日本古来の漢方や中医学とも違う、新しい漢方ともいうべき「井上流漢方」について説明します。患者さんの気の流れをみて気を整えることを第一義とする「井上流漢方」を名古屋の井上先生の外来から報告します。
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大建中湯100. 大建中湯

【生薬構成】
蜀椒2、乾姜5、人参3、膠飴20 (g)
*山椒(蜀椒)と乾姜が腸を温めます。山椒がガスを抜きます。人参と膠飴で脾を補います。
【原典】
《金匱要略》の『腹滿寒疝宿食病脉證治第十』
*有名な『…皮起。出見有頭足。上下痛…』の部分は、「腸の蠕動運動が激しくて、上下に行ったり来たりするのが、腹の皮の上から見える」という風に解釈されています。
【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》には『此方は小建中湯と方意大いに異なれども、膠飴一味あるを以つて建中の意明了なり。寒気の腹痛を治する此方に如くはなし。蓋し大腹痛にして胸にかかり嘔あるか腹中塊の如く凝結するが目的なり。故に諸積痛の甚しくして、下から上へむくむくと持ち上る如き者に用ひて妙効あり。解急蜀椒湯は此方の一等重き者なり。また小建中湯の症にして、一等衰弱腹裏拘急する者は、千金の大建中湯を宜しとす。』とあります。
*下から上へむくむくと持ち上る如き:これが上の金匱要略の有名な語句に対応しています。
【先人】
・虚状と寒状を帯び、腸の蠕動亢進が発作性にきたり、腹痛の激しいものに用いる。《矢数道明:漢方処方解説》
・腹が冷えて痛み、腹部膨満感のあるもの。《秋葉哲生:活用自在の処方解説》
・寒虚証/蠕動不穏、腹痛(Subileusの如き症状)《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流】
・胃腸を温め、動きを活発にする作用がある。麻痺性イレウスに用いる。救急で用いる場合は単独で用います。
・今日、一般的には大建中湯を単独で長期に用いる場合が殆どのようですが、大建中湯には心を保護する甘草が配されていないため、長期的には大建中湯は補中益気湯などの補気剤や小建中湯などの裏虚に対する方剤などと合方して用いる必要があると思います。
・大建中湯は山椒、生姜、人参、膠飴が配されており、腸管を温め蠕動運動を活発にする作用があるため、ガス満となっている老人や虚弱者に気楽に主薬方に大建中湯を良く合方して用います。《以上、消化器疾患の漢方治療》

・山椒で胃腸を強く温め、膠飴で胃腸の力をつけて腹が冷えてガス満して便秘する人に使用します。麻痺性イレウスに使用の場があります。《脾胃を整える「補気剤」の活用》

・青白い顔をして額に皺を寄せ、くどくどと繰り返し自律神経失調症状を訴える人で、腹が冷えて軟弱で便が出にくいのを目標に用いる。排便がスムーズになるとともに、食欲も出て、気分が晴れやかになり、元気になっていただけることがある。《自律神経失調症の漢方治療①》

・大建中湯で腰の大腸兪(腰椎4,5)のあたりが暖かくなるので腰痛、首こりにも効く。花粉症にも効くことがある。

・背中の膀胱系の流れがよくなるので、体のめぐりが良くなるので神経症、うつ病にも効くことがある。

・目標は「腹が冷えてガス満」

・甘草が入っていないので、たくさん薬を飲んでいるご老人にも使いやすい。

【Dr.サントのコメント】
・井上先生の教えに従って、下腹部の冷えとガス満を目標にして使っています。これでよく効いてくれます。

・サントの個人的意見ですが、《金匱要略》や《勿誤薬室方函口訣》にひきずられて、成書では”腸の蠕動亢進が必発”というように書いているものがあります。しかし、これはほとんど無視してもいいと思っています。入院患者さんは別として、クリニックの外来では”腸がうねうね動く”ような患者さんを診ることはほとんどありません。そんな症状があっても、外来で腹診をする数分間の間に起こることはめったにないでしょう。また、接触鍼をしたり腹を触っていると、大建中湯の証でなくても、腸がぐるぐる動いてきます。脈を診ただけでも気が流れると腸は動き出します。
それに、胃腸の悪い患者さんは、たいてい胃腸薬や便秘薬を飲んでいるので、こんな状況では腸がぐるぐる動くということはあまりないように思います。
だから、現代人の大建中湯の証としては、「冷えとガス満」が適当だと思っています。

・PTM(PhotoTouchMethod)では下腹が暖かくなるのがわかります。場合によっては、腰や大腿部まで暖かくなります。こなときはよく効きます。

【症例にリンク】
症例1. 2. 

【2013/03/28 23:05】 | 漢方解説
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