日本古来の漢方や中医学とも違う、新しい漢方ともいうべき「井上流漢方」について説明します。患者さんの気の流れをみて気を整えることを第一義とする「井上流漢方」を名古屋の井上先生の外来から報告します。
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111.jpg111. 清心蓮子飲

【生薬構成】
麦門冬4、茯苓4、黄芩3、車前子3、人参3、黄耆2、甘草1.5、蓮肉4、地骨皮2 (g)
*麦門冬は燥熱を去って滋潤する、蓮肉は心熱をさます、地骨皮は虚熱をさる、車前子は下焦を強め、黄耆は補気する、人参、甘草、茯苓は四君子湯の一部で脾の補気作用。

【原典】
宋の時代の《和剤局方》に出ています。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》では、
『此方は上焦の虚火亢りて、下元これがために守を失し、気淋白濁等の症をなす者を治す。また遺精の症、桂枝加竜蛎の類を用ひて効なき者は、上盛下虚に属す。此方に宜し。もし心火熾んにして妄夢失精する者は、竜胆瀉肝湯に宜し。一体此方は脾胃を調和するを主とす。故に淋疾下疳に困る者にあらず。また後世の五淋湯、八正散のゆく処に比すれば虚候の者に用ふ。名医方考には労淋の治効を載す。加藤謙齋は小便余瀝を覚ゆる者に用ふ。余数年歴験するに、労動力作して淋を発するものと疝家などにて小便はかなり通ずれども、跡に殘る心ありて了然たらざる者に効あり。また咽乾く意ありて、小便余瀝の心を覚ゆるは、猶更此方の的当とす。正宗の主治は処とするに足らず。』と、あります。
*下元:下焦 気淋:神経性の頻尿 上盛下虚:下の矢数道明の解説を参照 労淋:長引いた淋 小便余瀝:小便の切れが悪くて排尿が終わったあとにも尿が点滴すること

【先人】
・上盛下虚というのが目標になる。上盛下虚というのは、上部の心熱が盛んになって下焦の腎の働きが弱くなり、上下の調和を失って、下焦にあたる泌尿器に諸症状を現わすことを意味する。 《矢数道明:臨床応用漢方処方解説》

・気陰両虚・心火旺。すなわち、いらいら、焦燥感、不眠、多夢、口や咽の乾燥感、口内炎、胸が熱苦しい、動悸、手のひらや足の裏の火照りなどの陰虚火旺の症候に、元気がない、疲れやすい、気力がない、食欲不振などの気虚の症候を伴う。 《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・気虚(易疲労、胃弱)/心火旺(イライラ、胸苦、口渇)/淋症(頻尿、残尿感)
《漢方常用処方解説:髙山宏世》

【井上流】
・蓮肉で牌胃を補いながら、虚火の炎上による心火旺を治し、麦門冬で燥熱を潤し、地骨皮で肝腎の虚熱を下して、下焦の軽い湿熱を去る働きがある。今日の日本人には適応が多い。
今日ではその他、不眠、自律神経失調、更年期症状、アトピー、花粉症、気管支炎、腰痛、高血圧等広く症例疾患にも応用。

・清心蓮子飲は夜間尿、頻尿、尿意頻迫、残尿感等に使用するのが一般的。上胸部の熱、心下痞硬を目標に投与一般的には八味地黄丸が使いがたい高齢者に使用、若い人で神経過敏となり、上記症状を起こしている人にも使用。

・清心蓮子飲はいわゆる自律神経失調症に良く用います。水を下げ、気を下ろすことで、イライラ、不眠に効果があるばかりでなく、三黄瀉心湯など黄連剤でなくても、心熱を冷ますことで、焦燥感や不安感を和らげる効果があります。

・清心蓮子飲と真武湯を一緒に投与すると良いことも多々あります。多くの場合は清心蓮子飲2.5gと真武湯2.5gを分2で投与しています。清心蓮子飲証と思われるものの手の冷え、足の冷え、浮腫みを認める時に按配しています。

・アトピー性皮膚炎や花粉症など諸疾患に適応あり

・清心蓮子飲は竜胆潟肝湯の虚の処方と言われており、下焦の湿熱をとる薬。女性に対して帶下ばかりでなく、子宮内膜症など女性疾患に適応あり。
 
・明目作用のある車前子が配されているので眼精疲労など眼疾患に良く用います。

・蓮肉が配され、陰虚による心火旺を治す効果があるため、歯肉炎にも用います。
《以上;今日の漢方薬の使い方5 清心蓮子飲を中心に》

・神経質で膀胱炎になりやすい人や、夜間尿のある人で、手足のほてり、のぼせ、イライラ、不眠、高血圧、膀胱神経症などに用いる。
《老人の漢方治療①》

・神経質で夢をよくみたり、夜中にトイレにちょくちょく起きたり、手足がほてり、囗が渇きやすい人に用います。膀胱神経症、尿漏れ、帯下ばかりでなく、高血圧など中年以降の諸疾患に良く用います。竜胆瀉肝湯尾の虚の処方といわれています。
《泌尿器領域の漢方治療》

・ 膀胱神経症の薬として有名であるが、上部の心熱が盛んになって下焦の腎の働きが弱くなり、上盛下虚を起こしやすい現代人向きの処方で、高血圧や糖尿病など生活習慣病によく用いる。 手のほてり、のぼせ、口渇、上胸部の熱、心下のつかえ、不眠、夜間尿などを目標とする。
《生活習慣病の漢方治療①》

【Dr.サントのコメント】
・井上先生は最近頻用しています。その理由としては、以下のように地球環境の変化を挙げられています。
『地球環境が激変し、電磁波の増大により、地球全体が大きな電子レンジの中に入っている状況にあるため人間の身体が内部から熱せられて、干からび、麦門冬を始めとする滋陰薬の配された滋陰剤の適応する人が多くなった。心肺が痛めつけられて弱り、外見は良くても、心気虚、肺気虚に陥っている人が多い上の事が、昨年の夏以降、特に感じられます。』
清心蓮子飲を滋陰剤的な位置づけで見ています。

・のぼせがあって頻尿があるときに使うのが典型的ですが、そのような典型的な兆候がそろっていなくても、色々な症状に効きます。「上盛下虚」にこだわらなくていいようです。

・特に喉の燥熱や口渇があるときに麦門冬の入った薬の鑑別として考えています。
麦門冬の入った薬では、麦門冬湯、炙甘草湯、滋陰至宝湯、清暑益気湯etc.とありますが、それらを「PhotoTouchMethod」で素早くスクリーニングすると、適合する漢方を当てることができます。

・手の「労宮」を押したら気持ちいいという時には、心に熱があると思われるので、効くことが多いように思っています。清心蓮子飲は「清心」という具合に「心」の熱を冷ます効果があります。

・井上先生の言われるように真武湯を少し混ぜると良く効くことがあります。
さらに、井上先生の言うように牛車腎気丸をまぜて、下焦の症状をもっと改善することもできます。

・いままでは、単に八味丸、牛車腎気丸の裏処方的存在だと思っていましたが、それ以上に精神的に作用する力もあるので、現代人には向いているようです。四君子湯が基礎にはいっているので胃腸の弱い現代人向けです。

・不眠の鑑別処方としても当然上がってきます。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3. 


【2013/07/28 16:19】 | 漢方解説
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