丸(107) [八味地黄丸 牛膝 車前子]
  車前子――甘 寒   利水 通淋 明目
  牛膝―――苦 酸   補益肝腎 活血通経 止痛
八味地黄丸の作用を強化した薬方。糖尿病のある人や婦人によく使用する。
《補血剤、補陰剤について》

・八味地黄丸に更に牛膝と車前子を加えて補腎効果を強化した処方。生活習慣病一般に使用するが、殊に糖尿病に使用の機会が多い。
《生活習慣病の漢方治療①》

【Dr.サントのコメント】
・八味丸に比べて、足の浮腫みがある場合に良く効くようです。

・井上先生は、いろいろの方剤に組み合わせて使っています。
最近では、清心蓮子飲、木防已湯などと組み合わせて使っていました。

・サントのところには腰椎脊柱管狭窄症の患者さんが来られますが、牛車腎気丸を出すことが多いです。下肢のしびれに効いてくれます。

・糖尿病で足がしびれた場合にも使っています。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3. 




【2013/07/22 21:51】 | 漢方解説
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007.jpg007. 八味地黄丸

【生薬構成】
地黄6、山茱萸3、山薬3、沢瀉3、茯苓3、牡丹皮2.5、桂皮1、附子0.5 (g)
*六味丸+桂枝、附子の構成。六味丸で腎陰を補い、桂枝附子で腎陽を鼓舞する。したがって、腎陽虚、又は腎陰陽両虚に使用する。

【原典】
《金匱要略》の5つの病篇に挙がっています。条文が多い。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》では、
『此方は専ら下焦を治す。故に金匱は、少腹不仁、或は小便自利、或は轉胞に運用す。また虚腫、或は虚労腰痛等に用ひて効あり。その内消渇を治するは此方に限るなり。仲景が漢武帝の消渇を治せりといふ小説あるも虚ならず。此方は牡丹、桂枝、附子と合する処が妙用なり。済生方に牛膝、車前子を加ふるは、一着輸する手段なり。医通に沈香を加へたるは一等進みたる策なり。』
*故に金匱は:金匱要略からの引用部分。 少腹不仁:触ると下腹部に力がないこと。
轉胞:排尿障害のこと。 消渇:口渇のこと。 済生方に牛膝、車前子を加ふるは:牛車腎気丸のこと。

【先人】
・下半身機能低下(腰痛、足弱)/足腰の冷え/排尿障害(臍下不仁)  《高山宏世:漢方常用処方解説》

・1)腎陽虚。すなわち、腰やひざがだるくて力がない...2)腎陽虚の症状に、火照り、口渇、いらいらなどの陰虚の症候も時にみられるもの。  《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・下焦の腎気が虚して尿利不調となり、下虚のため血行停滞して血熱をおこし、下焦の麻痺を招来したものである。下が虚するため上衝を起こし、また血滞のため煩熱を現わし、口渇を訴えるものに用いられる。 《矢数道明:漢方処方解説》

【井上流】
・六味丸証より更に衰え、腎水及び命門の火が共に衰え虚寒症状が加わった中年以降の諸疾患、腰痛 神経痛 骨粗鬆症 前立腺肥大など、特に男性によく用いられる。臍下不仁 足煩熱 夜間頻尿 下虚 冷えを目標に用いる 

・八味地黄丸は腎気「腎臓、副腎、生殖器機能」の衰えに対処する重要な薬で
中年以降の諸疾患に頻用されると共に、老化を防ぎ、健康増進する目的で保健薬として古来常用されてきました。老いさらばえた老人の薬というイメージがありますが、飽食の時代の今日では胃腸が丈夫でいくら食べても胃にもたれない元気で太った血色の良い人で下虚があるのを目標に使用する機会が多いです。

 腎臓疾患――腎炎 ネフローゼ 腎臓結石 萎縮腎 腎盂炎 蛋白尿
 膀胱疾患――膀胱炎 膀胱結石 膀胱括約筋麻痺 前立腺肥大 尿失禁 夜尿症
 脳血管疾患―脳出血 動脈硬化 高血圧 低血圧
 糖尿病  尿崩症
 腰痛 坐骨神経痛 椎間板ヘルニア 腰脚の麻痺 脚気 骨粗鬆症
 神経衰弱 健忘症 遺精 夢精 陰痿
 白内障 緑内障 眼底出血 調節衰弱
 老人性皮膚掻痒症 陰門掻痒症 老人性腟炎 湿疹 乾癬 苔癬
 肺気腫 便秘など、殊に老化に伴う殆ど全ての疾患に応用の機会がある。
《補血剤・補陰剤について》

・食欲良好で元気なお年寄りには八味地黄丸、牛車腎気丸なのですが、隠れた裏寒があり虚弱となっている方には温裏剤である真武湯を少量合方すると良いことが多いのです。

・中年以降の糖尿病、前立腺肥大の漢方治療のファーストチョイスは八味地黄丸、牛車腎気丸ですが、現実には腹の冷え、ガス満があり、口の周りが荒れていたり、臭いおならが出たり、食後の眠気があったりして脾虚を伴っていることが多く、大建中湯や六君子湯など補気剤と一緒に合わせて投与すると良いことが多いのです。
《老人の漢方治療》

・下焦の働きを良くする殊に男性の代表処方です。前立腺肥大の薬として有名です。老人性腟炎、腎炎、尿路結石、夜尿症、腰痛症ばかりでなく広く中年以降の諸疾患にも用います。方剤の中の地黄は骨も強化し、骨粗鬆症の薬となり、牡丹皮は駆瘀血することで血液をサラサラにする効果があります。胃腸の丈夫な男性には他の薬がいらない、理想的な保健薬です。
《泌尿器科領域の漢方治療》

・虚弱となった今日の子供には成人の手術後など著しい気力体力の低下「気血両虚」に用いられる十全大補湯や大防風湯が適応することも多く、腎陽虚に対する代表薬で中年以降のおじさんに良く用いる八味地黄丸の適応もあります。
《小児科領域の漢方治療》

【Dr.サントのコメント】
・サントのところには耳鳴の患者さんも多いのですが、腎虚が原因となっている方には良く使います。

・井上先生はごく少量でいいと言います。その時は小太郎の丸剤を3-5粒程度出します。多く出し過ぎると胃にもたれます。

・お年寄りでも、体の中の冷えた方が多いので単純には使いにくい印象があります。井上先生が書いているように八味丸単独ですべて解決とはいかないことが多い。
井上先生は胸をさわって身熱がある人によいと言います。
確かに長期使っていると胸が冷えてくるような印象があります。

・夜間頻尿、前立腺肥大など男性に適応がおおい。女性はすくない。でも、時々、糖尿病があって体力もある女性などに使うことがあります。

・腰痛でも使いますが、どちらかというと、大防風湯が多いようです。

・八味丸があっている場合は、変更なく長期間八味丸を続けることがあります。
男性の保健薬という具合です。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3. 



【2013/07/21 21:17】 | 漢方解説
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IMG_0336.jpg7月××日外来

80代女性
両方の膝の手術をされており足が痛いという。
腰痛もある。
前回は防已黄耆湯と真武湯を処方されている。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『どうですかね?』
   「足が痛くて、」
『足の痛みは変わらんのね?』
   「しびれとこわばりと、もう20年になる」
『膝の手術されたんだよね、こわばりと、痛みと、しびれと...
ちょっと横になってくださいますか』と、腹診のために横になってもらう。
   「腰もいたい、ちょっと腫れているんです」みると、足がむくんで腫れている。
『夜トイレに起きるのは?』
   「1回です」
『それはいいのね』

足を触りながら『足浮腫んどるよね、この浮腫み方は心臓の浮腫みかたですよね。』、足首の周辺が全周性にべとっとむくんでいる。
『舌出して』舌を見ると乾燥があります。
腹診をすると『みぞおちの下が支えているよね』いわゆる、心下痞堅の所見があります。
『ちょっと支えすぎやね、木防已湯にするかね。この足の感じは心臓だしね。』

『体に聞くでね教えてよ』と、ここで言霊診断を始めました。『木防已と湯真武湯を一緒に飲みました...防已黄耆湯と真武湯を一緒に飲みます...これは気が下がらんわね。木防已湯だけ飲んだ...じゃあ、木防已湯と桂枝加朮附湯を一緒に飲んだ...それか、木防已湯と牛車腎気丸を一緒に飲んだ...こっちのほうやね。これでいいよね。スッとするものね』
   「足がすごく冷たくて」
『今から、のんでもらいますよ』と、木防已湯と牛車腎気丸をその場で飲んでもらいまいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして10分後にもう一度診察室に入ってもらいました。
患者さんをみるなり『ちょっとスッとしたんじゃない』
   「体が暖かくなりました」
『よかったよかった。頑張って来てくれた甲斐がありました。体の疲れをとりながらという薬を出すので。』
   「ありがとうございました」
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は牛車腎気丸と木防已湯を一緒に出しました。

井上先生のコメント
・『牛車腎気丸だけでは足らんから、木防已湯で弾みをつけるというか、たとえば牛車腎気丸も今の夏は防已黄耆湯と一緒にしたほうがいいですよ。肺が弱るから。そして心が弱ったときは木防已湯といっしょがいいんだね』

・『この方の場合は心が弱っていると、牛車腎気丸で腎を補っても効かないような気がする。心の弱りをとりながら腎を補う。』
井上先生は牛車腎気丸を色々な方剤にたして使われます。たとえば、防已黄耆湯、清心蓮子飲とかです。腎を補って気を引き下げる力が強いようです。


【2013/07/21 18:01】 | 症例
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IMG_0335.jpg7月××日外来

70代男性
咳と夜間尿に対して前回、当帰湯を出している方。
今回は顔の赤みが減っている。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『このまえの夜にトイレが5回あると、、どうですか?』
   「ちょっと減ったような気がします」
『そうですか』
   「薬変えてもらって最初の1週間はよかったんだけど、あとはクーラーの効きすぎか、ちょっと...」
『咳はどうですか?』
  「それはいいです」

『咳があると仰るので、顔が赤いし、麦門冬の入った薬を出して良くなかったので、この前だした厚朴の入った当帰湯で1週間はよかって、その後いかんというのは、たぶん冷とんだね』と、説明してくれる。
   「クーラーに入るのでね。隣が焼き肉やなんで夜中に戸を閉めるのでクーラーをどうしても使う。」
『一見麦門冬に見えたのですけど、まえより顔の赤みが減っていますよね。それじゃ横になってくれますか。』と、腹診のために横になってもらう。
腹を見ながら、右の季肋部に毛細血管が出ているので、『これ毛細血管があるので、これ肝臓なので、それで顔が赤くなっているんだね。だから麦門冬では違うんだね。だから肝を良くすればいいので、、、』
そして、腹を触りながら、冷えがあって右の下腹部にガスをふれるので『真武湯証があるので、真武湯を間に挟めばいいのかね』と、言います。

ここで言霊診断を始めました。『当帰湯、真武湯、当帰湯って飲みました...これで行くか、当帰湯と真武湯を1袋ずつ一緒に飲んだ...これがスッとするね。それじゃ、これで行きます』
  「はい」
『良くわかりました、102番と30番を一緒にお出しします。夜のトイレはどうですか?』
   「いい時と悪い時があります。」
『今回、もうすこし工夫しましたのでね』
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は当帰湯に真武湯をたして処方されました。

井上先生のコメント
・真武湯の証は『腹が冷えて、右の下腹にガスがあれば真武湯証です。』と、教えてくれました。

・井上先生は咳に対して麦門冬だけでなく厚朴の入った薬もよく使われます。喉にイガイガがなくて、ガス満があって喉より下のほうからでる咳に使われます。厚朴の入った薬では当帰湯は使いやすいといいます。
当帰湯には、大建中湯と帰耆建中湯と半夏厚朴湯の要素が入っているのでとても使いやすい薬です。腹痛、胸痛に関係なく使えます。



【2013/07/21 17:11】 | 症例
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IMG_0330.jpg7月××日外来

70代女性
腰痛とかでかかっているかた。
腰が少し曲がっていてゆっくり歩く。
小柄な人。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『このまえ、お薬変えたんだけど、どうだった?』前回は、防已黄耆湯と真武湯が出ている。『おしっこの出方が弱いと仰ったのでね』
   「さあ、あまり...」
『あまり変わらん?』
   「はい」
『足の裏のピリピリがあるんだものね』
   「左の足の裏がピリピリして...」

『お通じ出ていますか?』
   「出ています」
『少し横になってください』と、腹診のために横になってもらう。
脈を見ながら『ちょっと動悸するかな?』
   「左足とこの腰が痛いので」
『口乾く?』
   「あまり乾かんですけど、それほど水分取ってないです」
『足の浮腫みが少しあるわね』みると、足にはむくみがあります。
   「起きる時に腰が刺すように痛いんです」と、患者さんが答えます。
   
ここで井上先生が、言霊診断を始めました。『たとえば、炙甘草湯を飲んだ...それとも、防已黄耆湯を飲んだ...やっぱり防已黄耆湯がいいわね。じゃあ、防已黄耆湯と桂枝加朮附湯を飲んだ...あかんね。防已黄耆湯と真武湯を一緒に飲んだ...これじゃないね。防已黄耆湯と牛車腎気丸を一緒に飲んだ...これでいいか。それぞれ一袋ずつ一緒に飲んだ...これやね。』
防已黄耆湯と牛車腎気丸を一緒にしたほうが気の流れがいいようです。
『20番に30番だったのを107番にしておくからね。これで行ってみるよ』
   「はい。」
『風邪ひいたときは、20番だけにしてね』
  「はい。」
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
そして今回は防已黄耆湯と牛車腎気丸を処方しました。

井上先生のコメント
・『防已黄耆湯は最近出すことが多くなっています。』
夏になると汗をかく方が多くなるので防已黄耆湯の出番が増えます。
防已黄耆湯を出す目標は『尿の勢いが弱い』ことだと言われます。
これは確かに良く当たります。

・サントの患者さんでも腰痛に防已黄耆湯が効くことがありました。その方は腰椎ヘルニアの術後の方ですが、水毒もなく膝痛もなく教科書的には防已黄耆湯が効くことはないと思ったのですが、Photo Touch Methodで反応があったので出しました。すると体調がよくて腰痛もよいといわれました。
 臓腑でいうと「肺虚」が基礎にあって、これを防已黄耆湯が補ったと思われました。それまで、防已黄耆湯は単に膝痛と水毒の薬だと思っていたのですが、基本は「肺」を強くする薬だと最近は思っています。五行の関係でいうと「肺」を補うとその子である「腎」が強くなり腰痛が改善します。
 汗をかきやすい人で、喘息など呼吸器に問題があるような方で、腰痛があれば防已黄耆湯が腰痛治療の鑑別に上がってきます。



【2013/07/20 23:56】 | 症例
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137.jpg137. 加味帰脾湯

【生薬構成】
人参3、白朮(蒼朮)朮3、茯苓3、酸棗仁3、竜眼肉3、黄耆3、当帰2、遠志2、柴胡3、山梔子2、甘草1、木香1、大棗2、生姜1(g) 
*帰脾湯に柴胡と山梔子が加わる構成となっている。

【原典】
《済生全書》の『巻六、健忘門』

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》の『帰脾湯』の条に『此方(帰脾湯)に柴胡・山梔を加へたるは、内科摘要の方なり。前症に虚熱を挟み、或いは肝火を帯ぶる者に用ふ。』とあります。
*柴胡と山梔子が加わることにより、虚熱と肝火を制します。

【先人】
・帰脾湯の証にやや熱状の加わったもの。  《矢数道明:漢方処方解説》

・精神症状や肩こり、身体上部の熱間など疏肝清熱作用を期待したもの。 《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・全身倦怠感、易労、貧血/不眠、イライラ、健忘/のぼせ、ほてり、胸苦しさ 《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流】
・加味帰脾湯は、陰性の神経不安定で寝られない、いらいらする、いわゆる血の道症状のある人に対して気を下げ神経を安定させるように配慮されているので、女性の諸疾患に使用の機会が多い。

・元来胃腸虚弱体質の者、あるいは大病後に衰弱している時などに過度に精神を労してその結果、不眠、健忘、貧血、心気亢進あるいは出血などの症状のあるもので胸脇苦満があり、熱状のあるもの「ほてり、のぼせなど」に用いる
血の道の代表処方である加味逍遥散より一層、虚状を呈し、脾胃虚弱、心気虚となっているのに適応、今日では加味逍遥散より使用の機会が多い

・一昔前は「女性と言えば加味逍遙散」と言うほどよく使用され、効果も高かったのですが、現代の女性は虚弱になっている人が多く、そのため補気効果の強い加味帰脾湯が良く効くことが多いようです。「今日の女性には加味帰脾湯」と言えるほど血の道症状ばかりでなく、諸疾患にも良く使用し、喜ばれることが多く、嬉しい限りです。

・加味帰脾湯は加味逍遙散と同じ柴胡剤ですが、脾胃虚弱、心気虚に陥った人に対して用いられる処方です。現代においては女性に対する代表処方である加味逍遙散より現実には使用の機会が非常に多く、更に加味帰脾湯単独ではなく、甘麦大棗湯を追加して投与し、心気虚を一層良くする工夫をすると効果があがることが多いのです。 《以上;柴胡剤の活用法》

・加味帰脾湯は、陰性の神経不安定で寝られない、いらいらする、いわゆる血の道症状のあるひとに対して気を下げ神経を安定させるように配慮されている。臨床応用=血の道 不眠 体調不良 アトピー性皮膚炎 喘息 気管支炎 高血圧 膀胱炎帯下 ベーチェット病 血小板減少性紫斑病など
《不眠に対する漢方治療》

・痩せ気味で眼がとんがり、顔がくすみ、ぐちゅぐちゅと訴えの多い人で、血の道「更年期障害」、自律神経失調、不眠、肩こり、にきび、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、高血圧、喘息、腰痛などに用います。気虚「胃腸虚弱」、胸脇苦満、のぼせ症状を目標に用います。
《女性の漢方治療》

・心虚に陥っている気管支炎、喘息にも使用。
《現代のアレルギー疾患に対する漢方治療補足3.》

・胃腸虚弱タイプの女性に用いられる処方であるが、心虚症状(ぐっすり寝れない、夢ばかり見る)、柴胡の証(胸脇苦満、口苦など)があり、下腹部の於血を示唆する所見がはっきりしない
《女性の漢方治療の基礎》

【Dr.サントのコメント】
・井上先生が書かれているように加味逍遙散との鑑別が必要です。
サントの経験でも、加味帰脾湯ががあっている方のほうが多いようです。純粋な加味逍遙散タイプは少ないです。
教科書的には「血の道」には加味逍遙散が良く上がりますが、加味帰脾湯がもっと注目されるべきです。

・井上先生によると、加味逍遙散の虚弱タイプは加味帰脾湯で、加味逍遙散の乾燥タイプは滋陰至宝湯です。だから、この3つが一つのグループとしてイメージされます。

・サントの印象ですが「帰脾湯」タイプが増えているので、今後、「加味帰脾湯」タイプももっと増えてくると思っています。
時代がそんな時代になってきているのでしょうか。

・加味逍遙散は時々男性にも使いますが、この方剤は「血の道」というように、ほとんど女性に使うように思います。帰脾湯も男性より女性に使うことが多いと思います。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3.



【2013/07/18 22:32】 | 漢方解説
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065.jpg065. 帰脾湯

【生薬構成】
人参3、白朮3、茯苓3、酸棗仁3、竜眼肉3、黄耆3、当帰2、遠志2、甘草1、木香1、大棗2、生姜1 (g)
*四君子湯(人参、白朮、茯苓、甘草)が基本
*酸棗仁、遠志、竜眼肉には安神作用があり、木香には理気作用があります。

【原典】
宋の時代の《済生方》が原典です。少し引用すると『脾経失血、寝ること少なく、発熱盗汗、或は思慮して脾を破り、血を摂すること能わず。…』とあります。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》では、
『明医雑著に拠て、遠志、当帰を加へ用て、健忘の外思慮過度して心脾二臓を傷り血を摂することならず、或は吐血衂血、或は下血等の症を治するなり。此方に柴胡、山梔を加へたるは内科摘要の方なり。前症に虚熱を挟み或は肝火を帯る者に用ゆ。大凡補剤を用るときは小便通利少なき者多し。此方も補剤にして且利水の品を伍せされども方中の木香気を下し胸を開く故、よく小便をして通利せしむ。主治に大便不調を云は能小便を利するを以大便自止の理なり。』とあります。
*内科摘要の方:加味帰脾湯のこと(帰脾湯+柴胡、山梔子)

【先人】
・心と脾の虚による諸病を治す処方。全身倦怠、胃疲労感、胃弱/貧血様顔貌/手足のひえ、動悸/不眠、健忘 《高山宏世:漢方常用処方解説》

・養血安神作用(竜眼肉、遠志、酸棗仁、当帰)と理気作用(木香、生姜、大棗)が本方独自の効果をもたらす可能性がある 《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・心と脾の虚で貧血、心悸亢進、健忘、不眠症、諸出血等を目標とする。 《矢数道明:漢方処方解説》


【井上流】
・脾胃虚弱の人が思慮して、動悸、不眠、食欲不振を訴える時に用いる薬で、酸棗仁、遠志、竜眼肉で心虚を補い、木香で気を巡らし神経疲労を治す効果のある処方構成となっている。 《アレルギー疾患の漢方治療①》

・元来胃腸の弱い虚弱体質のものが思慮過度の結果、動悸、不眠、食欲不振、種々の出血を起こし、貧血を来したり、健忘症となったりする時に用いる。

・酸棗仁、遠志、竜眼肉で心虚を補い、木香で気を巡らす処方構成になっている。 《自律神経失調症の漢方治療①》

・四君子湯+[木香・酸棗仁・遠志・龍眼肉・黄耆・当帰]心気虚タイプの人の神経痛などやリウマチに使用 《整形外科の漢方治療》

【Dr.サントのコメント】
・帰脾湯は最近使うことが多くなっています。
不眠があって人参養栄湯か甘麥大棗湯かとおもっても、帰脾湯のことがあります。不眠で単純に酸棗仁湯が合う人は少ない。抑肝散加陳皮半夏も少ない。

・サントのところには頭痛の患者さんが多く来るのですが、子供の頭痛でも使うことが割とあります。単純な頭痛でなくて、頭痛があって学校に行けないようなときに合うことがあります。

・鍼をすると感じるのですが、帰脾湯が合う人は「胸のあたりにしこりがあって支えている」人が多い。半夏厚朴湯のような梅核気ではなく、麦門冬湯のようなイガイガでもなく、甘麥大棗湯のような胸の冷えでもない。何か胸に「しこり」がある感じがします。
これを浅田宗伯は上の《勿誤薬室方函口訣》で『木香気を下し胸を開く』と言っているのでしょう。

・「食後にどうしようもなく眠くなる」ときに効きます。

・現代では出血で使うことは少ないです。ご老人の皮下出血で使うことがあります。

・認知症に効くと言われていますが、あまりパッとしない印象です。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3.


【2013/07/18 22:20】 | 漢方解説
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IMG_0329.jpg7月××日外来

60代女性
更年期障害と自律神経の問題でかかっているかた。
大柄な方、顔は浮腫んでいる感じ。
やや赤くてのぼせもありそうだ。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『いかがですか?』
   「だいぶ良くなりました。」
『お尻の痛みはどうですか?』、最近、お尻に帯状疱疹が出て、いたかったようです。
   「だいぶましです、座っても。でもすごく疲れるんです。去年、血液検査して甲状腺も異常ないから、じゃあ漢方飲んでみないかって、加味逍遙散を3月のんでいたんですが...」
『手の震えはどう?』
   「緊張したときに出てきます」
『じゃあお休みください』と、腹診のために横になってもらう。

『いま清心蓮子飲を出しているんですが、滋陰至宝湯にするか、清心蓮子飲に牛車腎気丸を足してもいいかね。どっちかで考えてみますね』と、サントに説明してくれる。
『舌出して』、舌は粘っている。
『糖尿の気はない?』
   「ありません」
『どっちかというと下痢はないよね?』
   「2日ばかり続くと次は便秘になる感じです」
   
『今ね、口がネバネしているのよね。口の粘りをとる麦門冬の入った薬にしているんですよ。加味逍遙散に近い薬なんですけどね..ちょっと体に聞いてみるね』、と言霊診断を始めました。『じゃあ、滋陰至宝湯を飲みました...それとも、清心蓮子飲に牛車腎気丸を足したほうが...これが、スッとしますね。これにします。』
清心蓮子飲に牛車腎気丸を加えたほうが気の流れがいいようです。

『更年期のくすりはいろいろあるんですが、あなたは麦門冬が入った薬がいいからね。それが入った更年期の薬を出すでね。』
その場で清心蓮子飲と牛車腎気丸を一緒にもんでもらいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10分後にもう一度診察室に入ってもらいました。
『首の後ろスッとしたけどね』
見るだけで気が下りたのがわかります。
『下焦の流れ良くなってきたね』
   「あまり感じないですけど、お薬美味しかったです。」
『それじゃ、合っているから。111番と107番を1日2回飲んでください』
  「ありがとうございました」
*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*::*
今回は清心蓮子飲に牛車腎気丸を一緒に処方しました。

井上先生のコメント
・清心蓮子飲にどうして牛車腎気丸なんですか?八味丸とかでなく、と、聞くと
『牛膝、車前子が入っていて、女性は出産とかで腎がやられることが多いから、女性には牛車腎気丸が合う人が多い。八味丸より下焦にきく、気を下げる力も強い。牛膝、車前子で下に引き下げる。』
清心蓮子飲も下焦に効きますが、牛車腎気丸でさらに下焦に働く力を強めるのでしょう。

・『どっちかというと男性は八味丸がおおい、糖尿の傾向があれば牛車腎気丸が合うことが多い。六味丸は火照りがポイント。』

・『清心蓮子飲があっているしね。滋陰至宝湯とか滋陰降火湯に行けれるかもしれんけど、胃が支えているのでまだ人参がほしいわね。』だから、麦門冬と人参がはいった清心蓮子飲にしたと言います。『清心蓮子飲でもうちょっと足すときに牛車腎気丸にしたらいい。竜胆瀉肝湯まではいかなけど。』と、答えてくれました。


【2013/07/04 21:37】 | 症例
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IMG_0323.jpg7月××日外来

70代男性
腰痛、胸痛、咳、とかいろいろでかかっている。
顔が赤くてのぼせている印象がある。
中肉中背のかた、皺があって皮膚はやや乾燥気味。
☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆。,・~~・,。★。,・~~・,。☆
『お元気そうじゃない?胸の締め付け?』
   「ない、なくなった」
『今は、八仙丸(味麦地黄丸)を1日5粒を2回だね、これでいいみたいね』
   「八仙丸でようなってきたんだけど、眠たいのがどうかならんかな」
『今度は何が気になる?』
   「夜は例のトイレが多いもんで、睡眠がとれんので」
『トイレ何回行く?』
   「5,6回」
『まだ5,6回行く?』
   「その時によるですけどね、調子のいい時は3回かね、」
『ちょっとえらいね』

『横になってくださいね』と、腹診のために横になってもらう。
患者さんの腹を触りながら、井上先生が咳をします、『喉やね』、患者さんの喉の調子が悪いのが伝わるのです。
腹はガスが溜まっています。
『舌出して』舌には少し粘りがある。
腹にガス満があるので『厚朴のほうがいいんやろうか?』

ここで勝手に言霊診断を始めました。『当帰湯を飲みました...それとも、八仙丸(味麦地黄丸)を飲みました...当帰湯やね。こっちやね。』当帰湯のほうが気の流れはいいようです。
『102番を飲んでもらいます。お腹ガスやもんね』
そこで、当帰湯を1袋飲んでもらいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10分後にもう一度診察室に入ってもいました。
『お腹があったかくなったね』見るだけでわかります。
顔の赤味も減っています、のぼせが取れています。
『これにするわ。今度は錠剤一遍忘れて、102番だけ飲んでみて。』
   「八仙丸は置いとくんですか?」
『そう、置いといてね』
  「はい」
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そして今回は当帰湯を処方しました

井上先生のコメント
・当帰湯で頻尿がよくなることがあるのですか?と、聞くと
『神経かね。神経的な頻尿の可能性がある。喉がおかしいもん。麦門冬と思ったけど、違うみたい。』
八仙丸(味麦地黄丸)には麦門冬が入るのに効いていません。だから、厚朴の漢方を次は試すことになりました。厚朴は気を晴らすので神経的な症状に効きます。

・当帰湯は腹にガスが溜まって、腹や胸の痛みがあるときに使われます。
井上先生は咳があるときにも使います。咳は麦門冬だけでなく厚朴が関係することもあります。



【2013/07/04 21:31】 | 症例
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