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日本古来の漢方や中医学とも違う、新しい漢方ともいうべき「井上流漢方」について説明します。患者さんの気の流れをみて気を整えることを第一義とする「井上流漢方」を名古屋の井上先生の外来から報告します。
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99. 小建中湯

【生薬構成】
芍薬6、桂皮4、大棗4、甘草2、生姜1、膠飴20 (g)
*桂枝加芍薬湯の芍薬を増やして膠飴を大量に加えたもの。膠飴は中を補い急痛を緩和する。
【原典】
《傷寒論》と《金匱要略》
*《金匱要略》の血痺虚労病篇の『虚労、裏急、悸、腹中痛、手足煩熱、』などが、キーワードになります。
【古典】
浅田宗伯の《勿誤薬室方函口訣》には『此方は中気虚して、腹中の引張痛を治す。すべて古方書に中と云ふは、脾胃のことにて、建中は脾胃を建立するの義なり。此方は、柴胡鼈甲(湯)、延年半夏(湯)、解労散などの如く、腹中に痃癖ありて引張痛と異にして、ただ血の乾き、俄に腹皮の拘急するものにて、強く按ぜば、底に力なく、譬へば琴の糸を上より按ずるが如きなり。積聚腹痛などの症にても、すべて建中(湯)は血を潤し、急迫の気を緩むるの意を以つて考へ用ふべし。全体腹くさくさとして力なく、その内にここかしこに凝ある者は此の湯にて効あり。即ち後世の大補湯、人参養栄湯の祖にして、虚を補ひ血を調ふの妙を寓す。症に臨んで汎く運用すべし。』とあります。
*中気:胃腸の機能、 痃癖(げんぺき):疼痛を伴う塊のこと、 積聚(しゃくじゅ):腹部の塊、 急迫:急に痛んだり痙攀すること、
【先人】
・虚証の体質で、いわゆる太陰病に属し、脾胃の虚弱なものに多く、痛みや急迫症状を伴うものである。小児に用いることが多い。虚弱児の体質改善薬として重要なもので、主として夜尿症、云々《矢数道明:漢方処方解説》
・体質虚弱で疲労しやすく、血色がすぐれず、腹痛、動悸、手足の火照り、冷え、頻尿および多尿などのいずれかを伴う次の諸症状:小児虚弱体質、疲労倦怠、神経質、慢性胃炎、小児夜尿症、夜泣き。《秋葉哲生:活用自在の処方解説》
・腹部軟弱/腹皮拘急/小児では胃腸型の虚弱児 《高山宏世:漢方常用処方解説》

【井上流】
・建中湯類には膠飴が配され、脾胃を補う効果が高いために、脾胃剤とも言えます。別の言い方をすると消化器の立て直し、中焦の機能の立て直しを目的とした処方です。建中湯類の代表は小建中湯です。身体の弱りの著しい時は基本薬の小建中湯を先ず、投与します。

・使用目標 :一種の強壮剤で、身体が虚弱な人や平素は丈夫でもひどく疲労しているときに使用します。一般的には子供の体質改善薬とのイメージが強いのですか、老若男女を問わず広い世代の緒疾患に使用の機会が極めて多い処方です。
興奮しやすく疲れやすい、疲労倦怠、手足煩熱、咽乾、口燥、腹痛、動悸、胸の重苦しさ、鼻出血、便秘、腹直筋の緊張、こむらがえり、一般には下痢なし、食欲不振なし。

・臨床応用 :虚弱児の体質改善「夜泣き、夜尿、ヘルニア、臍仙痛、アトピー性皮膚炎、喘息など」疲労時の風邪、慢性疲労、夏ばて、湿疹、蕁麻疹、自律神経失調症、過敏性大腸炎、腹痛、便秘、腰痛、肝炎、脂肪肝など

・他の薬方との鑑別:人参湯や四君子湯との鑑別点は、腹直筋の緊張が認められない、下痢傾向が多く、少食であることなどがあげられます。

・使用量について:老人などで腹直筋の緊張が分からず、虚労の程度が著しく、軟便や下利気味となっているときは投与量を常用量の半分から三分の一程度にしたほうが良いことが多い
《以上、脾胃を整える「建中湯類」の活用》

・裏虚に対する体質改善薬として小児の諸疾患に広く使用。コロコロ便で便秘・臍仙痛・疲れやすい・身体をだるがる・手足のほてり・水分をやたらに欲しがる・興奮しやすい・寝付かれない・喘息・アトピー・夜尿
《小児科領域の漢方治療》

・小建中湯など建中湯類は子供の薬とのイメージが強いのですが、老人にも使用の機会が多い薬です。興奮しやすく疲れやすい、手掌発汗、手足のほてり、こむらがえり、腹直筋の緊張など裏虚「肝虚」に起因する症状を目標に諸疾患に用います。《老人の漢方治療②》

・いわゆる虚労を治す処方。太りすぎの生活習慣病に悩む人には一見、適応が無いように思われるが、よく診ると神経疲労のために虚労に陥っている人が現実には多い。我が医院では小建中湯など建中湯類を生活習慣病に頻繁に用い、喜んで頂いている。《生活習慣病の漢方治療》

・裏虚に対する方剤は補血剤、補陰剤ほど重くないため殊に小建中湯などは単独で使用しやすいが、気虚を伴っている時は小建中湯に人参湯や四君子湯、大建中湯を合方して用いると良い。
《補血剤、補陰剤について》

・井上先生は、真武湯、甘麦大棗湯、大建中湯などを一緒に出すことがあります。

・過敏性腸症候群では桂枝加芍薬湯より小建中湯を使うことが多いとも言っておられます。

【Dr.サントのコメント】
・井上流漢方で頻用する処方の一つです。現代人がいかに裏虚になっているかを表しているようです。サントも外来で頻用しています。とくに、ビジネスマンで疲れている方に多く使います。ご本人は裏虚と思っていませんが、よく見ると、手足がほてり、手足が汗ばみ、脈に動悸を感じ、腹直筋が緊張して、軟便気味という所見があります。だいたい、そのような体質を大人になるまで持ち越しているイメージです。

・井上先生は脈を診て「虚脈」だと建中湯だとすぐにわかるようです。井上先生の言う「虚脈」がどんなものか言葉で説明しにくいのですが、弦脈ぽく指に触れるのですが、力なく、かつ動悸のようなものを感じる脈、とサントは理解しています。

・成書では小建中湯より虚のときに黄耆建中湯を使うとありますが。井上先生の外来をみていると、建中湯類のなかで小建中湯がもっとも虚証に適応があるように思います。サントの経験でも小建中湯が最も虚証の方に適しています。時々、黄耆建中湯と迷う時がありますが、言霊診断やPTM(PhotoTouchMethod)で鑑別ができます。

・時どき、補中益気湯と鑑別に迷う時があります。「手足のほてり」が鑑別に使えると井上先生は言っていました。PTMができれば鑑別は簡単です。

・サントの症例ですが、70代の男性で、他院からパキシルを処方されていた方がいます。物事を悪いほうにばっかり考えて、マイナスの考えにとらわれて、鬱々として寝れないと言われていました。外見は頑丈そうで、糖尿病の薬も飲んでいて、舌の所見からも八味丸証だとおもいました。しかし、このとき始めたばかりのPTMをすると、以外にも小建中湯で気の流れがよかったのです。そこで、思い切って小建中湯を処方すると、次の診察時には気分がとても落ち着いたと言われました。おまけに、血圧も180から120に下がったので降圧薬も内科でへらしてもらうことができました。小建中湯が老人の鬱病にきくのかとびっくりした症例です。そのころは、サントの腕は今より未熟で、裏虚があるのに見逃していたのかもしれません。

【症例にリンク】
症例1. 2. 3.


【2013/03/17 19:36】 | 漢方解説
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