日本古来の漢方や中医学とも違う、新しい漢方ともいうべき「井上流漢方」について説明します。患者さんの気の流れをみて気を整えることを第一義とする「井上流漢方」を名古屋の井上先生の外来から報告します。
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029.jpg029. 麦門冬湯

【生薬構成】
麦門冬10、半夏5、粳米5、大棗3、人参2、甘草2 (g)
*方名のごとく麦門冬が君薬です。乾燥を滋潤して上逆を引き下げる。半夏は胃気を開き逆気を下げる。人参、大棗、甘草、粳米で補気して潤す。

【原典】
《金匱要略》の『肺痿肺癰咳嗽上氣脉證并治第七』に出ています。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》には
『此方は肘後に云ふ通り、肺痿、咳唾、涎沫止まず、咽燥いて渇する者に用ふるが的治なり。金匱に、大逆上気とばかりありては漫然なれども、蓋し肺痿にても、頓嗽にても、労嗽にても、妊娠咳逆にても、大逆上気の意味ある処へ用ふれば、大いに効ある故、此の四字簡古にして深旨ありと見ゆ。小児の久しき咳には、此方に石膏を加へて妙験あり。さて咳血には、此方に石膏を加ふるが先輩の経験なれども、肺痿に変ぜんとする者、石膏を日久しく用ふれば不食になり、脉力減ずる故、千金の麦門冬湯類方の意にて、地黄、阿膠、黃連を加へて用ふれば工合よく功を奏す。また聖惠五味子散の意にて、五味、桑白皮を加へ、咳逆甚しき者に効あり。また老人津液枯稿し、食物咽につまり、膈症に似たる者に用ふ。また大病後薬を飮むことを嫌ひ、咽に喘気ありて、竹葉石膏湯の如く虚煩なき者に用ふ。皆咽喉不利の余旨なり。』とあります。
*肘後:書物名《肘後備急方》のこと、肺痿:一般的には肺結核のこと、金匱:金匱要略のこと、大逆上気:金匱要略の中の有名な文言、頓嗽:百日咳、労嗽:肺結核、津液枯稿:口や皮膚が渇いたもの、膈症:嚥下障害を訴えるもの、咽喉不利:金匱要略の有名な文言、咽喉頭違和感のこと

【先人】
・本方は少陽病の虚証を帯びたもので気の上逆による痙攣性咳嗽に用いられる。  《矢数道明:漢方処方解説》

・肺気陰両虚&胃気陰両虚  《秋葉哲生:活用自在の処方解説》

・反射性の激しい咳(大逆上気)/咽喉のひきつり(咽喉不利)/心下痞  《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流】
・麦門冬湯は老人の空咳の薬として有名です。処方構成からみると四君子湯と同じく補気剤で、腸の働きを良くして生命力、自然治癒力を高める薬ですが、麦門冬という心肺や胃を滋潤する生薬が配されており、津液不足に陥りやすい老人にはうってつけの薬です。気管支炎など、肺疾患に用いるばかりでなく、不眠、身体の弱り、痩せ、食欲不振などにも効果が期待できます。
《脾胃を整える「補気剤」の活用》

・脾胃が衰え、津液不足に陥った老人は脱水症になりやすいが、夏バテで脱水症になったり、食欲不振、身体が弱ったり、痩せたりする人にも適応がある。
《老人の漢方治療②》

・一般的に老人に多い、喉の乾燥感や咽頭不利があり、大逆上気して顔面紅潮し、痙攣性咳嗽する、心下痞、腹部軟弱な人に使用。麦門冬湯は補気剤である。夏ばてが激しく痩せて、気力の低下した。口渇、喉の乾燥感や咽頭不利がある人に使用。
《滋陰剤の臨床応用》

・喉やイガイガ、カサカサして空咳が続く風邪で、顔がのぼせ、上胸部に熱を感じ、肺に熱燥があると思われる人で心下がつかえ、下痢や食欲不振があって脾胃虚弱となっている時に使用。現代は津液不足に陥っている人が多く老人に限らず幅広い年齢層の人に適応がある。
《風邪・インフルエンザの漢方治療②》

・老人の乾燥咳の薬として有名であるが脱水をおこしやすい高齢者の胃部の不定愁訴にも用いる機会が多い。
《消化器疾患の漢方治療》

・同じ麦門冬の配された麦門冬湯は良く使用されているが炙甘草湯はあまり使用されていない
麦門冬湯 ――補気剤  どちらかというと下痢傾向
炙甘草湯 ――気血両補剤 どちらかというと便秘傾向
炙甘草湯の場が実際には多い
《脾胃を整える「気血両補剤」の活用》

【Dr.サントのコメント】
・風邪の後の喉のイガイガに良く効きます。またこれが一般的使い方でしょうか。

・麦門冬湯だけを長期に出すことはすくないです。

・また、喉が渇いて空咳がでてても、麦門冬湯より他の麦門冬剤のほうがあっていることが多いように思います。現代人はそんなに単純ではなくなっているのでしょうか。井上先生の書いているように、炙甘草湯や滋陰至宝湯、竹茹温胆湯、滋陰降火湯、清暑益気湯、清心蓮子飲などがあっている人が多いと思います。

・咽が乾燥するときには、腎陰虚と肺陰虚が合併するときがありますが、その時には八味丸、六味丸と合方して出したります。
そうすると、やっぱり老人に使うことが多くなります。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3. 


【2013/07/28 20:42】 | 漢方解説
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