日本古来の漢方や中医学とも違う、新しい漢方ともいうべき「井上流漢方」について説明します。患者さんの気の流れをみて気を整えることを第一義とする「井上流漢方」を名古屋の井上先生の外来から報告します。
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98.jpg98.黄耆建中湯
【生薬構成】
芍薬6、黄耆4、桂枝4、大棗4、甘草2、生姜1、膠飴20 (g)
*小建中湯に黄耆を足した構成になっています。小建中湯の記事を参照してください。黄耆があることによって補気と皮膚に作用するようになります。
【原典】
《金匱要略》の『血痺虚勞病脉證并治第六』

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》には『此方は小建中湯の中気不足、腹裏拘急を主として、諸虚不足を帯ぶる故、黄耆を加ふるなり。仲景の黄耆は、大抵、表托、止汗、去水の用とす。此方も外体の不足を目的とする者と知るべし。此方は虚労の症、腹皮背に貼す。熱なく咳する者に用ふと雖も、或は微熱ある者、或は汗出づる者、汗無き者倶に用ふべし。外台黄耆湯の二方、主治薬味各少し異なりと雖、また此方に属隷す』とあります。
*表托:皮膚の化膿症など 止汗:ここでも汗を止めることが黄耆の役割として注目されています。漢方では汗が出ると気が漏れて疲れやすくなるとされています。 
【先人】
・小建中湯証に似ているが、表裏ともに虚し、さらに虚状のはなはだしい場合に用いる。  《矢数道明:漢方処方解説》
・小建中湯の適応症以外に、自汗、息切れ、食欲不振、疲れやすい、元気がないなどの気虚の症候が顕著にみられるもの。 《秋葉哲生:活用自在の処方解説》
・小建中湯証に加えて、一段と表裏共に虚し、自汗、息切れ、疲れやすさなどの気虚の症状が著しい。/易疲労、虚弱、元気がない/腹部軟弱/下痢、腹痛の傾向 《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流】
・小建中湯に黄蓍を加味した処方。黄蓍は皮膚の栄養を助け、寝汗を止め、肉芽を生じ、化膿を止める作用がある。汗かき、寝汗を目標にアトピー性皮膚炎、中耳炎、蕁麻疹などに用いる。胃腸粘膜をも丈夫にする作用があるため、腹痛、胃潰瘍にも用いる

・膀胱神経症の薬として猪苓湯や清心蓮子飲が有名ですが、虚労を治す黄耆建中湯で膀胱神経症が良くなる人も多いのです。

・虚労に対する治療処方である黄耆建中湯など建中湯類は一般的には小児の体質改善薬として使用され、生活習慣病には用いられません。しかし、現代においては成人の生活習慣病に用いても極めて効果の高い処方です。肝の働きが弱く、興奮しやすく疲れやすい、いわゆる虚労タイプの人は食べるとエネルギーが高まり元気になるので食べ過ぎてしまって太り、脂肪肝となりやすいのです。そうするとますます肝の働きが悪くなり疲れやすくなります。それでも、食べるとエネルギーが高まり、一時的に元気になるので食べ過ぎてしまいます。虚労のために悪い連鎖をついつい繰り返してしまい、生活習慣病に陥る人が現実には多いのです。
《以上;脾胃を整える建中湯類の活用》

・皮膚、粘膜の修復作用に優れている黄耆が配され、胃十二指腸潰瘍治療薬のファーストチョイス。 《消化器疾患の漢方治療》

・汗かきで寝汗の出やすい人の諸疾患に用いて効果の高い薬であるが、自律神経失調症にもよく用いる。 《自律神経失調症の漢方治療》

・虚労を治す処方ですが、肝虚の著しい人のアレルギーに使用。 《現代のアレルギー疾患に対する漢方治療》

・小児体質改善薬として有名ですが成人で疲れすぎて尿の勢いが無い、尿がスッキリ出ない、残尿感があるなどと訴える人にも用います。 《泌尿器領域の漢方治療》

・小建中湯に黄耆を加えた処方 汗かき、寝汗を目標に喘息の体質改善にも良く使用。 《現代のアレルギー疾患に対する漢方治療》

【Dr.サントのコメント】
・小建中湯の証に加えて、寝汗があるかどうか聞くのがポイントのように思います。

・小建中湯が少し良くなれば、黄耆建中湯が合うようになる感じです。だから小建中湯証が黄耆建中湯証よりもっと虚していると思われます。
上の【先人】のところに引用したように、教科書的には小建中湯より黄耆建中湯が虚していると書いているものが多いのですが、サントの経験からはこれは逆です。

・井上先生は「黄耆建中湯」と「当帰建中湯」を合せて「帰耆建中湯」としてよく使います。小建中湯に補血、強壮、滋養効果の高い当帰と黄耆を加味した処方。
諸々の虚を補う効果があり、夏ばて、慢性疲労、アトピー性皮膚炎、褥瘡、痔瘻、慢性潰瘍などに使用しています。

・小建中湯、黄耆建中湯、当帰建中湯、帰耆建中湯の使い分けは、よく似ていて微妙なところがありますが、言霊診断PhotoTouchMethodなどで鑑別できます。

・サントの患者さんですが、喘息があって、皮膚に締まりがなく、汗をかきやすい方にずっと黄耆建中湯を出しています。体が疲れると、黄耆建中湯がいいみたいです。黄耆は皮膚に作用するので肺にも作用します。東洋医学的には五臓の「肺」は皮膚と関連します。皮膚を強くすると肺が強くなります。だから喘息にも効きます。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3.


【2013/05/09 21:31】 | 漢方解説
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