日本古来の漢方や中医学とも違う、新しい漢方ともいうべき「井上流漢方」について説明します。患者さんの気の流れをみて気を整えることを第一義とする「井上流漢方」を名古屋の井上先生の外来から報告します。
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105.jpg106.温経湯
【生薬構成】
麦門冬4、半夏4、当帰3、甘草2、桂皮2、芍薬2、川芎2、人参2、牡丹皮2、呉茱萸1、生姜1、阿膠2 (g)
*当帰、芍薬、川芎で補血し; 人参、甘草で補気し; 麦門冬、阿膠で滋潤し; 呉茱萸、生姜、桂皮で温め; 半夏で帯下の水湿を除き; 牡丹皮で駆瘀血する。

【原典】
《金匱要略》の「婦人雜病脉證并治第二十二」にあります。
*ここに出てくるキーワードを抜き出すと『婦人年五十所、手掌煩熱、唇口乾燥、帶下、半産、瘀血在少腹、久不受胎、崩中去血』となり、温経湯の証をよく表しています。

【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》には『此方は胞門虚寒と云ふが目的にて、凡そ婦人血室虚弱にして、月水不調、腰冷腹痛、頭疼下血、種々虚寒の候ある者に用ふ。年五十云々に拘るべからず。却つて方後の主治によるべし。また下血の症、唇口乾燥、手掌煩熱、上熱下寒、腹塊なき者を適症として用ふ。もし癥塊あり、快く血の下らざる者は桂枝茯苓丸に宜し。そのまた一等重き者を桃核承気湯とするなり。』と、あります。
*胞門虚寒:子宮の虚と冷え、 月水:月経、 年五十云々に拘るべからず:年は関係ない、 方後の主治:金匱要略の「亦」以下の文、 腹塊・癥塊:子宮筋腫など

【先人】
・手足がほてり、唇が渇くものの次の諸症:月経不順、困難、こしけ、更年期障害、不眠、神経症、湿疹、足腰の冷え、しもやけ《秋葉哲生:活用自在の処方解説》
・気血の虚と寒冷が主目標で、手掌の煩熱と口唇の乾燥、下腹部の膨満感又は不快感があり、その他云々。《矢数道明:漢方処方解説》
・衝任虚寒し、瘀血が滞り、新血が生じない。/貧血、冷え性/口唇乾燥、手掌煩熱、角化症/腹部軟弱、下腹部不快感 《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流】
・でっぷりがっちりした体つき、のぼせて生理前に乳房の張りや下腹の張りを訴える人で、広い年代の月経障害、PMS症状、便秘、花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎、主婦湿疹、高血圧、腰痛などに用います。キーワードは「のどの渇き」「手荒れ」
・温経湯は花粉症ばかりでなく、アトピー性皮膚炎、喘息、蕁麻疹などアレルギー疾患に良く用い極めて効果の高い薬です。
・桂枝が配され、黄連や大黄が配されていない。のぼせがはなはだしい人が多いが、赤黒い色ののぼせではなく、ほんのり桜色ののぼせである。臍下に冷えも認めることが多い。《以上;攻撃剤の使い方:清熱瀉下剤を中心に》

・温経湯(106)は麦門冬の配された温性駆痂血剤で、今日の女性に極めて効果の高い処方です。月経障害ばかりでなく、頭痛、肩こり、便秘、花粉症やアトピー性皮膚炎、喘息、蕁麻疹などアレルギー疾患などに良く用います。《アレルギー性疾患の漢方治療》

・温経湯:上胸部に熱を触知、咽喉のイガイガ、口渇、のぼせ、下腹にお血を思わせる抵抗と圧痛を目標に使用 《現代のアレルギー性疾患に対する漢方治療 補足1》

・温性駆瘀血剤であるが胃腸虚弱症状が無い、便秘勝ちである、柴胡の証が無い、腹直筋の攣急がある、口唇乾燥、手指先のほてりを訴える。《女性に対する漢方治療》

・桂枝茯苓丸加減で、やや虚証向きの方に投与します。当帰や川きゅうなどが配されており、温性駆お血剤となっていて虚弱となった今日の日本人向きです。桂枝茯苓丸と同様にがっしりした身体つきで、のぼせて赤ら顔な人に用います。皮膚のかさつきを訴える人が多くいらっしゃいますが、温経湯には麦門冬や阿膠が配されており、臓腑や皮膚を潤す効果も兼ねますので非常に使い勝手の良い薬です。生理痛や月経前症候群、子宮内膜症ばかりでなく、湿疹、花粉症、喘息、腰痛など幅広い疾患に良く用いています。
《現代における漢方治療のABC:C「温補しながら、攻下する」》

・四物湯との鑑別: 四物湯証にも顔のほてり、のぼせ、発汗しやすい人が多く、つい、桂皮ののぼせと思い、これら桂枝湯類を投与しがちであるが、桂枝茯苓丸証や温経湯証は下腹の瘀血が際だっており、生理前の乳房の張りや下腹の不快感の程度が強いことより鑑別出来る。《滋陰剤「補血剤、補陰剤」について》

【Dr.サントのコメント】
*以下の内容はDr.サントに文責があることをお断りします。
・下腹部にしっかりした瘀血をふれるかたが多いと思います。

・麦門冬が入っているので、井上先生が言うように、「口唇の乾燥」だけでなく「喉の燥熱」を見逃さないともっと鑑別しやすいと思います。つまり、前胸部に熱がある麦門冬のグループの一つで腹を温めて瘀血をとる薬と考えるとわかりやすいと思います。

【症例にリンク】
症例1. 

【2013/03/03 16:17】 | 漢方解説
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