日本古来の漢方や中医学とも違う、新しい漢方ともいうべき「井上流漢方」について説明します。患者さんの気の流れをみて気を整えることを第一義とする「井上流漢方」を名古屋の井上先生の外来から報告します。
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007.jpg007. 八味地黄丸

【生薬構成】
地黄6、山茱萸3、山薬3、沢瀉3、茯苓3、牡丹皮2.5、桂皮1、附子0.5 (g)
*六味丸+桂枝、附子の構成。六味丸で腎陰を補い、桂枝附子で腎陽を鼓舞する。したがって、腎陽虚、又は腎陰陽両虚に使用する。

【原典】
《金匱要略》の5つの病篇に挙がっています。条文が多い。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》では、
『此方は専ら下焦を治す。故に金匱は、少腹不仁、或は小便自利、或は轉胞に運用す。また虚腫、或は虚労腰痛等に用ひて効あり。その内消渇を治するは此方に限るなり。仲景が漢武帝の消渇を治せりといふ小説あるも虚ならず。此方は牡丹、桂枝、附子と合する処が妙用なり。済生方に牛膝、車前子を加ふるは、一着輸する手段なり。医通に沈香を加へたるは一等進みたる策なり。』
*故に金匱は:金匱要略からの引用部分。 少腹不仁:触ると下腹部に力がないこと。
轉胞:排尿障害のこと。 消渇:口渇のこと。 済生方に牛膝、車前子を加ふるは:牛車腎気丸のこと。

【先人】
・下半身機能低下(腰痛、足弱)/足腰の冷え/排尿障害(臍下不仁)  《高山宏世:漢方常用処方解説》

・1)腎陽虚。すなわち、腰やひざがだるくて力がない...2)腎陽虚の症状に、火照り、口渇、いらいらなどの陰虚の症候も時にみられるもの。  《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・下焦の腎気が虚して尿利不調となり、下虚のため血行停滞して血熱をおこし、下焦の麻痺を招来したものである。下が虚するため上衝を起こし、また血滞のため煩熱を現わし、口渇を訴えるものに用いられる。 《矢数道明:漢方処方解説》

【井上流】
・六味丸証より更に衰え、腎水及び命門の火が共に衰え虚寒症状が加わった中年以降の諸疾患、腰痛 神経痛 骨粗鬆症 前立腺肥大など、特に男性によく用いられる。臍下不仁 足煩熱 夜間頻尿 下虚 冷えを目標に用いる 

・八味地黄丸は腎気「腎臓、副腎、生殖器機能」の衰えに対処する重要な薬で
中年以降の諸疾患に頻用されると共に、老化を防ぎ、健康増進する目的で保健薬として古来常用されてきました。老いさらばえた老人の薬というイメージがありますが、飽食の時代の今日では胃腸が丈夫でいくら食べても胃にもたれない元気で太った血色の良い人で下虚があるのを目標に使用する機会が多いです。

 腎臓疾患――腎炎 ネフローゼ 腎臓結石 萎縮腎 腎盂炎 蛋白尿
 膀胱疾患――膀胱炎 膀胱結石 膀胱括約筋麻痺 前立腺肥大 尿失禁 夜尿症
 脳血管疾患―脳出血 動脈硬化 高血圧 低血圧
 糖尿病  尿崩症
 腰痛 坐骨神経痛 椎間板ヘルニア 腰脚の麻痺 脚気 骨粗鬆症
 神経衰弱 健忘症 遺精 夢精 陰痿
 白内障 緑内障 眼底出血 調節衰弱
 老人性皮膚掻痒症 陰門掻痒症 老人性腟炎 湿疹 乾癬 苔癬
 肺気腫 便秘など、殊に老化に伴う殆ど全ての疾患に応用の機会がある。
《補血剤・補陰剤について》

・食欲良好で元気なお年寄りには八味地黄丸、牛車腎気丸なのですが、隠れた裏寒があり虚弱となっている方には温裏剤である真武湯を少量合方すると良いことが多いのです。

・中年以降の糖尿病、前立腺肥大の漢方治療のファーストチョイスは八味地黄丸、牛車腎気丸ですが、現実には腹の冷え、ガス満があり、口の周りが荒れていたり、臭いおならが出たり、食後の眠気があったりして脾虚を伴っていることが多く、大建中湯や六君子湯など補気剤と一緒に合わせて投与すると良いことが多いのです。
《老人の漢方治療》

・下焦の働きを良くする殊に男性の代表処方です。前立腺肥大の薬として有名です。老人性腟炎、腎炎、尿路結石、夜尿症、腰痛症ばかりでなく広く中年以降の諸疾患にも用います。方剤の中の地黄は骨も強化し、骨粗鬆症の薬となり、牡丹皮は駆瘀血することで血液をサラサラにする効果があります。胃腸の丈夫な男性には他の薬がいらない、理想的な保健薬です。
《泌尿器科領域の漢方治療》

・虚弱となった今日の子供には成人の手術後など著しい気力体力の低下「気血両虚」に用いられる十全大補湯や大防風湯が適応することも多く、腎陽虚に対する代表薬で中年以降のおじさんに良く用いる八味地黄丸の適応もあります。
《小児科領域の漢方治療》

【Dr.サントのコメント】
・サントのところには耳鳴の患者さんも多いのですが、腎虚が原因となっている方には良く使います。

・井上先生はごく少量でいいと言います。その時は小太郎の丸剤を3-5粒程度出します。多く出し過ぎると胃にもたれます。

・お年寄りでも、体の中の冷えた方が多いので単純には使いにくい印象があります。井上先生が書いているように八味丸単独ですべて解決とはいかないことが多い。
井上先生は胸をさわって身熱がある人によいと言います。
確かに長期使っていると胸が冷えてくるような印象があります。

・夜間頻尿、前立腺肥大など男性に適応がおおい。女性はすくない。でも、時々、糖尿病があって体力もある女性などに使うことがあります。

・腰痛でも使いますが、どちらかというと、大防風湯が多いようです。

・八味丸があっている場合は、変更なく長期間八味丸を続けることがあります。
男性の保健薬という具合です。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3. 



【2013/07/21 21:17】 | 漢方解説
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