日本古来の漢方や中医学とも違う、新しい漢方ともいうべき「井上流漢方」について説明します。患者さんの気の流れをみて気を整えることを第一義とする「井上流漢方」を名古屋の井上先生の外来から報告します。
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108'108. 人参養栄湯
【生薬構成】
地黄4、当帰4、白朮4、茯苓4、人参3、桂皮2.5、遠志2、芍薬2、
陳皮2、黄耆1.5、甘草1、五味子1(g)
*十全大補湯から川芎をとって、五味子(収斂、鎮咳)、遠志(補心)、陳皮(理気、化痰)を加えたもの。したがって、十全大補湯の気血両補作用に心肺を補う作用が加わったものといえます。

【原典】
北宋時代の《太平恵民和剤局方》

【古典】
・浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》には
『此方は気血両虚を主とすれども、十補湯に比すれば遠志、橘皮、五味子ありて、脾肺を維持するの力優なり。三因には、肺と大腸と倶に虚を目的にて、下痢喘乏に用ひてあり。万病ともこの意味のある処に用ふべし。また傷寒壊病に、先輩は炙甘草湯と此方を使ひ分けてあり。熟考すべし。また虚労、熱ありて咳し、下痢する者に用ふ。』とあります。
*十補湯:十全大補湯のこと。 *三因:宋の時代の《三因方》のこと。 *肺と大腸と倶に虚:肺と大腸は表裏の関係にあります。 *喘乏:喘息様の呼吸
【先人】
・毛髪脱落し、顔色光沢なく枯燥、心悸亢進、不眠、健忘症などを目標にして用いる。病後の衰弱、産後の衰弱、結核症の衰弱などに応用する 《矢数道明:漢方処方解説》
・虚弱、衰弱者/四肢倦怠、虚熱/息切れ 《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流漢方】
・表に表れていない身体の虚弱、心の虚弱を目標に用いると良いと思います。
一般的に虚弱老人や病み衰えたひとの不眠などに使用する機会が多いのですが、
中年のがっしりとした身体のひとにも使用の機会があります。

・人参養栄湯は身体が衰え、一人暮らしとなったりして、先行きを心配しやすい、神経過敏となっているご老人の健康保持のための薬として、今日、使用の機会が多いのではと思います。

・慢性関節リウマチの漢方治療は今まで、附子の配された大防風湯や、補血剤である四物湯脚気加減、利水剤である防巳黄書湯加減などをよく投与してきたのですが、人参養栄湯が効くケースが最近、特に目立ちます。免疫力を高める効果が高いためと思われます

・人参養栄湯使用のコツ:身体が疲れきっている。神経衰弱になっている。生活や環境に因る身体の深いところからの疲れ。老いさらばえた顔 病みつかれた顔。 顔に艶がなく、シミや皺が目立つ。

・上の先人の一般的な使い方以外に、湿疹、アトピー、シェーグレン症候群、夏バテ、などにも効く。《以上、井上先生:人参養栄湯の臨床応用》

・最近の霜焼けは、当帰四逆加呉茱萸生姜湯より人参養栄湯が効く《H25.2.14》

【Dr.サントのコメント】
・不眠を訴える患者さんの、鑑別にいつも考えています。酸棗仁湯が教科書的ですが、人参養栄湯が多いと思います。PTMで鑑別は簡単です。

・寝違による首の痛みに麻黄附子細辛湯をだして首はよくなったのですが、1週間飲ませて不眠がおこった患者さんに人参養栄湯がよく効きました。麻黄による心の衰弱によいようです。

・サントの最近の症例ですが、美容師さんが散髪中にお客さんから話しかけられると胸が苦しくなると言ってこられました。会話も接客サービスなので困ります。よく聞くと、高血圧があって、別のところで積雪草、大柴胡湯、竜胆瀉肝湯、冠心2号の合方を処方されていました。確かに血圧は10程度下がっているのですが、心虚の状態でした。飲んでいる漢方をやめてもらい、人参養栄湯を処方しました。3日後に再診されたのですが、胸の症状はなくなっていました。上の例もそうですが、漢方薬の副作用に人参養栄湯はいいような気がしています。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3. 4.


【2013/02/05 23:21】 | 漢方解説
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